医師が選ぶ本当に頼れる名医【がん治療編】「すい臓がんのゴッドハンド、大腸がんのエキスパート」など31人を一挙公開!
がんは不治の病といったイメージが根強いが、医療の進歩によって早期に発見できれば治る病気、あるいは長く共存できるようになった。そこで重要になるのが、“医師選び”だ。知識と経験を併せ持ち、寄り添ってくれる医師は誰なのか。それを最もよく知るのは、臨床の現場に立つ医師にほかならない。「名医が推薦する名医」を一挙公開。
教えてくれた人
中川恵一さん/東京大学医学部附属病院放射線科特任教授・医師、上昌広さん/医療ガバナンス研究所理事長・医学博士、齋浦明夫さん/順天堂大学医学部附属順天堂医院・医師、上原圭さん/日本医科大学消化器外科講師・医師
手術件数がひとつの指標に
本誌は各分野の名医に取材し、「自分や家族を診てもらいたい医師」を聞いた。医師自らが選ぶ「本当に頼れる名医」は誰なのか。
日進月歩の「がん治療」の名医を一覧表にした。自身も放射線治療の権威である東大病院の中川恵一医師に聞いた。
「食道、胃、大腸など消化器がん全般を担当する東大大学院准教授・辻陽介医師を挙げたい。彼の内視鏡による腫瘍切除は最高レベルの技術で、患者さんの痛みも身体の負担も常に最小限。能力、人柄ともに優れ、まだ40代という消化器内科の若きプリンスです。もちろん私の内視鏡検査も担当してもらっています」
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は“サイレントキラー”と呼ばれるすい臓がんのゴッドハンドを挙げた。
「数千件を超える圧倒的な執刀数で知られるのが順天堂大学医学部附属順天堂医院・齋浦明夫医師。難しい手術が多く、腕の差が出てしまう領域で執刀数が多いことは、その医師の治療実績に対する信頼の証です」
“丁寧さ”や“泥くささ”も評価
肝胆膵外科のトップランナーである齋浦医師はこう話す。
「この20年、肝胆膵領域では腹腔鏡やロボットなどの技術的な進化に加えて抗がん剤も進歩し、手術の守備範囲が広がりました。その間、第一線で治療に取り組み、手術を多く任せていただけたことで、すい臓の医師として評価いただいたのだと思います」
そんな齋浦医師は、「大腸がん」の名医を推挙する。
「スタンダードな手術をきれいにやってくれる人で、自分より若い先生がいい。がん研有明病院・秋吉高志医師は手術が速く正確で、結果に向き合い不十分なところを改良していく姿勢も素晴らしい。日本医科大学消化器外科・上原圭医師が担当する大腸がん手術は、開けてみないとわからない『生きるか死ぬか』のレベル。ある意味、そこまでの状態にはなりたくないが、いざという時に頼りたい名医です」
日々、難手術をこなす上原医師が語る。
「進行や再発した大腸がんの手術は難度が高く、時間がかかって大がかりです。リスクが高く、良くなるかどうかも手術してみないとわからない。それでも覚悟を決めた患者さんに応えるべく、“泥くさい手術”をやっています」
名医が選んだ「日本最高の名医31人【がん編】」
※名前/所在地/所属・肩書/推薦理由
※名前は五十音順。がんの「専門」については主な対象部位を記した。推薦理由は医師の回答を基に本誌作成
<肺がんの名医>
臼井一裕さん/東京/NTT東日本関東病院呼吸器内科部長/最新知識をもとにステージIII以上の進行肺がん患者の希望に寄り添う丁寧な治療を行なっている
小田誠さん/神奈川/新百合ヶ丘総合病院・呼吸器外科統括部長(呼吸器センター長)/痛みの少ない低侵襲手術を目指し、高齢者でも1泊2日の短期入院手術を実現している
鹿毛秀宣さん/東京/東京大学医学部附属病院呼吸器内科教授/肺がんの抗がん剤のスペシャリスト。エビデンスをもとに各科と協力して患者に適した治療を実践
鈴木健司さん/東京/順天堂医院呼吸器外科教授/肺がん手術のスペシャリスト。肺がんをメスで切り取る高い技術は随一とされる
中村彰太さん/愛知/名古屋大学医学部附属病院呼吸器外科講師/呼吸器外科チームが一丸となり治療にあたる。患者にとって最適な医療の提供を目指す
<大腸がんの名医>
秋吉高志さん/東京/がん研有明病院大腸外科部長/直腸がんの腹腔鏡下手術のエキスパート。手術を振り返り、技術を磨き続ける
上原圭さん/東京/日本医科大学消化器外科講師/根治の難しい進行がんや再発がんの手術を専門とする。「諦めない治療」がモットー
絹笠祐介さん/東京/東京科学大学病院病院長補佐大腸・肛門外科診療科長/直腸がんロボット手術のスペシャリスト。術後の排尿障害発生率3%。肛門温存率は9割
野中隆さん/長崎/長崎大学病院腫瘍外科准教授/発生率の高い合併症を抑えた大腸がん手術のエキスパート。ロボット手術の技術が高い
吉野孝之さん/千葉/国立がん研究センター東病院副院長・消化管内科医長/2022年に世界最大のがんの学会で、治療を最も進化させた世界トップ4の1人に選ばれた
<胃がんの名医>
宇山一朗さん/愛知/藤田医科大学先端ロボット・内視鏡手術学講座教授/世界初の腹腔鏡の胃全摘術に成功させ、上部消化器ロボット手術の第一人者
大森健さん/大阪/大阪けいさつ病院消化器外科主任部長/ロボット手術の達人。様々な技術を駆使し、術後の生活の質を保つための工夫を徹底する名医
<食道がんの名医>
瀬戸泰之さん/東京/国立がん研究センター中央病院病院長/手術支援ロボットのダヴィンチによる世界初の食道がん手術を行なった食道外科の第一人者
<消化器がんの名医>
斎藤豊さん/東京/国立がん研究センター中央病院内視鏡センター長・内視鏡科長/内視鏡治療の名手。さらなる低侵襲治療を目指し、新たな診断や治療の開発にも取り組む
砂川優さん/神奈川/聖マリアンナ医科大学病院腫瘍内科部長/薬物療法、がんゲノム医療のエキスパート。患者のQOLを重視した治療を行なっている
辻陽介さん/東京/東京大学大学院医学系研究科消化器内科学次世代内視鏡開発講座特任准教授/高い内視鏡の技術を活かし、病気の早期発見、的確な診断、低侵襲治療を行なっている
<すい臓がんの名医>
井上陽介さん/東京/がん研有明病院肝胆膵外科副部長/難易度の高い手術に粘り強く臨む。ロボット支援下の手術の開発にも力を注ぐ
齋浦明夫さん/東京/順天堂医院肝胆膵外科教授/圧倒的な症例数と繊細な技術は国内トップレベル。最高難度の手術を20年以上行なう
<肝臓がんの名医>
椎名秀一朗さん/東京/順天堂医院消化器内科特任教授/ラジオ派治療の第一人者。根治不能とされた患者を数多く救う。後進の指導にも尽力する
本田五郎さん/東京/東京女子医科大学病院肝胆膵外科教授/肝胆膵腹腔鏡手術の名手として世界的に知られる。国内外で多くの講演や手術指導を行なう
<前立腺がんの名医>
永田政義さん/東京/順天堂医院泌尿器科准教授/豊富な臨床経験を活かし、患者ごとに合わせた総合的なマネージメントを提供する
吉岡邦彦さん/東京/板橋中央総合病院特任副院長・ロボット手術センター長/2006年、泌尿器科で国内初となるダヴィンチ手術を導入したロボット手術のパイオニア
<婦人科がんの名医>
金尾祐之さん/東京/がん研有明病院婦人科部長/難しい症例だとしても、「命を救う」という強い想いで、諦めず患者のために尽くす
<血液がんの名医>
神田善伸さん/栃木/自治医科大学内科学講座血液学部門教授/血液の病気に関しての臨床経験が豊富。研究や、若手医師の育成にも力を注ぐ
<乳がんの名医>
上野貴之さん/東京/がん研有明病院乳腺センター長・乳腺外科部長/豊富な臨床経験と知識をもつ。術後のQOLを最大限考慮し、アフターケアも丁寧に行なう
<骨・軟部腫瘍の名医>
河野博隆さん/東京/帝京大学医学部附属病院整形外科主任教授/骨肉腫などが専門で、特にがんの骨転移診療のトップランナー。治療後の運動器障害に詳しい
<脊椎がんの名医>
村上英樹さん/愛知/名古屋市立大学整形外科主任教授/24年7月、下大静脈を合併切除する脊椎がん拡大根治手術を世界で初めて成功させた
<内視鏡検査の名医>
豊島治さん/東京/とよしま内視鏡クリニック院長/内視鏡検査での病気の発見率を追求。精度が高く、苦痛の少ない検査を提供している
<一般・消化器外科の名医>
能城浩和さん/佐賀/佐賀大学医学部一般・消化器外科学講座教授/国産の手術支援ロボットによる“噴門側胃切除”を国内で初めて成功させている
<がん全般の名医>
竹中亮介さん/千葉/国際医療福祉大学成田病院放射線科教授/専門はがんの放射線治療。エビデンスに基づき、患者にきめ細やかな治療を行なっている
中川恵一さん/東京/東京大学医学部附属病院放射線科特任教授/日本で最も有名な放射線科医の一人で、がん診療のスペシャリスト。緩和ケアにも精通
※週刊ポスト2025年1月3・10日号
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