自覚症状が出にくい暗黒の臓器“すい臓”の守り方を医師が指南「すい臓がんのリスクを下げる肉の食べ方とは」<異変を見つけるチェックリスト8選付き>
消化を助け、血糖をコントロールする「すい臓」は病気の早期発見が難しく、沈黙の臓器と言われている。だが、食生活や調理方法を変えるだけで、すい臓の悪化を止められるという。名医に聞いたすい臓を守る生活習慣をお伝えする。
教えてくれた人
上坂克彦さん/すい臓専門医・静岡県立静岡がんセンター総長
ビールは中瓶1本程度にとどめれば…。急増する「すい臓がんの新規患者」
すい臓は食べ物を消化するすい液を作り、インスリンなどのホルモンを分泌する働きを持つ。
肝臓、腎臓以上に自覚症状が出にくく、胃の後ろ側に隠れるように位置するため腹部超音波検査などでも病気を発見することが難しい。
周囲を大きな動脈に囲まれていて手術が難しく、異変に気づいた時には手遅れというケースが多いことから、「暗黒の臓器」とも呼ばれる。
「近年、すい臓疾患とすい臓がんが急増しています」
そう指摘するのは、静岡県立静岡がんセンター総長ですい臓専門医の上坂克彦さんだ。
2000年に2万45人だったすい臓がんの新規患者は2019年には4万3865人と20年で倍増した。
「急性すい炎は暴飲暴食、胆石が主な原因で、お酒を飲み続けると再発しやすくなります。そして慢性すい炎に移行する可能性が高まります。慢性すい炎はすい臓がんのリスクを約13~16倍に高めます。また、一等親内にすい臓がんの人が2人以上いるとリスクが6.4倍になります」(上坂さん。以下「」内は同じ)
すい臓を守る「肉の食べ方」があった!
すい臓の不調をいち早く察知するための気を付けたい兆候を上坂さんが解説する。
「急性すい炎はみぞおちあたりに差し込むような激痛や吐き気、発熱が出やすい。慢性すい炎は緩やかに進行し、腹痛や背部痛、腹部膨満感や体重減少などがみられます。
急性、慢性すい炎ともに大きなリスク要因は多量のアルコール摂取です。慢性すい炎になると食べ物が消化されず、下痢になったり、脂が浮いたような白っぽい便が出ることがある。毎日便を確認することが異変発見の一歩になります」
すい臓がんでは黄疸や腰や背中に痛みを感じるケースもあるというが、「痛みを感じるならすい臓がんが進行している可能性が高い」と上坂さん。
下掲のチェックリストに当てはまる項目が複数ある人は気を付けたい。
「目安としてアルコールはビール中瓶3本以上、日本酒なら3合以上飲む人は要注意。中瓶1本、日本酒は1合程度にとどめましょう。一方、動物性の脂肪はすい臓に負担をかけます。牛肉や豚肉のバラやロースは控え、脂質が少ないもも肉やヒレ肉を食べましょう。ベーコンやウインナーなど豚肉加工食品も高脂質なので要注意です」
調理方法でリスクを低減することもできる。
「肉の脂身部分をカットし、脂身の多い肉は下茹でしてから調理すると効果的。また、調理法は揚げるよりも焼く、蒸すを心がけましょう。動物性脂肪を摂る際はコレステロールの吸収を抑える食物繊維を多く含む野菜や海藻類、キノコ類を一緒に食べる。甘党の人は、バターや生クリームが多い洋菓子より和菓子を選んだほうがよいでしょう」
沈黙の臓器を守るために、今日からできることがたくさんある。
すい臓の異変チェックリスト
チェックリストですい臓の変化を確認しよう!
【1】暴飲暴食でお腹が急激に痛くなったことがある
【2】1回の飲酒でビール中瓶3本以上飲む
【3】激辛料理をよく食べる
【4】肉の脂身が好き
【5】油の浮いた下痢が出る
【6】健康診断で血清アミラーゼの数値が高いと指摘された
【7】健康診断で急に血糖値が上がったと指摘された
【8】親族にすい臓がんになった人がいる
※週刊ポスト2025年5月23日号
●がん罹患の可能性がわかる「腫瘍マーカー」の種類・基準値|すい臓がんなど13種類のがんを高精度に区別する最新の研究も
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