「母の歯にも膵臓にも優しいおでんシチュー」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第41話
漫画家で栄養士の資格をもつうえだのぶさんの母は、慢性膵炎。対処法として、膵臓を労る脂質低めの食事をあれこれ工夫している。しかし母の定期検診で「再検査」が決定し、てんやわんやのうえだ家。そんな中、また新たな問題が!今度は母の「歯」が!?
母の歯が…
水道トラブルに母の再検査決定とドタバタな年末を過ごし、なんとか穏やかに新しい年を迎えられたと喜んでいたのも束の間。まだ松の内も明けない正月4日、母が「歯茎が痛い」と言い出しました。入れ歯がかぶせてある部分が痛くて食事ができないと言うんです。
2日ほどお粥メインで過ごし、休診明けの朝イチで歯医者に行きました。しかし、そこでまた新たなトラブルが!
先生「昔抜けた歯の根元が残っていたみたいです。それが入れ歯に当たっていたので、ちょっと削りました。本当はその歯を抜けばいいんですが…」
「が?」――嫌な予感
先生「骨粗しょう症の薬を飲まれているので、抜歯ができませんね」
え⁉ どういうこと⁉
先生によると、骨粗しょう症の薬の中には、抜歯をすると抜いた部分が回復せず壊死してしまうものがあるそうなんです。
受付のカウンターに「骨粗しょう症の治療薬を飲まれているかたは必ず治療前に申し出てください」の張り紙がしてあったので申告したんですが、まさかそんな理由とは!てか、張り紙に気づかなかったらヤバかったじゃん!
「とりあえず応急処置はしましたが、もしまた痛くなって抜歯が必要な時は大学病院を紹介しますので、そちらで手術を…」
え~!また手術⁉ ウソでしょ~⁉ トラブル続きすぎっ‼
ここまで読んで「お祓いにでも行った方がいいのでは?」と思われたかた、いると思います。私も今までだったら速攻で母と一緒に神社に行ったと思います(行ってましたもん)。
でもねー、なんか本当に「ケセラセラ体質」になっちゃったみたいで(39話参照)、トラブルが続きすぎて耐性ができてしまったのか鈍感になったのか…。
「何でこんなことに?」とか凹まなくなったんですよ。
「なるようになるさー」って言うより「はいはい、そうですか」って感じ。なんだろう、色々起き過ぎて脳が「もう、いちいち受け止めてらんねーよ!」ってブチ切れたんでしょうか。性格変わっちゃったんでしょうか(謎)。
さて、運良く応急処置で痛みは治まったのですが、「普通の食事はまだ怖い」と母。とはいえ、お粥ばかりってわけにはいかないし(また骨や筋肉が弱ってしまうと困るので…)。
ちょうどこの時、ストーブで「おでん」をどっさり作っていました。ご近所から頂いた大根をたっぷり入れて、じゃがいもは丸ごとゴロっと。他は糸コンにゆで卵、ちくわ、さつま揚げ(山口県では「天ぷら」と呼びます)。
仕込んで2日目、しっかり煮えてます。これだったら食べられるでしょ。
母、大きなじゃがいもをスプーンでつぶしながらもぐもぐ。離乳食?いや、介護食か。
骨のことを考えて、残ったおでんはスキムミルク(脂質低め)を入れ、片栗粉でとろみをつけてシチューにしました。
和風だしと乳製品って合うんですよ。おせちの煮物の人参も入れてβ-カロテンプラス。
応急処置のおかげで痛みが治まった母と、おでんシチューを食べながら2人会議。
私「とりあえず先に膵臓の再検査だよねえ」
母「結果を聞いてから、歯を抜くかどうか考えようや~」
私「それまでに歯の痛みが出ないとえーけどねえ」
母「怖いけえ、しばらくお粥だけにしようやぁ」
私「そういうわけにいかんのじゃー!!」
――次回は再検査の結果です。膵臓の石の様子は? 今後の治療法はどうなる!?
NOオイルMemo「おでんシチューは乳和食でヘルシー」
「乳和食(にゅうわしょく)」というジャンルがあります。おみそ汁に牛乳をプラスしたりして、コクや旨みでおいしく減塩するという調理法なのですが、カルシウムも摂れるので一石二鳥。
我が家では牛乳の替わりに「NOオイル」なスキムミルクを使って「おでん」を「シチュー」にアレンジするのが定番です。
→「母の食生活に欠かせないスキムミルク」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第9回
そんな「おでんシチュー」を5大栄養素で見ると、
・たんぱく質…ちくわ、さつま揚げ、スキムミルク
・炭水化物…じゃがいも
・脂質…ちくわ、さつま揚げ
・ビタミン(A&C)…大根、にんじん、じゃがいも、パセリ
・ミネラル(カルシウム)…スキムミルク
栄養素、一通り揃ってます。ちなみにじゃがいものビタミンCは熱に強いのが特徴。切り口からビタミンを逃さないために、丸ごとゆでるorレンチンがおすすめですよ。
練り物の100g中の脂質は、さつま揚げが3g、焼きちくわが1.7g*。膵臓のために脂質を控えめの母の食事は、脂質「1食10g」が目安。なので、おでんの練り物は2つか3つ、シチューだと1皿に1個くらいなので、らくらくクリアですね。
*参照「食品成分表2024(八訂)」/女子栄養大学出版部。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。58才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
ホームページ:uenobu.com アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja