妻のALS介護の費用。いくらかかる?介護保険と自己負担
都内の自宅でヘルパーの手を借りながら、筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)患者の妻、希実枝さん(59才、仮名)を在宅介護している貿易会社経営、山本真さん(61才、仮名)の介護の様子を2回にわたってお届けしてきた。最終回では制度や申請の複雑さにスポットを当てる。日本は申請主義のため、介護家族が自ら支援情報を探し出して、自治体の窓口に行き、申請しなければ支援を受けられないのが現状だ。真さんは4年目に入った介護生活から見えてきた自分流の工夫を、読者にも伝えたいという。
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傷病手当の後は障害年金を申請
ALSは、原因が分からず、治療法も確立されていない国の指定難病の一つである。介護が必要な患者は、医療保険法、年金保険法、介護保険法など法律に基づいて、支援を受けて療養生活に入る。希実枝さんの場合は、大学卒業後に入社した会社に転職せずにいたため、ALSと確定診断された後、会社の社会保険から傷病手当を受け取った。休職しても1年半ほどは支給がある。
「傷病手当は給与の60%くらいですが、申請書をかかりつけ医に書いてもらって会社に申請します。社会保険料を払ってきたけれど働けなくなったので、生活の糧の一部をサポートしてくださいという制度です。これも申請しなければもらえません」
そして真さんは、この傷病手当が切れる少し前から障害年金の申請を準備した。年金は年金機構に申請。この申請が煩雑でトラブルも多いと聞いていたので、真さんの場合は社会保険労務士に依頼。手続きはスムーズに済み、傷病手当が終了してもすぐに移行できたという。
その他にも、心身障害者福祉手当、特別障害者福祉手当などがあるので、福祉課やケアマネジャーと相談しながら申請したほうがいいと真さんは話す。
希実枝さんがALSと診断されて、真さんがまず向かったのは地域包括支援センターだったことは前にも書いたが、このときすでに身体が不自由になっていたので、介護保険の申請をして在宅サービスを受けられるようにした。ヘルパーや訪問診療をしてもらうドクターのクリニックの選定、訪問看護師の事業所の選定、処方してもらう薬を自宅までもってきてもらう薬局の選定など、やらなければならないことは山ほどあった。
「待っていても区役所も東京都も国も教えてくれません。情報弱者にならないこと。ネットでも調べられますが、それができない環境の人は、患者の会に行って情報を得ることです。難病になると本人も家族も落ち込むでしょう。でも患者の会のイベントに参加して、先輩患者さんの家族に質問してみるといいと思います。私は頼み込んで、2軒の家族を訪問させてもらって情報を聞き出しました」
病状を聞きながら、介護保険で受けられるすべてのサービスをケアマネジャーと一緒に話し合ってケアプランを作成するのが一連の流れ。認知症など他の原因による介護でも同じだ。地域包括支援センターのケアマネジャーが担当するのは要支援の間だけで、要介護になったら、居宅介護支援事業者のケアマネジャーが専任で担当する。介護保険は区の介護保険課が窓口で、重度訪問介護は、区の障害福祉課が担当する。
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希実枝さんの場合は、人工呼吸器を装着しているため、重度訪問介護サービスで、ケアマネジャーが作ったプランに沿って、入浴、食事、排せつなどの身体介護、家事援助、移動介助などをヘルパーが行う。その重度訪問介護時間をもらうために、例えば東京都では住んでいる区の福祉課に申請に行くことになる。