新型コロナとペットの謎を獣医が解説|NYの猫2匹感染…犬は?
ニューヨークの飼い猫2匹が新型コロナに感染したと報じられた。そのうち1匹は感染ルートが不明。ほかにも海外の犬や猫、動物園の虎にも感染事例が…。飼い主からペットに感染する? ペットが感染したらどうすれば? ペットと新型コロナにまつわる最新事情を獣医師に聞いた。
猫や犬に新型コロナ陽性反応
「新型コロナが流行り出した当初は、ペットには感染しないと思われていましたが、状況は一変。海外で数例、猫や犬などの動物が感染したケースが報告されはじめました。
ペットも新型コロナに感染する可能性があると思っておいたほうがいいでしょう」
こう語るのは、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問の獣医師・佐藤貴紀さんだ。
人間の場合、新型コロナに感染すると、せきや発熱といった風邪に似た症状や肺炎、下痢、嗅覚・味覚障害、腎障害などの症状が出ることが明らかになっている。
では、ペットの場合はどんな症状が出るのか?
NYで2匹感染、ベルギーの猫は呼吸困難に…
「アメリカのCDC(疾病対策予防センター)によると、ニューヨークで猫2匹から陽性反応が報告されました。2匹は別々の家で飼われており、そのうち1匹は、飼い主の家庭で新型コロナに感染している人は確認されていません。
すでにベルギーで陽性反応が出た猫の場合は、下痢・嘔吐・呼吸困難といった症状があったとの報告があります。
いずれも、軽度の呼吸器症状が出ているが回復に向かっているといいます。
現時点では新型コロナに感染した事例は、犬よりも猫のほうが多い(※2020年4月23日現在)。最新の研究では、猫は飛沫感染するということが判明しており、犬よりも猫のほうが新型コロナにかかりやすいこともわかってきましたが、なぜ猫のほうが多いのか正確な答えはまだ出ていません」(佐藤さん、以下同)
なお、猫の感染症で胃や腸を包んでいる腹膜が炎症する“猫コロナウイルス”や、軽度の消化器症状を起こす“犬コロナウイルス”という病気があるが、これは新型コロナウイルスとはウイルスの型が異なり、まったく別のものだと、佐藤さんは続ける。
犬は陽性でも症状ないことが多い
「一方、犬は陽性反応が出ても症状が出ないケースが多いようです。明らかな症状が出たのは猫のみ。コロナ特有の症状はわかっておらず、人間と同様にさまざまな症状が出る可能性は考えられます」
なお、アメリカなど海外の一部では、新型コロナ感染者と一緒に暮らしていたなど、ある特定の条件を満たす場合はペットに対し、新型コロナの検査が始まったところだ。
しかし、まだ日本では、ペットに対する新型コロナの検査体制は整っていない。残念ながら仮にペットに新型コロナ感染の疑いがあっても確認することはできない状況だ。
ペットから人に感染するのか?
「現時点でペットから人や、ペットからペットに感染したとの報告はありません。とはいえ、ペットから人にうつる病気は、新型コロナ以外にも症例があります。
ペットから人への感染症を予防するためには、口移しでご飯を与える、ペットとキスをする、布団で一緒に寝るなど、ペットとの過度な接触は控えたほうがよいでしょう」
これまで感染が確認された犬や猫は、新型コロナに感染した人から感染したとみられるため(米国の猫を除く)、飼い主が感染した場合は、ペットも無症状の感染をしているかもしれない。感染を広げないためにも、下記のことに注意が必要だと佐藤さんは語る。
●ペットに感染させないための注意事項
・ドッグランなど人が集まる場所は避ける
・犬の散歩は人混みを避ける
・飼い主同士の立ち話を避ける
・通行人との濃厚な接触を避ける
・飼い猫は家の外に出さないようにする
飼い主がコロナに感染したら…
新型コロナの拡大を受け、東京獣医医師会では、
「飼い主が新型コロナに感染しないことがペットを守るために大事である」と呼びかけてはいるが、もしも飼い主が感染してしまったらどうしたらいいのだろうか?
「ペットにウイルスが付着している可能性があります。体の表面に付いたウイルスが、他にうつらないように、自分以外の人に頼んでシャンプーをしたほうがいいでしょう」
「さらに自宅療養中の場合は、感染者が生活する部屋へはペットを出入りさせないこと。ペットにうつさないために、ペットの世話は感染者以外がしてください。
1人暮らしでペットの世話ができない場合や、自宅療法でなく病院やホテルでの療法する場合は、知人にお願いするか、受け入れしているかどうかを確認してペットホテル、ペット預かりサービスなどを利用しましょう。
自分が感染したらペットも感染しているかもしれません。感染を広げないために、ペットを預ける際は、キャリーバッグや首輪、リードなどは、0.05%に薄めた家庭用塩素系漂白剤(製品の濃度が6%の場合、水3Lに液体25mlが目安)で拭き、さらに塩素を拭き取るために水拭きしてから預けると安心です」
人だけでなく猫や犬など愛するペットにも、新型コロナの脅威は迫っている。
もしも新型コロナに感染した人と濃厚に接触していたペットの体調が悪くなったら、すぐにかかりつけの動物病院を受診しよう。その際は、必ず予め電話で事情を説明し、動物病院の指示に従って。
また最近、ペット向けのオンライン診療や、自宅に獣医が来てくれる往診に対応している動物病院もあるので、それらを活用してみるのもいいだろう。
現在、厚生労働省から新型コロナに関するQ&Aが通知されている。狂犬病のワクチンに期間が延長になるなど、新型コロナとペットにまつわる事例が報告されているので参考にしてほしい。
参考/厚生労働省 動物を飼育する方向けQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/doubutsu_qa__00001.html#Q1
教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん
麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問(https://mamec.wolves-tokyo.com/)。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。愛犬まりも(ミニュアシュナウザー)と暮らしている。
取材・文/鳥居優美
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