「夜こそ炭水化物」「おやつは3時でなくていい」 管理栄養士が教える健康的な食生活に欠かせない“食の常識”のアップデート
健康的な生活を送るために必要なことの1つが、正しい食生活の常識を持っていること。知識を十分に持っているつもりでも、意外と固定観念や思い込みに惑わされていたり、常識が古いままだったりすることはある。そこで、『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』（アスコム）を上梓した、管理栄養士の笠岡誠一さんに、食品成分表の見方とアップデートするべき食の常識について詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
管理栄養士・笠岡誠一さん
かさおか・せいいち。東京農業大学大学院卒業。山之内製薬（現アステラス製薬）を経て、2000年より文教大学専任講師を務め、2014年より現職。専門分野は栄養生理学、食品科学で、「レジスタントスターチ」に早くから注目し、腸内環境を改善する”腸活”を多方面で世に広める。著書に『炭水化物は冷まして食べなさい。』（アスコム）、『9割の人が間違っている炭水化物の摂り方』（同）など。
覚えておきたい食品成分表の見方
健康的な生活を送るために、食生活の常識力を上げるポイントとして、笠岡さんは主に2つのことをすすめている。1つ目が食品成分表の見方を覚えることだ。食品成分表は冊子になったものが書店に並んでいるほか、ネットでも簡単に検索でき、さまざまな情報が載っている。しかし、食品に関する知識があまりない人が見た場合、どこに注目すればいいかわからない可能性が高い。
「食品成分表を活用するには、それを読み取るためのポイントがいくつかあります」（笠岡さん・以下同）
まずチェックしたい「食物繊維」と「塩分」
食品成分表で確認しておきたいのが「食物繊維」と「塩分」だ。食物繊維は十分に摂れているか意識してチェックすることが大切だ。また、高血圧の原因とも言われる塩分の量も、「食塩相当量」という項目で確認するようにしよう。
「食品成分表は100グラムが単位になっています。摂取した栄養成分量を知るには、簡単な計算が必要になります。たとえば、ごはんお茶碗1杯はおよそ150グラムです。そうすると、記載されている栄養成分を1.5倍すれば、摂取した量がわかるということになります」
「水分」も要チェック
さらに、「水分」もチェックしておきたいポイントだ。水分に着目することで、栄養成分を効率よく摂取できる食品かどうかを見極める目安となる。例えば、白米の水分量は全体の約15％で、炊いたご飯の水分量は約60％。一方、野菜は80～90％が水分と、ほぼ水分のため、栄養成分を摂取するにはやや非効率だ。
「そんなふうにたまに食品成分表を見て、自分の食事の栄養チェックをしていただいて、食生活への常識力を高めていただけばうれしいです」
アップデートしたい「食の常識」
食生活の常識力を上げるポイントの2つ目が、固定観念や思い込みなどをなくし、食の「常識」をアップデートすることだ。例えば、食事は「手作り」がよく、「出来合い」のものは悪いというのも思い込みの1つだ。
「出来合いのもの＝健康に悪いとは、一概にいえません。食品添加物を心配されるかもしれませんが、日本の厳しい基準の中で使用されています。また、食べる量を考えれば炭水化物やたんぱく質、脂質の方が圧倒的に多いわけですから、栄養バランスを整えることを優先的に考えたほうがよいと思います」
夜こそ炭水化物
夜はあまり食べないほうがいい、夜は炭水化物を抜いたほうがいい、といったこともよく聞かれるが、「夜こそ意識して炭水化物をしっかり摂ってほしいと考えています」と笠岡さん。夜寝ている間も人間の体の中ではさまざまなことが行われており、きちんとエネルギーを供給する必要があるためだ。
「夜の食事で炭水化物を抜いてエネルギー不足になると、そうした働きに悪影響が及ぶと考えられます」
おやつは3時にこだわらない
「3時のおやつ」という言葉の通り、おやつと言えば午後3時ごろに食べるもの、という固定観念を持っている人も多いだろう。しかし、笠岡さんは、おやつの時間は午後3時にとらわれる必要はないと言う。
「一般的なビジネスマンの生活スタイルですと、昼食から夕食までの間が空いてしまうので、その間に『おやつ』や『補食』を摂るのがよいでしょう。昼食を終えるのが13時だと考えれば、そこから3時間後の午後4時ごろがおすすめです」
ファストフードも栄養バランスを調整すればOK
「体に悪いもの」として挙げられやすいファストフードだが、実はこれも思い込み。笠岡さんによれば、ファストフードも選び方やアレンジ次第で健康的な食事にできるそうだ。
「それこそ十把一絡げに『ファストフードはよくない』と烙印を押す人がいます。その筆頭にあげられるのがハンバーガーです。『添加物をたくさん使っていそう』という声も多いですが、農家から直接食材を仕入れるなど、多くの工夫がなされています」
ファストフードを食べたいときには、テイクアウトして、足りない副菜や汁物を足すなど、栄養バランスを調整し、健康的なメニューにアレンジ。そうすることで我慢しすぎることなく好きなものを食べることもできるのだ。
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