令和の米騒動は高齢者の食事や栄養面にも影響か「お米の代わりにパンや麺を食べるときの注意ポイントを管理栄養士が指南
お米の価格安定のため備蓄米の放出が話題だが、高騰したお米の価格は一向に下がる気配がない。高齢者の栄養相談を行っている管理栄養士の川鍋仁美さんによると、お米の代わりに他の食品で代用している人も多いという。ご飯を麺やパンに置きかえる場合、ご飯と比べて栄養面ではどうなのだろうか。お米高騰時代の食事の注意ポイントについて教えてもらった。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
お米高騰で高齢者の食生活に影響も
お米の価格の高騰が続いています。日本人の主食であるお米を気軽に買うことができない状況は高齢者がいる家庭でも大きな負担になっているのではないでしょうか。筆者が栄養相談を行っている介護施設でもお米の高騰は経営にかかわる深刻な問題です。デイサービスや入居者に提供する食事では、お米の仕入れに苦戦しています。
また、宅食サービスなどを注文している高齢者のご家庭も多いと思います。全国で宅配弁当チェーンを展開する企業の担当者によると、「お米1kgあたりの仕入れ価格が1.5倍に跳ね上がっている」とのこと。
食材の高騰でお弁当代の値上げに踏み切った矢先だったため、お米の価格高騰により「利益を確保する事が難しくなっている」と現場の声が挙がっているそうです。
こうしたお弁当事業者も介護事業所でも、少しでも安い新たな仕入れ先の開拓や、備蓄米の確保に動き出しているため、一般消費者に備蓄米が届くのかどうか、お米の価格が下がるまでにはしばらく時間がかかりそうです。
→介護食の宅配は「味・サービス・安心感」で選ぶ 宅配弁当の無料お試しサービスを管理栄養士が実食レポート
高齢者の食卓「お米の代わりにパンや麺が増えた」
最近、高齢者のかたの栄養相談を行っていると、お米の価格高騰が話題に上るようになりました。「朝食はご飯よりもパンが増えた」「お昼ご飯は麵が多くなりました」という声もよく聞かれます。
お米不足という現象は、高齢者の食事、栄養摂取にどんな影響があるのでしょうか。対策を考えてみたいと思います。
お米の代わりになる食材と目安量
お米以外のものを主食にすることは問題ないのですが、パンや麺類にすることで栄養バランスがとりにくくなることや、食べる量にも注意が必要です。お米の代替品となる食材や食べ方のポイントをご紹介します。
お米の栄養素の7割以上は炭水化物です。炭水化物は私たちが体を動かすエネルギー源になるため欠かせない栄養素です。
お米の代わりになるものはこの炭水化物を豊富に含む食材を選びましょう。代表的なものはパンや麺類などがあげられます。
■ご飯と麺、パンの量とカロリー栄養素の比較
種類|量|エネルギー|炭水化物の量
ご飯|茶碗小1杯 120g|187 kcal|44.6g
うどん(茹)|1玉 200g|190kcal|43.2g
そば (茹) | 1玉 200g|260kcal|52.0g
中華麺(茹)|1玉 120g|160kcal|35.0g
パスタ(乾) |1束 100g|347 kcal|73.1g
食パン|6枚切り 1枚|161kcal|30.4g
ご飯の代替に麺やパンを食べるときの注意ポイント
ご飯のカロリーや栄養量と比べながら、高齢者におすすめの食べ方を考えてみましょう。
麺類/ご飯よりカロリー過多になりがち
麺の種類によって意外とカロリーが異なることに注意しましょう。そばやパスタの場合は全部食べてしまうと、ごはんと比べてカロリーは多め。
市販品のカロリーの表示は、1人前が、茹で麺なら1パック、パスタなど乾麺は1束が目安となりますが、高齢者の場合、食べる量を1人前の8割程度にして調節するとよいでしょう。
麺を主食にすると、どうしても野菜やたんぱく質源(肉・魚・卵・大豆製品)の摂取量が少なくなってしまいます。和風の料理の場合は温泉卵や納豆、奴豆腐、お浸しを、洋風なら茹で卵や温野菜サラダ、ツナサラダなど何か1品は必ずプラスしてみることを意識してみましょう。プラス1品が難しい時は、ヨーグルトやチーズなどを補食として活用するのもいいでしょう。
パン/野菜やたんぱく質が不足しがち
パンを食べるときもバターやジャムを塗ったトースト1枚だけでは栄養が不足してしまいます。茹で卵やヨーグルトなどのたんぱくをプラスしてみましょう。または、パンにチーズやハム、野菜をのせてピザトーストにするのもおすすめです。
かむ力や飲むこむ力に問題のない場合には、卵や野菜を一緒に挟んでサンドイッチにすると野菜不足も補えます。
また、飲み込みに不安がある場合は、牛乳や市販のスープにパンを浸してパンがゆのようにすると食べやすくなりますよ。最近はたんぱく質を強化したポタージュなども売られているのでそれらを利用するとたんぱく質の補給にもつながります。
1日の中で栄養バランスを考えよう
パンや麺などを主食にする場合、単品料理になりやすく、栄養バランスが偏ってしまいがち。意識して副菜に野菜やたんぱく質を多く含む食材を取り入れましょう。
1食でバランスよく食べることが難しい場合は、1日の中で過不足が補えるような献立を考えてみてください。
間食で牛乳や乳製品(チーズやヨーグルト)を摂ったり、夕食で野菜スープやけんちん汁など具沢山の汁物をとったりすること調整するのも良いと思います。
パンや麺は比較的柔らかくかむ力が弱ってきている高齢者のかたにも利用しやすいので、お米の高騰の今だけでなく、普段の食事のバリエーションを増やすためにも食べ方に注意しながら、ぜひ活用してみてください。