親の言動に困ったらどう対処するのが正解?|“コミュマスター”が伝授する5のコツ
コミュニケーションを円滑にしたいのは誰もが願うこと。困った言動を目の当たりにした時、他人に対しては落ち着いて対処できても、それが自分の親となると、ついつい感情的になってしまう…という人は必見!『大人養成講座』の著者で新著の『恥をかかない コミュマスター養成ドリル』ではすぐに役立つコミュニケーションが学べると話題のコラムニスト・石原壮一郎さんが、親とのコミュニケーションに悩むあたなにズバリ!回答、大人の対処法をアドバイスをしてくれた。
親子こそ円滑なコミュニケーションが必須
高齢で介護が必要な状態にある親、今は元気で暮らしてはいるけど近ごろ弱ってしまった親、自分はまだまだ若いと思っている親……。いろんな状態の親がいるし、親の状態は徐々に変わっていきます。
たいへんなこともストレスがたまる場面もたくさんありますが、何かと頭が痛いのが「コミュニケーション」にまつわるあれやこれや。ちょっとしたことで怒り出す、何度言っても伝わらない、必要なことを言ってくれない……。親子関係も人間関係の一種だし、人間関係をスムーズに保つためには、円滑なコミュニケーションが必須です。
先月、コミュニケーションで陥りがちな失敗に学ぶ『恥をかかない コミュマスター養成ドリル』という本を上梓しました。その中のエッセンスを取り出しつつ、介護を含む親とのコミュニケーションの取り方を考えてみましょう。
親の困ったその1:「デイサービスに行くのを嫌がる」
母親は軽度の認知症。時々、デイサービスに行くのを強く嫌がる日がある。こっちもやることがたくさんあるので行ってもらわないと困るが、どう言えばいい?
【1】「何が気に入らないの。わがまま言わないで」
【2】「私を助けると思って、お願いだから行って」
【3】「お母さんが行かないと、みんな寂しがるよ」
親子のコミュニケーションは、長い付き合いという前提があるだけに、つい気持ちをストレートに口にしてしまいがち。【1】のように責めても、ますます意固地になるだけです。ここはある程度の作戦が必要。あえて【2】のように頼むことで、「自分もまだ我が子の役に立てる」という気持ちを抱いてもらいましょう。【3】は、ちょっとウソ臭く響きそうです。
解答
【1】‐×
【2】‐◎
【3】‐△
親の困ったその2:「同じ話ばかり何度も繰り返す」
父親が最近、同じ話を何度もしてくる。本人としては新しい情報を付け加えているつもりらしいが、忙しいのでじっくり聞いていられない。どう対応するか?
【1】「はいはい、その話はもう何度も聞いたから」とあしらう
【2】「そのあと、こうなったのよね」と結論を先回りして言う
【3】途中まで聞いて「また今度、続きを聞かせて」と席を立つ
会話の目的は「新しい情報を得る」だけではありません。話を聞くことで「相手を認めている」というメッセージを送ることも大切。とはいえ、こっちにも都合があります。ここは【3】ぐらいが、相手を尊重しつつ自分の時間を犠牲にし過ぎない適切な落としどころ。【1】だと存在価値が否定されたみたいで寂しく感じるだろうし、【2】もプライドを傷つけるでしょう。
解答
【1】‐×
【2】‐×
【3】‐◎
親の困ったその3:「父母からお互いの悪口を聞かされる」
近所に住んでいる両親は、昔からあまり仲が良くない。片方が席を外すとすぐ相手の悪口が始まる。聞いているほうとしてもつらいが、どうしたものか?
【1】「私には二人とも大切な親なんだから悪く言わないで」と悲しそうに言う
【2】「言いたいことがあるなら、相手に直接言ったほうがいいよ」と諭す
【3】「それはお父さん(お母さん)が悪いね」と、それぞれに話を合わせる
親は、こっちが期待するほど子どもの気持ちをわかっていません。とくに年齢を重ねると、自分の感情が優先されがち。あらためて【1】のように言われたら、ハッと気づいて、少しは反省してくれる……かも。【2】は、そんな気があるならとっくにやっているので、きっと何の効果もないでしょう。【3】は無難ですが、ますますストレスがたまりそうです。
解答
【1】‐◎
【2】‐×
【3】‐×
もちろん状況は人それぞれであり、正解も人それぞれ。あくまで「こういう見方もある」というスタンスでゆるく受け止めてください。
本書では「コミュニケーション」で失敗を招きがちな5つのパターン(「言葉足らず」「早トチリ」「裏読み」「勘違い」「場の空気」)を紹介し、その予防策や対処法を示しています。親子のコミュニケーションにおいても、気をつけたいポイントは同じ。ちょっと無理やりですが、5パターンに結び付けた「5つのコツ」を導き出してみました。
【親子のコミュニケーションを円滑にする5つのコツ】
・思っていることやしてほしいことは念入りに言葉にして伝える(言葉足らず)
・カチンと来た時は自分が悪く受け取っていないかを疑ってみる(早トチリ)
・不可解な行動でも「好意でやってくれたんだ」と強引に納得する(裏読み)
・元気な頃のイメージと比べて落胆したり責めたりするのは気の毒(勘違い)
・完璧を目指すと自分も相手も疲れる。お互いの失敗は笑って流そう(場の空気)
親とのコミュニケーションで大切なのは、お互いの「至らなさ」を大目に見ること
親子というのは、お互いに「甘え」や「エゴ」が出てしまいがち。いっぽうで、尊敬する気持ちが今の状態への落胆につながったり、大切に思っているからこそ理想的なお世話ができない自分を責めたりもします。親とのコミュニケーションでもっとも大切なのは、お互いの「至らなさ」を大目に見ることと言えるでしょう。
自分の親も配偶者の親も、親子になったのは何かの縁。せっかくの長い付き合いの終盤になって、悪い印象を持ってしまうのはもったいない話です。コミュニケーション力という大人の知恵と技術を駆使して、親子ともども毎日をできるだけ穏やかに楽しく過ごしましょう。それが今できる何よりの親孝行です。
教えてくれた人
石原壮一郎(いしはら・そういちろう)/コラムニスト。1963年・三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせるべく数多くの著書や各種メディアで発信を続けている。新著は『恥をかかないコミュマスター養成ドリル』。2013年8月には世界初の「伊勢うどん大使」(伊勢市麺類飲食業組合&三重県製麺協同組合公認)に就任した。2016年4月より「松阪市ブランド大使」も務めている。
【データ】
『恥をかかないコミュマスター養成ドリル』(扶桑社)
価格:1540円
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