20代30代にも迫る「孫介護」の実態|祖母の介護で後悔していること
人生100年時代、高齢化が進み10代、20代、30代の孫世代にも介護が迫る!? 若い世代が介護を担うヤングケアラーなる言葉も…。認知症の母を遠距離介護している工藤広伸さんは子宮頸がんを患った祖母の介護経験もある。そこで今回は孫世代の介護のかかわり方についての話だ。
孫が祖父母を介護する「孫介護」。わたしも祖母を介護した経験があります。なぜ、祖父母の子どもである親が介護をせずに、孫が介護をするのでしょう?
わたしが介護カフェで会った孫介護経験者の話や、介護の講演会やイベントに参加して聞いた、孫介護の実態についてご紹介します。
孫のわたしが祖母の介護を担った理由
2012年、認知症の祖母(当時89歳)に子宮頸がんが見つかり、余命半年と宣告されました。
それまで、祖母の介護を担っていた母(当時69歳)は、祖母の入院手続きが進められず、わたしに同じ質問を何度もするようになったことから、認知症が見つかりました。
これ以上、祖母の介護は続けられないと判断し、孫のわたしが引き継ぐことになったのです。
祖母の介護は、母が最後まで担うと思っていましたし、まさか40歳という若さで、わたしが介護をすることになるとは思っていなかったので、まさに青天のへきれきでした。
孫介護が始まった時点で、祖母の認知症はかなり進行していました。そのため、祖母の銀行口座のありかが分からず、入院費用をわたしが立て替えることになりました。
また、祖母が延命治療を望むかどうか分からず、孫や子どもの代理判断になってしまったことは、いまだに後悔しています。元気なうちに、祖母の意思をくみ取っておくべきでした。
このように、親の病気やケガなどが理由で、急に介護ができなくなり、代わりに孫が介護を担うこともあります。また、親が突然亡くなってしまい、孫が介護をせざるを得ない場合もあります。
他にも、認知症の祖父母を介護していた親が疲労で倒れてしまい、その親のサポートのために、孫が介護離職したケースもあります。
経済的理由で孫が介護をする
祖父母に十分な預貯金がなく、家族の誰かが介護費用を捻出しなければならなくなったとき、稼ぎのいい親が働きに出て、孫が介護に専念する家もあります。
特に10代、20代の孫の場合は、仕事で収入を多く得られないこともあります。親が仕事を辞め、介護に回ってしまうと、家計全体の収入が大幅に減ってしまうという経済的理由から、やむを得ず孫が介護の犠牲になってしまうようです。
一般社団法人日本ケアラー連盟※の定義では、介護を担う18歳未満の子どものことを“ヤングケアラー”といい、18歳からおおむね30歳くらいまでの介護者を、“若者ケアラー”といいます。
こうした若いケアラーたちは、病気や障害をもつ親の介護をしたり、祖父母の介護をしたりしています。
特にヤングケアラーは、学業と介護の両立で悩みます。介護のために、学校を休んでしまったり、自分の勉強時間が取れなかったりして、学力が低下するなどの影響を受けることもあります。
若い世代の介護者ヤングケアラー共通の悩み
ヤングケアラー・若者ケアラーだけでなく、30代、40代で孫介護をしている若い世代に共通する悩みは、孫介護をしている仲間に出会えないことです。
介護仲間が周りにいないので、自ら介護を打ち明ける機会がありません。周りの人間も、まさかそんなに若い時期から、介護をしていると思わないので、配慮ができずに次第に社会から孤立することもあるようです。
特に親がいる場合は、親の健康状態や経済的な問題といった、複雑な家庭事情をオープンにしづらいですし、親がいるのになぜ孫が介護するのか、周りも理解できません。
孫介護がきっかけで、就職や恋愛、結婚、出産といった、人生の節目となるイベントに支障をきたす場合もありますし、こうしたイベント自体を諦め、自分の人生が大きく変わってしまうこともあります。
孫介護が始まる前に準備できること
親の介護をする日がいつか来ると思っている方はたくさんいますが、祖父母の介護まで自分がやると考えている人は、そう多くはないと思います。
祖父母の介護は親がするものだと思っている分、突然始まる孫介護にとまどい、大きなショックを受けてしまうのだと思います。
もし、祖父母の介護を親が担っているのであれば、介護疲れで倒れてしまう前に、介護の状況を、早めに把握しておきましょう。
まずは、介護の愚痴を聞いたり、息抜きする機会を作ってあげたりするだけで、親の介護による疲労は軽減されますし、可能であれば、介護保険サービスなど情報収集をして、親をサポートしてもいいと思います。
また、日頃から親とコミュニケーションを取っておくことで、祖父母の介護の状況を把握できるので、孫の自分が介護することになったとしても、慌てずに済みます。
今日もしれっと、しれっと。
※一般社団法人日本ケアラー連盟https://carersjapan.jimdofree.com/
工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)