猫の熱中症の予防と対策|猫が肉球に汗をかいていたら危険!?
気温や湿度が高くなる季節は、猫の「熱中症」に注意が必要だ。人間と同じように猫や犬などのペットも熱中症にかかるので夏場の対策は必須。猫の熱中症の症状や予防策、熱中性にかかりやすい猫の種類などについて、獣医師に話を解説いただいた。
猫の熱中症の原因や見分け方・症状
砂漠に住むリビアヤマネコを祖先に持つ猫は、比較的暑さに強いといわれている。
しかし、日本の高温多湿な気候に加え、近年の異常な暑さは猫にとっても脅威。暑さで体調を崩しがちな夏は、熱中症に注意が必要だと、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問の獣医師・佐藤貴紀さんは語る。
「猫の熱中症の原因は、暑さにより体温調整がうまくできなくなってしまうことや、体温が上がりすぎることで起こります。
症状は、次の3つの段階に分けられます」(佐藤さん、以下同)
●猫の熱中症|症状レベルと見極め方
猫の熱中症【軽度】
・体が熱い
・ソワソワしたりウロウロしたり落ち着きがない
・肉球に汗をかいている
猫の熱中症【中度】
・直腸温度が39度以上になる
・鼻での呼吸が早い
・ややぐったりしている
・嘔吐・下痢などの消化器症状が現れる
猫の熱中症【重度】
・かなりぐったりている
・ハーハーと口で呼吸をしている
「重度の状態からさらに熱中症が進むと、喀血(かっけつ)(せきと共に血が出ること)、血便、けいれんなどの神経症状、さらに最悪な場合、意識障害や命を落とすこともあります」
とくに猫は、犬に比べると病気のサインがわかりづらい。日頃から愛猫の異変を見逃さないよう心がけておくことが大事だという。
熱中症になりやすい猫の特徴は?
人間の場合、高齢者の方が熱中症になりやすく、発症した場合も重篤化しやすいとされているが、これは猫も同じ。
「高齢の猫は、肺の機能が成猫よりも弱ってきていることもあるため、体温調節がうまくできず、熱中症になりやすいのです」
こんな猫は熱中症に注意!
・7歳以上の高齢猫
・肥満の猫
・呼吸器の機能が未発達の幼猫
・エキゾチックショートヘアなどの鼻ぺちゃの猫
・呼吸器に持病がある猫
「鼻が低い猫は、鼻腔が狭く、熱が発散しにくいため、熱中症になりやすいといえます。
また、腎臓病や心臓病、ホルモンの病気である甲状腺機能亢進症など持病がある猫は、熱中症にかかると脱水症状になりやすくなるため、注意が必要です」
猫が熱中症になった時の応急処置は?
もしも猫に熱中症が疑われる症状が見られたらどうしたらいいのだろうか?
猫の状態に応じて、対処法が2つあると佐藤さんは語る。
1.猫の体が熱く、ぐったりしているとき
「まずは体を冷やしてあげること。そしてすぐに動物病院へ連れていきましょう。
氷や保冷剤を使って冷やす方法もありますが、急に冷やすとかえって具合が悪くなることもあるので、濡れタオルを体にかけてあげるといいでしょう」
2.猫の意識はしっかりしているがややぐったりしているとき
「意識がしっかりしているようであれば、風通しのよい場所に移し、水を飲ませてあげてください。そして、濡れタオルなどをかけて体を冷やしてあげましょう」
猫がぐったりしていると焦ってしまいがちだが、慌てずに落ち着いて適切な対処をしよう。いずれの場合も、素早く処置をし、状態が落ち着いたとしても動物病院で診てもらった方が安心だ。
猫の熱中症を防ぐには?
猫の熱中症は、日差しの強い屋外よりも、室内で発生するほうが多い。
猫が熱中症を発症した状況は、1位が「家の中で留守番中」、2位が「家の中で一緒にいるとき」という調査結果※のように、室内で発症しているのだ。
※参考:ペットの熱中症に関する調査(アイペット損害保険調べ)
https://www.ipet-ins.com/info/20575/
したがって、室内で飼っている猫には、夏場はとくに部屋の環境を変えたほうがいいと、佐藤さんは呼びかける。
「飼い主が留守中もエアコンや扇風機を活用してください。
さらに、ペット用のひんやり冷たい涼感マットなどを利用して、体を冷やせる場所を作ってあげるのも大事。
長時間留守にする事が多い場合は、見守りカメラを設置するのもおすすめ。外部から部屋の様子や室温を確認できるので安心です。
また、水分補給も大切です。脱水になると熱中症にもなりやすいため、水飲み場を数か所用意したり、食事にお水を混ぜたりして、水分をしっかりとれるよう工夫しましょう」
熱中症を防ぐ部屋の工夫(まとめ)
・エアコンや扇風機で室温を上がりすぎないようにする
・冷感マットで涼める場所を作る
・水飲み場を増やす
・食事に水分を混ぜる
本格的な夏に備え、人間と同じように猫も熱中症の対策や予防をしておきたい。
教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん
麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問(https://mamec.wolves-tokyo.com/)。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。「SuperDoctors 〜名医のいる相談室〜」(https://www.youtube.com/channel/UCUxW…)にて配信中。
取材・文/鳥居優美
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