【腰痛・ひざ痛」早める習慣・遅らせる習慣をチェック「下りの階段」は要注意、「適度な正座」は◎
加齢に伴い関節に痛みが出やすくなったり、筋肉量が減ることで転倒や骨折のリスクが高まる。もし一人で歩けない状態になると、動くことが億劫になり健康寿命に直結することも。専門家によると生活習慣の改善で腰痛・ひざ痛を防ぐことができるという。毎日の習慣を変えて、老化予防に欠かせない足腰の健康を取り戻そう!
教えてくれた人
室井一辰さん/医療経済ジャーナリスト、戸田佳孝さん/医師・戸田整形外科リウマチ科クリニック院長
腰痛・ひざ痛を早める習慣/遅らせる習慣
さまざまな老化現象を“克服”する研究が世界中で進んでいる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんは言う。
「近年は世界的に老化研究の進歩が目覚ましい。2020年以降は抗老化(エイジングケア)から一歩進み、動物実験などによって“若返り”の可能性が科学的に証明され始めています。米ハーバード大医学大学院教授で、長寿と加齢研究の世界的権威であるデイビッド・シンクレア氏の提唱した『老化は治療や予防が可能な病である』との考え方が広まりつつあるのです」
今年2月に英オックスフォード大の研究チームが「老化を左右するのは遺伝よりも生活習慣」とする研究報告を学術誌に発表した。
「約50万人のデータを解析したところ、遺伝要因が寿命に与えた影響が2%未満だったのに対し、生活習慣を含む環境要因は17%でした。体に良い習慣を日常生活に取り入れることで長生きの可能性が高まるというシンプルながら重要な指摘です」(室井さん)
「腰痛・ひざ痛を早める習慣/遅らせる習慣」について専門医が紹介する。
ラジオ体操、階段の利用ほか。腰痛・ひざ痛の原因になる「危ない運動」
老化予防に足腰の健康は欠かせないが、運動の種類によってはリスクもある。
戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝医師が言う。
「例えばラジオ体操はストレッチとして血行改善効果やリラックス効果が期待できます。しかし、60代以上の人が行なうとかえって足腰を痛める恐れがあります」(以下、「」内は戸田医師)
特に注意が必要なのは「ジャンプ」動作だ。
「着地の際、ひざの前十字靭帯に大きな負担がかかり怪我の危険があります。また前屈運動も勢いよくすると腰に負担がかかって痛める原因になりかねない」
ストレッチは1動作20秒以内が効果的
足腰を鍛えるために階段を利用する人は多いが、これも注意点がある。
「階段を下る際にひざ裏の軟骨に圧力が加わり、痛みの原因になります。無理せずにエスカレータ―やエレベーターを使ったほうがいい」
そのほか、日々の運動にも注意点があるという。
「足腰の痛みの緩和や筋疲労の回復、リラックス作用の面からストレッチは有効です。ただ、反動をつける動きは関節を過度に圧迫して損傷させたり、筋肉の断裂を招く恐れがあるのでやめましょう。また、筋肉の反射で筋繊維が剥がれたり断裂したりする原因になるため、1動作20秒以内に留めることも重要なポイントです」
1時間以上座り続けると腰痛悪化の原因になることも
日常の動作で注意すべきこともある。
「とにかく長く座り続けないことが重要です。1時間以上座り続けると骨盤周りの筋肉が硬化し、腰痛悪化の原因になります。生活習慣病の持病がない人でも、一日に座っている時間が長いほど死亡率が高くなるという長期追跡調査の結果も報告されています」
外出時には、靴底が平坦なスニーカーなどを履くことがひざのけが防止に有効だという。
「かかと部分が高い靴を履くと、つま先への重心移動で大きな力がかかり、ひざが横揺れして軟骨が擦れる力が働きやすくなります。裸足に近いほど、ひざが痛む姿勢になりにくいと考えてください」
足腰の若さを保つ秘訣は、家の中の動作にも。
「変形性膝関節症などの痛みを避けるため椅子に座ることが勧められますが、正座は変形性膝関節症からひざを守る『大腿四頭筋』のストレッチに絶好の機会でもある。可能であればなるべく正座をするように心がけましょう」
「腰痛・ひざ痛」を早める習慣・遅らせる習慣リスト
<老化を早める習慣>
・下りで階段を使う
階段を下る時はひざへの負担が大きいので、無理せずエスカレーターやエレベーターを使う
・ラジオ体操をする
飛び跳ねる動作などが足腰への負担になる
・1時間以上座り続ける
骨盤周囲の筋肉が固まることで様々な障害の原因になる
<老化を遅らせる習慣>
・適度に正座をする
変形性膝関節症からひざを守る大腿四頭筋がストレッチされる
・かかとが平坦なスニーカーを履く
歩行時にひざの横揺れを防ぎ、軟骨を守る
※週刊ポスト2025年7月11日号
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