芸人レギュラーが介護本を上祥 楽しみながら介護の基本が掴める一冊
──ドゥドゥビドゥバドゥビ
──ハイ、ハイ、ハイハイハイ、ワオッ
──あるある探検隊、あるある探検隊ッ
──松本君、誰もが知ってる「あるある」頼むでぇ
──まかしときッ西川君、行くでぇ
──ジジイかババアかわからない
──ハイ、ハイ、ハイハイハイ
「介護施設でネタをやるとこれが一番ウケるんですよ」
よしもと芸人『レギュラー』に密着取材したとき、向かって左の松本康太さんは言っていた。
2004年頃に冒頭で紹介したような『あるある探検隊』ネタでブレイクし、14年に介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を取得、続いて17年にはレクリエーション介護士の資格も得た。
そんなレギュラーが本を出した。
介護芸人になった2人がわかりやすい文章で「介護」を伝える
全5章の構成で、第1章は2人がなぜ介護の世界に足を踏み入れたのか、どうしてレクリエーション介護士の資格を取ったのかなどが、対談形式のわかりやすい文章で説明される。
04年頃に『あるある探検隊』でブレイクしたけれど、ブームは長続きせず、島田紳助さんがプロデュースしたテレビ番組で沖縄に居住し、民宿を運営したりもしたが、その番組も終了。
沖縄から帰ってきて「時間に余裕」ができた。つまり芸人として暇になってしまったことなどを赤裸々に語る。
そんなとき、同じよしもと芸人『次長課長』の河本準一さんにある言葉をかけられ、それが契機となり介護への道が開けていく。
山あり谷ありのエピソードを散りばめつつ、介護のお役立ち情報も満載。読み応え十分だ。
第2章はレクリエーション介護士の公認講師でもある藤井寿和氏との対談で、認知症介護のあり方を語り合う。
この中では、老人ホームの種類や、困ったときの頼りになる『地域包括支援センター』のことなど、まずは知っておきたい介護の知識が詰め込まれている。
また2章の後半では、レクリエーションの重要性が語られ、レクリエーション介護士の資格を持つレギュラーならではの知識と言葉にふれることができる。
第3章では春日部在宅診療所ウエルネスの院長笹岡大史医師の登場だ。この章は特に必読である。
要介護認定の基本や、「あなたの家族に向いている介護は?」と題して、チャート式の施設選びガイドが展開される。福祉道具の種類や、在宅介護で必要な最低限の知識もこれを読めば得ることができるだろう。
またケーススタディごとに分類された介護の流れも理解しやすく構成されていて嬉しい。
第4章では、松本さんが要介護者、西川さんが介護者になりきって、介護現場での基本的なケアを体験する。
車椅子の使い方や、ベッドから車椅子への移乗、ベッドからの起き上がりなど、これを知っているだけでケアがぐっとやりやすくなる知識が、わかりやすい写真とともに構成されている。
番外編で語られるボディメカニクスの基礎知識も必読の情報だ。
そしてこの書籍の真骨頂となるのが第5章だ。
手持ちのスマホにフリーアプリの『COCOAR2』をダウンロードし、書籍のページに印刷されているQRコードを読み込むことで、レギュラーが考えたオリジナルの認知症予防体操の動画を見ることができるのだ。
『あんたがたどこさ』のリズムに合わせて展開する『あんたがた気絶』などはお笑い芸人レギュラーならではの爆笑体操だ。この5章を手に入れるだけでも本書を購入する価値があるだろう。
レギュラーのファンも、そうでない人も、介護に興味があるなら絶対オススメの一冊である。
【データ】
書名:レギュラーの介護のこと知ってはります?
出版社:竹書房
定価:1700円+税
撮影・取材・文/末並俊司
『週刊ポスト』を中心に活動するライター。2015年に母、16年に父が要介護状態となり、姉夫婦と協力して両親を自宅にて介護。また平行して16年後半に介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を修了。その後17年に母、18年に父を自宅にて看取る。現在は東京都台東区にあるホスピスケア施設にて週に1回のボランティア活動を行っている。
●芸人コンビ・レギュラーに密着インタビュー|笑いのバリアフリー化を目指して(前編)