血液は「サラサラ」より「たっぷり」が鍵!健康には血液の量が大事な理由を専門家が解説
最近何だかだるくて、意味もなくイライラする。そういえば若い頃から生理痛もひどかったし、いまの時期はとにかく寒くて仕方がない…。その悩みや不調は、血が足りていないからかもしれません。
「血液サラサラ」より「血液たっぷり」
ウイルスのまん延と同じくらい、もしくはそれ以上に恐ろしいのは、寒さによって血管が収縮し、心筋梗塞や脳卒中などの血管疾患を発症すること。実際、例年1月から2月にかけては一年のうち、急性心筋梗塞で命を落とす人の数が最も増える時期だ。血管病を遠ざけるためにサプリメントや薬を駆使して“血液サラサラ”を目指す人も少なくないだろう。
しかし、『血流がすべて解決する』などの著書がある漢方薬剤師の堀江昭佳さんは、目指すべきは「血液サラサラ」ではなく「血流たっぷり」だと話す。
「いくら血流をよくしようとしても、血の量そのものが足りていなければ改善は見込めません。特に最近は、長期化するコロナ禍での運動不足や食生活の乱れ、閉塞感によるストレスなどにより、血が足りていない人が増えている印象です」(堀江さん)
血液量はバイタリティ―を示す
血糖値やコレステロールといった“質”だけでなく、血液の量が大事なのはなぜなのか。信州大学大学院特任教授でスポーツ医科学が専門の能勢博さんが解説する。
「血液量はその人のバイタリティーを表します。血液が多ければそれだけ体がみずみずしく、生命力にあふれているということ。実際に活動的で、歩くスピードも速くて、いかにも健康そうな見た目の人は血液量が多いのです。血液量が多ければ、運動をしたときに充分な酸素を筋肉に届けられるし、病気に対する抵抗力を上げることもできます」
反対に、血液量が少なければあらゆる病気や不調が体に表れる。能勢さんが続ける。
「細胞にはミトコンドリアという小器官があって、ブドウ糖や脂肪酸を燃焼させて、細胞が生きるためのエネルギーを産生しています。したがって、血液によって細胞に酸素が供給できればきつい運動もできるのです。反対に、慢性的に酸素が不足したり、ミトコンドリアの機能が低下すると、日常生活でさえ“不完全燃焼”を起こして体に慢性炎症を引き起こします。これは糖尿病、高血圧などの生活習慣病、認知症、がんの原因になるだけでなく、新型コロナなどに感染したときの症状を悪化させます」(能勢さん)
堀江さんは、女性特有の不調も、血が足りないことで起こりやすくなると話す。
「漢方の世界では『女性の体は血が基本』とされており、メタボや生活習慣病で本当に血がドロドロになっている人は別として、女性は血が足りないことで血流が悪くなっているケースがほとんどです。
血流が滞ればむくみや冷え、倦怠感といった不調が引き起こされ、悪化すると生理不順や子宮内膜症、更年期障害など婦人科系の病気にかかりやすくなります」
血液不足は全身を蝕む
■認知症…脳に血液が行き届かなくなるとアルツハイマー型認知症の原因物質「アミロイドβ」が蓄積する。
■うつ病…鉄不足は幸せホルモンの「セロトニン」の生成を阻害する。貧血を治療することでうつ症状が治まったケースも。
■胃腸機能の低下…血液量の少ない人は胃腸機能が弱っている場合が多い。
■婦人科系の病気…女性は血が足りないことで血流が滞っている場合が多く、生理不順や子宮筋腫、更年期障害といった婦人科系の病気につながる。
■むくみ…血が足りず、血流が滞ることでむくみも生じる。
血が足りないとうつ状態になる
血液不足が引き起こすのは体の不調だけではない。神経内科医の内野勝行さんは、脳の血液量が減ると認知症リスクが上がると指摘する。
「脳に行き届く血液の量が少なければ血流が停滞し、アルツハイマー型認知症の原因の1つである脳内物質の『アミロイドβ』が体外に排出されにくくなる。加えて血中には酸素も含まれるため、血液の減少は酸欠状態をも招きます」
メンタル面との相関関係もある。
「過去にぼくがカウンセリングした女性患者の中には、貧血を改善することでうつ症状が治まったという人が少なくありません。その理由は、通称“幸せホルモン”と呼ばれる『セロトニン』は鉄を利用して作られることにあります。実際に、精神科でうつ病と診断されて休職し、過食で20㎏太った30代の女性がいたのですが、漢方薬を使い、鉄をしっかり摂って血を増やすことで次第に笑顔が戻り、ダイエットにも成功。うつの症状も改善し、職場復帰を果たすことができました」(堀江さん)
教えてくれた人
堀江昭佳さん/漢方薬剤師。著書に『血流がすべて解決する』など。
能勢博さん/信州大学大学院特任教授でスポーツ医科学が専門。
※女性セブン2023年2月9日号
https://josei7.com/
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