兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第253回 兄が救急搬送されました!】
症状が進む兄のサポートも、もう限界…それでも、日々サポートを続けている妹のツガエマナミコさんに突然、ショートステイ先から一本の電話が!なんと兄が緊急搬送されたというのです。いったい何が起きたいのでしょう。
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トイレで倒れた兄
ここのところ、お仕事で取材先のドタキャンがあり、すべてが前倒しになってスッタモンダしておりました。兄の介護然り、世の中は思ったようには行きません。
イライラして大好きなチョコレートを毎日1箱(約200円)食べてしまっております。太るとわかっていますし、実際太ってまいりましたし、止めたいと思っているのですが、スーパーへ行くと買い込んでしまいなかなかやめられません。イライラを言い訳にして自分を甘やかしているだけでございます。タバコやギャンブルがなかなかやめられない人もきっとこんな状況なのでございましょう。自分の意思でブレーキが掛けられるうちにチョコ断ちしたいと考えているツガエでございます。
と、呑気なことを言っておりましたら、兄が救急搬送されました!
それは過去最長7泊8日のショートステイの最終日、「今日の14時半には帰ってきちゃうのだな」と思っていた朝7時半のことでございました。
ショートステイ施設からお電話があり、「朝早くにすみません。お兄さんが先ほどトイレで痙攣をおこして転倒されて、意識朦朧で今救急搬送されるところなんです」と言われました。
ピーポーピーポーがうっすら聞こえる中「今から〇〇病院に来られますか?」と言われ、最寄り駅だけ聞いて朝食も取らず家を飛び出しました。
昨年めまいで救急搬送された経験(第228回)のあるわたくしは、何はなくとも兄の保険証と現金を多めに持って行くことを忘れませんでした。キャッシュカードがあればいいのでしょうが、わたくし暗証番号忘れがちなもので…。あとはお薬手帳。これはこういうケースでは絶対持って行った方がいいアイテムでございます。
お電話を受けてから1時間ほどで病院の救急センターに到着すると、待合室にショートステイの施設の方がいらっしゃいました。救急外来の受付に行き、兄の保険証を出し、施設の方が書いてくださった名前や住所を確認し、サインをしてから再び待合室に戻ると、施設の方が兄の様子をお話ししてくださいました。
トイレ誘導をしたところ突然痙攣。痙攣は1分間ほど続いたそう。白目を剥いていたこと。転倒した際に口の中を切ったようだということ。その後は朦朧としていたが、救急車で大暴れの抵抗をしたとのことでございました。
しばらくして看護師さんがいらして「ちょっとお兄さんの様子をみていただけますか?」と処置室に連れていかれ、病院の寝巻を着てストレッチャーの上にいる兄と対面いたしました。
「おにいちゃん」と声を掛けるとニコッとして「なに、どうしたの?」と、いつも通りのトンチンカンにひと安心いたしました。でもかなり呼吸が荒く、落ち着かない様子で頭を押さえたり、自分の手を眺めたりしておりました。自分の置かれた状況はもちろんまったくわかっておりません。
「受け答えや反応はいつもとあまり変わりませんが、落ち着きがないですし、こんな呼吸の荒さは初めてです」とお話しすると「念のため頭のCTとMRIを撮りますので、少しお時間かかりますが、待合室でお待ちください」と言われました。認知症でてんかん(痙攣)の症状が出ることはありますが、脳腫瘍などの恐れもあるので、その可能性をつぶすための画像検査だそうでございます。
時刻は朝9時。このタイミングでショートステイ施設の方はお帰りになり、その後、長い待ち時間を一人で過ごしました。文庫本のひとつでも持って来ればよかったと思いつつ、事の次第をケアマネさまにショートメールいたしました。
結論から申し上げると、脳に大きな問題はなかったのでご安心ください。でも続きがございますので、それはまた次回にいたしましょう。本当に世の中は思ったようにならないものですね~。しばらくチョコ断ちもできそうにありません。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ