82才の現役医師が実践している簡単で楽しく続けている健康法「自分の足で正しく歩く」
年を取れば誰しも、体や心が弱ってくる。何才でも若い頃と変わらず、あるいは若者以上に元気な人が大切にしているのは、特別な食事法やハードな運動ではなく、ただ「歩く」ことだった。どんなに少なくても毎日6000歩は歩くというのは82才で現役医師を続けている天野惠子さん。天野さんが日々行っている歩くことについて、お話を伺った。
教えてくれた人
天野惠子さん(82)/静風荘病院医師。性差医療研究の第一人者で「女性外来」のパイオニアとして知られる。
「日々、当たり前に歩くこと」がいちばんの健康法
82才のいまも現役医師として勤務している天野惠子さんにとって「歩く」ことは“意識的に行う運動”ではなく、“毎日の当たり前の習慣”だ。現在、週に2回の病院への出勤と週3回の整体へは、自宅から電車とバスを乗り継ぎ、徒歩で通っているという。
「歩くことは、立派な有酸素運動。筋力だけでなく、心肺機能を向上させる効果もあります。自宅から最寄り駅までは徒歩で片道3600歩で、どこに行くときも必ず歩いています。電車やバスの乗り降りもあり、帰りは必ずスーパーに寄ってその日の夕食の材料を買うので、平日に歩く歩数は軽く1万歩ほど。用事のない日も、毎日必ず買い物には出掛けるようにしているので、どんなに少なくても、毎日6000歩は歩いていることになりますね」(天野さん・以下同)
自宅から徒歩20分ほど離れた大きな公園での散歩も、40年前に住み始めた頃からの日常的な習慣だと話す。
「大きな池のある公園で、1周するとちょうど1時間くらい。四季折々の景色を見ながら歩いていると、いやなことも忘れてしまうんです。ひとりで無心になれるのは、散歩のメリットの1つですね。昔からよく、むしゃくしゃしたら公園を散歩していました。子供の頃は毎日片道30分歩いて学校に通っていたので、私にとって、歩くことは暮らしの中の当たり前の行為なのです」
歩き方の微妙なくせに要注意。「正しく歩くこと」が大切
そんな天野さんも、70才を過ぎると年齢による体の不調を感じるようになった。
「75才の頃、急に筋肉が落ち始めました。体重が6kgも減ってしまい、免疫力も落ちて、続けざまに3回も虫垂炎にかかってしまった。そのときから、歩くことも含め筋肉を鍛えることをより意識するようになり、現在はパーソナルトレーニングや指圧にも通っています。どんなに気をつけていても、体はある年齢を境に坂を転がるように老いに向かっていきます。それを食い止めるためには、体を鍛え、整えること。そのもっとも簡単でわかりやすい方法が『歩くこと』なのです」
天野さんは「正しく歩くこと」も重視するようになった。歩くときに無意識に前屈みになってしまうくせがあり、トレーニングのたびに指摘され、直しているのだという。
「若い頃にスキーで左足を骨折したことがあり、左足をかばって歩くくせがついていたんです。年を取ると、こうしたちょっとしたくせがけがを招くことも少なくありません」
実際、国民生活センターの調査によると、65才以上の高齢者の事故のうち約8割が「家の中での事故」だ。年を重ねると歩き方の微妙なくせだけでなく、筋力が著しく低下した「フレイル」などが原因で、カーペットなどの小さな段差でもつまずきやすくなる。
「正しく歩くことが当たり前になっていれば、年を取ってもフレイルになる可能性は低いでしょう。体は使えば使うほど機能が上がるので、元気なうちから歩く習慣をつけておくこと。“認知症予防には、早歩きとゆっくり歩きを交互に行いましょう”などと言われますが、いくら効果があっても、これでは“治療”。楽しくなければ続けられません。健康のためには、楽しみが必要です。ぜひ、自分の足で歩くことを楽しんでほしい。歩いて損することなんて、1つもありませんからね」
自分の足で楽しんで歩くこと。それがいちばんの健康法なのだ。
写真/PIXTA
※女性セブン2025年5月1日号
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