高齢者がお餅を食べるときに確認すべきこと「去年より嚥下機能が低下している可能性を考えて」4つの対策を紹介【管理栄養士解説】
お正月に食べるお餅は、高齢者や介護中の人にとって注意すべき食材だ。政府広報オンライン※によると、お餅を喉に詰まらせる窒息事故は、お正月の三が日に最も多く、とくに高齢者の餅による年間の死亡事故の半数は、1月に集中している。お餅を食べるときの注意ポイントについて、管理栄養士の川鍋仁美さんに解説いただいた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
お餅を食べるときの注意ポイント
お正月はお餅を食べる機会が多くなります。お正月らしさを感じられる季節の食べ物ですから高齢者は特に好んで食べるかたが多いのではないでしょうか。
一方で高齢者のお餅による年間の死亡事故の半数は、お正月の時期に集中しています。お餅は健康な人でも窒息事故を起こすリスクが高いものなので、噛む力・飲み込む力が弱ってきている高齢者はさらに注意が必要です。
そこで大切な家族とお餅を食べるときに、どのようなことに注意したらよいのかをご紹介します。
※政府広報オンライン「餅による窒息に要注意!喉に詰まったときの応急手当は?」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202212/2.html#thirdSection
この前は大丈夫だったと過信しないことが大切
まだ本格的な介護食を食べるほどではないと感じている高齢者のかたでも、歳を重ねると嚥下機能は低下傾向にあることを自覚しておきましょう。
「『去年は』、『この前食べたときは』、大丈夫だったから」と過信せずに常に「今」の状態を意識しましょう。
特にお正月は施設から一時帰宅したり遠方から家族が来たりする場合も多く、久しぶりに会う家族が高齢者のかむ力・飲み込む力がどれくらいなのかを把握できていない状態で一緒に食事をする場合もあるためより注意が必要です。
嚥下機能は変化する
高齢になると次のような口腔・嚥下状態の変化が表れます。
・歯の機能が衰えるため、噛む力が弱くなる。
・飲み込む力が弱くなる。
・唾液量が減少する。
・万が一詰まったときに押し返す力(咳などによって)が弱くなる。
健康な人でもヒヤッとすることもあるお餅ですから、高齢者には不向きです。窒息・誤嚥のリスクが高いものだということを改めて意識してほしいと思います。
温度が低下するとくっつきやすくなる
お餅は温度が下がるほどかたさが増す性質があります。
例えばお雑煮を作って、50℃前後のあつあつの器の中の状態から口に入れた直後くらいまでは、お餅はやわらかい状態です。
しかし、外気温や口に入れた体温の影響でお餅の温度が40℃くらいまで低下すると、硬くなると同時にくっつきやすさも増してしまいます。
介護食を食べているかたはお餅をあつあつの状態で食べることは難しいので、この温度変化によってくっつきやすい状態のお餅を口にしていることも知っていてほしいです。