猫が母になつきません 第471話「よゆう」
ノラ時代、2匹は1日に4回ほどベランダに現れてごはんを食べていました。ところがある日の夜、ぐれだけがやって来て隊長が姿を見せません。そんなことは初めてでした。待てど暮らせど現れない。ぐれは不安そうにくーんくーんと鳴いていました。結局一晩待っても姿を見せませんでした。そして次の日も。したくない想像をいろいろしましたが、2日姿を見せないとさすがに覚悟を決めざるを得ない感じでした。大きなカラスが以前からいて、隊長はごはん待ちしているうちにベランダで寝てしまったりしていたので、狙われないように餌場は物干し竿にすだれをかけて目隠ししていたのですが…。それとも他の誰かが保護したとか?2匹を一度に保護するのは至難の業なので隊長だけが捕獲されたのかもしれない…。ひとりになったぐれは鳴きながら2晩家の中で寝ました。私はずっとそばにいて、ぐれがくーんと鳴くと同じようにくーんと返しました。そうするとぐれは少し落ち着くようでした。
このままぐれだけを保護しようと覚悟した3日目の夕方、ベランダで鳴き声がして急いで見に行くと隊長の姿が。サッシを開けるとすぐに入って来て、ごはんをねだりました。ほんとうに嬉しかった。ぐれは喜ぶというよりもほっとして力が抜けたようで、ぼーっとしていました。
後でわかったことですが、隊長はリフォーム工事中の隣家に入り込み、作業員の人がそれに気づかないまま戸締りして帰ってしまい、次の日も人がたくさんいるので怖くて出られず隠れたままで、3日めにやっと作業員の人が気がついて外に出したということでした。
そんなこともあって、それからすぐに2匹を家の中に保護しました。隊長もぐれもびっくりするくらいすんなり家猫になりました。トイレは教えなくてもちゃんとしたし、家具や家を傷つけたりもしない。母猫が預けていく子猫はなぜかみんなそうなんです。人間に飼ってもらうための躾をされているのかと思うほど。3匹いるとごはんとお水、トイレの掃除でかなり忙しいのですが、彼らがくれるエネルギーがあればそんなものはなんのその。スマホにすごい勢いで2匹の写真や動画がたまっていってます。
【関連記事】
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
※現在、1話~99話は「介護のなかま」にご登録いただいた方のみご覧になれます。「介護のなかま」のご登録(無料)について詳しくは以下をご参照ください。
https://kaigo-postseven.com/156011
