専門医が教える「早死にする血液」3つのタイプとまだ間に合う「長生きする血液」に変える対策|チェックリスト付き
全身に酸素や栄養を届け、不要な老廃物を処理する──それが「血液」の役割だ。一方で、凝固して血管内で詰まることで脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすリスク因子にもなるという。そこで、専門医に「長生き血液」「早死に血液」の最新常識を取材した。
教えてくれた人
東丸貴信さん/東邦大学名誉教授・平成横浜病院総合健診センター長・循環器内科医
夏場は脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高まる
間もなく全国的に夏本番を迎える。今年は統計史上125年で最も暑かった昨夏を上回る猛暑が予想され、熱中症への警戒感が高まっている。
痙攣やめまい、最悪の場合は死に至る恐れのある熱中症の陰であまり意識されないが、夏場は脳梗塞や心筋梗塞などのリスクも高まる。原因となるのが「血液」だ。
体内をくまなくめぐる血液量は体重の約13分の1を占める。体重70kgの男性なら血液量は約5.4Lだ。
その成分は、酸素を運ぶ「赤血球」、細菌やウイルスなどの異物を処理する「白血球」、血を固める「血小板」、主に水分からなる「血漿」などに分けられる。こうした血液の状態を見ることで、自らの健康状態を推し量ることができる。
寿命を縮める血液のタイプを医学的に解説
東邦大学名誉教授で、平成横浜病院総合健診センター長の東丸貴信医師(循環器内科)は、「寿命を縮める血液のタイプを医学的に解説すると、大きく3つのタイプに分けられる」と指摘する。
1:「こってり血液」
夏本番の時期に要注意なのが、血液が濃くなる「こってり血液」のタイプだ。東丸医師が語る。
「血液のもとになる造血幹細胞の病気により赤血球が増えたり、血液量が減ることで赤血球の量が相対的に多くなった状態を指します。前者は稀少疾患ですが、後者の血液量の減少は水分不足や下痢などによる脱水症状で誰にでも起こり得ます」
高温多湿で脱水に陥りやすい日本の夏は、水分不足で血液が濃くなるリスクがあるのだ。
「血液が濃くなった結果、その“粘度”が上がり、血管内を流れにくくなります。濃い血液の人には、高血圧や肥満などの生活習慣病を併発しているケースが多い。生活習慣病を放置すると動脈硬化が進み、血液粘度が上がります。その結果、血栓が作られやすくなり、脳や心臓の血管で詰まることで、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしやすくなります」
脱水で血液粘度が高まらないよう、水分補給の仕方に注意したい。
『80歳の壁を超える 血流がみるみるよくなる体の治し方大全』の著者で、愛媛大学大学院抗加齢医学講座教授の伊賀瀬道也医師(循環器内科)が指摘する。
「脱水状態による『こってり血液』にならないために、私はよく、出かける前、運動する前、入浴前などの『前々の水分補給』が大切だとアドバイスしています。高齢者で腎機能が低下し、低ナトリウム血症のリスクが高い方には、塩分を含んだ経口補水液の摂取を勧めることもあります」
2:「ギドギド血液」
東丸医師が挙げる早死に血液の2つ目のタイプは、脂っぽくなる「ギトギト血液」だ。
「脂質や糖質の過剰摂取が原因となるケースです。とくに中性脂肪が体内に蓄積されると脂肪細胞が増加し、その細胞から血栓を溶かさないようにする物質が分泌されます。この物質によって血栓の成長が促進され、結果的に脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まることになります」(東丸医師)
中性脂肪による「ギトギト血液」を示すうえで分かりやすい事例がある。
血液検査や献血で、採取した血液が採血管に入れられる様子を見たことがある人は多いだろう。そのまま採血管をしばらく放置すると、血液中の重い成分である赤血球や白血球、血小板などは沈殿し、上部には主に水分などからなる「血清」が浮いていく。
この血清は、健康な血液であれば透明のリンゴジュースのような色になるが、中性脂肪が多く含まれる血液の場合だと、乳酸菌飲料のような乳白色になる──。
伊賀瀬医師が解説する。
「血清が乳白色になる状態を『乳糜(にゅうび)』といい、直前の食事の影響でも白濁しますが、食後に半日以上経って採血しても乳糜が認められる場合、脂肪の分解・代謝が機能していないか、脂質異常症の可能性があります。中性脂肪が1000mg/dL以上の家族性の高中性脂肪血症の方などにも認められる状態です」
また、糖質の過剰摂取は赤血球を硬くさせてしまうという。東丸医師が説明する。
「糖質の摂りすぎで血糖値が高くなると赤血球の不良化を招きます。赤血球は通常、柔軟性を持っているため、細い血管でも自在に形を変えながら通りますが、糖質過多だと赤血球が柔軟性を失うことで血管が詰まりやすくなります」
3:「固まりやすい血液」
東丸医師が最後に挙げるのは「固まりやすい血液」だ。血小板同士が固まりやすくなる血液のことで、その主な要因はストレスだという。
「血小板は出血した際に結合することで止血の働きを担いますが、精神的ストレスなどで交感神経が刺激されると、血小板を活性化させるホルモンが増え、血液が固まることで血栓ができやすくなります。ストレスの多い現代社会では、こうした理由から血液がドロドロになっている人はかつてより増えていると考えられています」
これらの3タイプはいずれも高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と密接に関連する。
伊賀瀬医師、東丸医師への取材をもとに、本誌は血液の健康状態を見極めるチェックリストを作成した。
チェック項目には血液検査の数値のほか、生活習慣や食生活、精神状態や性格に関する項目が含まれる。
「どの質問項目も血液の健康状態に影響するため、当てはまる数が多いほど血液のめぐりが悪くなっている可能性が高いと言えます」(伊賀瀬医師)
◆血液の健康状態を見極めるチェックリスト
■多く当てはまるほど要注意!
「早死に血液」を見つけるチェックリスト
●食習慣
□外食が多く、あまり自炊しない
□脂っこい料理、こってりした料理が好き
□フルーツジュースをよく飲む
□野菜や青魚はほぼ食べない
□お酒を毎日のように飲む
食べ物の栄養や水分は小腸から血液に取り入れられ、全身に流れていく。
●生活習慣
□最近太った、以前から太ってる
□水分補給をこまめにしていない
□喫煙習慣がある
血液や血管の健康は生活習慣と密接に関わる。
●ストレス
□責任感が人一倍強いほうだ
□イライラすることが多い、増えた
ストレスで血小板が活性化し、固まりやすくなる場合がある。
●健康診断
□中性脂肪が300mg/dL 以上
□LDL コレステロール値が140mg/dL 以上
□上の血圧が140mmHg 以上
□血液を表わすHbA1cが6%以上
健康診断や人間ドックの数値から血液の状態を推測できる。
「長生き血液」に変えるための改善法とは
セルフチェックで多くの項目が当てはまる「早死に血液」の人は、「長生き血液」に変えるための改善法を実践したい。
「トマトジュース」を積極的に摂る
食生活の見直しに際し、東丸医師が積極的に摂りたいと挙げるのは「トマトジュース」だ。
「完熟トマトを濃縮したトマトジュースを1日1缶飲めば、強い抗酸化作用があるリコピンを効率的に摂取でき、ストレスが関係する『血液ドロドロ』を改善できる可能性は十分あります」
「イワシの水煮缶」など青魚からEPAを摂取する
伊賀瀬医師は、青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)の摂取を勧める。
「北極圏に住むイヌイットは、野菜をほとんど摂取しないのに心臓病による死亡率が低いことが分かりました。その理由は、主食のアザラシや魚に含まれるEPAだとされます。EPAには血液の粘度を低くする作用や、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる作用、赤血球の機能改善など多様な働きがあることが解明されています。青魚を調理するのは大変ですが、『イワシの水煮缶』でも十分にEPAを摂取できます」
「フルーツ」、特に果汁100%ジュースは摂りすぎに注意
一方、摂りすぎを避けたいのは「フルーツ」だ。
「果物に含まれる果糖は、ほかの糖よりも小腸で吸収される速度が速いため、肝臓で中性脂肪に変わりやすい。果糖そのものが体に悪いわけではないので、例えば小さいリンゴ1個を1日かけて摂る分には問題ないが、フルーツの食べすぎ、とくに果糖を多く含む果汁100%ジュースの飲みすぎは避けてください」(同前)
長生き血液をつくるには食事だけでなく運動も有効だが、その「強度」が重要になるという。
リラックスしながら有酸素運動をする
「ストレスなどで交感神経が優位になると、血液を固まりやすくするホルモンが増え、血液の粘度が上がります。リラックスしながら有酸素運動をすることで、血糖値や中性脂肪、血圧などを下げることができます。
その際、筋肉に一気に負荷をかける運動はかえって血管や心臓に負担をかけてしまう。目安は“息は弾むが、会話できる程度”の運動強度です。例えばウォーキングなら1日4000歩でもいいので、毎日継続することが大切です」(同前)
そうした生活習慣の改善に半年以上の時間をかけて取り組めば、「長生き血液」へと変えていくことができるという。
サラサラすぎるのも問題がある
ただし、血液が「サラサラすぎる」のも問題がある。伊賀瀬医師が指摘する。
「血液の粘度が低すぎると脳出血が増えるとされています。サラサラにせよギトギトにせよ、極端に振れるのは良くない状態なので、血中成分は適正値を目指すことが重要です」
健康長寿には血液に加えて血管が及ぼす影響も大きい。生活習慣や食事を見直すことで、血液や血管の健康を維持したい。
※週刊ポスト2024年7月19・26日号
●血液は「サラサラ」より「たっぷり」が鍵!健康には血液の量が大事な理由を専門家が解説