高額療養費制度、高額療養・高額介護合算制度とは?【介護の基礎知識】公的制度<9>
介護にまつわるお金については、公的にさまざまな助成制度が設けられている。申請しないと制度を利用できない場合が多い。
公的医療保険がカバーする保障「高額療養費制度」について解説する。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給する制度のこと。
手術や入院、高額な薬を使った場合など、医療費が高額になったときには医療保険による「高額療養費制度」が適用され、限度額以上支払った分は支給される。入院前など、あらかじめ「限度額適用認定証」を申請して発行しておけば、窓口での支払が限度額だけで済む。
自己負担限度額は年齢や所得によって異なる。また、70歳未満と70歳以上でも所得区分や限度額は違う。
対象となるのは、暦月(月のはじめから終わりまで)が一定額を超えた分。直近12カ月間にすでに3回以上高額療養費の支給を受けている場合は、4回目以降の限度額がさらに下がる「多数回該当」が適用される。
自己負担限度額<69歳以下の人>
所得区分/1か月あたりの自己負担上限額/多数回該当
・年収約1,160万円~/252,600+(医療費-842,000)×1%/140,100円
・年収約770~1,160万円/167,400+(医療費-558,000)×1%/93,000円
・年収約370~770万円/80,100+(医療費-267,000)×1%/44,400円
・~年収約370/57,600円/44,400円
・住民税非課税/35,400円/24,600円
自己負担限度額 70歳以上の場合
所得区分/1か月あたりの自己負担上限額・外来(個人ごと)・外来+入院(世帯ごと)/多数回該当
・現役並み所得者
年収約1160万円以上~/252,600円+(医療費-842,000)×1%/140.100円
年収約770万円~約1160万/167.400+(医療費-558,000)×1%/93,000円
年収約370万円~約770万円/80,100円+(医療費-267,000)×1%/44,400円
・一般/18,000円/57,600円/44,400円
・低所得者・II(I以外)/8,000円/24,600円/適用なし
・低所得者・I(※)/8,000円/15,000円/適用なし
※年金収入のみの場合、年金受給額80万円以下など、総所得金額がゼロ
対象となる費用
高額療養費の対象となるのは、手術や入院費、薬など、保険適用される診療の自己負担額分だ。
入院費の中でも差額ベッド代、食費、先進医療にかかる費用は対象外となる。
原則として、医療機関ごと、診療科ごとの計算で、同じ月に同じ医療機関を受診しても、入院と外来、医科と歯科は合算できません。ただし、70歳未満の場合、複数の医療機関や、旧総合病院内で複数の診療科で21,000円以上の自己負担があれば合算できる(70歳以上の場合、医療機関、診療科、入院・外来の区別なく合算可能)。
医療費が100万円だった場合の例(69歳以下・年収約500万円)
医療費100万円
窓口負担30万
高額療養費として支給
300,000円-27,430=212,570円
自己負担の上限額80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%⁼87,430円
高額医療・高額介護合算療養費制度
要介護の家族と高額な医療費がかかる家族には「高額医療・高額介護合算療養費制度」が適用される。
公的な医療保険と介護保険の両方を利用している世帯では、1年間に支払う医療費・介護費の自己負担の合計に限度額を設定。限度額を超えた分については、医療保険と介護保険の自己負担額に応じて、それぞれの保険者から支給される。
(例)夫婦ともに75歳以上(住民税非課税)夫が医療サービス、妻が介護サービスを受けている世帯の場合
夫(医療サービス)自己負担30万円+妻(介護サービス)自己負担30万円
医療・介護合計自己負担額(年間)31万円
60万円-31万円 差額 29万円を支給
申請方法
高額療養費の支給を受ける場合は、加入している公的医療保険(市区町村の国民健康保険担当、健康保険組合、協会けんぽの都道府県支部、共済組合など)に支給申請書を提出する。申請の際、医療機関で発行する領収書などの添付を求められることもある。
高額療養費の支給は診療を受けた翌月から2年間有効で、その期間内であればさかのぼって支給申請することができる。
【さらに詳しく】
■高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000209855.pdf
構成/介護ポストセブン編集部