秋の宮中祭祀“新嘗祭”「天皇陛下のお米」と「国民のお米」で五穀豊穣へ
秋の宮中祭祀(さいし)“新嘗祭(にいなめさい)”は神々に新穀をお供えし、その恵みに感謝することで、国家安泰・国民の繁栄を願うものだ。お供えものに使われるお米「献上米」には、さまざまな伝統があるという。
教えてくれた人
山下晋司さん/皇室解説者
「天皇のお米」と「国民のお米」で五穀豊穣へ
実は、神々に供えるお米は農家だけでなく、天皇陛下も育てていらっしゃる。お米を大切にする皇室の伝統を受け継ぎ「皇室の稲作」を始めたのは昭和天皇だ。
「1927年に昭和天皇が始めて以来、皇室の稲作は伝統行事になっています。昭和天皇のご意向を受け、当時お住まいだった赤坂離宮に水田と陸稲(おかぼ/畑で栽培される稲)用の畑が作られました。翌年の1928年には昭和天皇と香淳皇后が皇居に引っ越されたため、皇居内に新たな水田と畑が作られました。以降現在に至るまで、この場所で天皇の稲作が行われています」
皇居内の畑では粟も育てられ、上皇ご夫妻、天皇陛下、秋篠宮ご一家で一緒に種まきや稲刈りをされることもあった。
今年も4月に天皇陛下がうるち米のニホンマサリと、もち米のマンゲツモチの種もみをまかれる「おてまき」をされて稲作がスタート。5月には「お田植え」を、9月には「お稲刈り」が行われた。
陛下が収穫されたお米は、各地から献上されたお米とあわせて合米にされる。そして、お供え用に炊かれたお米と、お米とともにお供えされるお酒「白酒黒酒(しろきくろき)」に使われるという。
「天皇のお米」と「国民(農家)のお米」が合わさって五穀豊穣を願う。そこには“国民と共にある”という皇室の思いも込められているのかもしれない。
取材・文/辻本幸路
※女性セブン2024年10月24日・31日号
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