兄がボケました~認知症と介護と老後と「第36回 変わる負担限度額」
50代で若年性認知症を発症した兄のサポートに全力投球してきたライターのツガエマナミコさんでしたが、約1年前に兄が特別養護老人ホームに入所したことで、ようやく自分自身の時間を持つ余裕が生まれました。最近は、水泳にすっかりはまっているマナミコさんが近況を綴ります。
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プールに定期的に通っています
暑中お見舞いと、残暑お見舞いの狭間の頃となりました。 お元気でお過ごしでしょうか。
冬はとうとうエアコンを使わずに過ごしたツガエでございますが、夏の暑さには弱く、6月から湯水のようにエアコンの冷気を浴びております。
冬、どのくらい電気代が減ったのだろうかと一年前の同じ時期との差をざっと計算してみたところ、ひと冬(11月~翌4月)で約1万6500円減でございました! 厚着をしたり、薬缶で蒸気を補うことで風邪を引くこともなく冬を越し、これだけのお金を捻出できたことは我ながらあっぱれ。その分、過酷な夏は遠慮なくエアコンに頼る所存でございます。
プールに通うようになって(と言ってもまだ4回ですが)、体が軽くなったような気がしております。完全な思い込みとは思いますが、こういう気分を大事にしたいものでございます。不思議と間食への欲望も縮小傾向で、「これは痩せるのでは?」と期待が高まる夏。あくまでも期待です(笑い)。
厚生労働省調べでは、1キログラムの体脂肪を減らすには7000キロカロリーを消費しなければならないそうでございます。1キロ痩せるためにどれだけ泳がなければならないのでございましょう?
一般的な1時間の平泳ぎの消費カロリーが平均400キロカロリーとして、7000÷400=17.5時間。わたくしは休憩が多いので30回ぐらいプールに通わないと1キログラムは痩せられないと思われます。週1で30回通うには半年以上かかる、と考えると目に見えて痩せるのは遠い未来のお話。しかも泳いだ分の400キロカロリーをお菓子などで摂取するのはいとも簡単でございます。いっそ痩せることに憧れるのはやめましょう。
「プールに定期的に通っている自分」に酔いしれるだけでもモチベーションは十分。適度な運動が必要なお年頃でもあるので、そういう意味でも気長に続けたく存じます。
それにしても自己流平泳ぎの改善は難しく、「平泳ぎの泳ぎ方動画」を再現しようとして、手足が混乱し、息継ぎのタイミングに焦る始末。早く動画のような、のびやかでゆったり且つ推進力のある平泳ぎをマスターしたものでございます。
さて、今週の兄は少しご機嫌ナナメでございました。わたくしが到着したときは、兄の車イスを囲むように2人のスタッフさまがいて、和やかに兄に話しかけていました。でも「今日はご機嫌が良かったり、良くなかったりなんです」とおっしゃり、さっきまでやや難儀していたご様子でした。大きな声を出して周囲のみなさまを怖がらせてしまう日もあるようで、相変わらずご迷惑をおかけしているのだと、身が縮む思いでございました。
この日は、部屋に行っても無駄に話しかけないようにして、歌を歌いながらただ肩や背中をさすったり、手や膝をさすったりして過ごしました。おおかた穏やかで、わたくしに「大丈夫?」と言ってくれもしましたが、突然「違うって言ってるでしょう!」と強めの口調になることもあり、不安定さが垣間見えました。無力のわたくしは「よろしくお願いします」とスタッフさまに兄を託して帰ってきた次第でございます。
そういえば先日、兄の「介護保険負担限度額認定証」が更新され、「第3段階(1)」という通知が届きました。5月頃に更新のために兄の通帳などをコピーして送った結果でございます。「介護保険負担限度額」は、介護を受ける人の収入(年金)や預金額により決まり、兄はこれまで「第2段階」でございました。「第1段階」は生活保護を受けている方。第2段階は、その次に所得が少ない人が対象です。なので兄が入所している特別養護老人ホームではこの約1年、医療費も含め1か月10万円前後とかなりお安く済んでおりました。ところが第3段階(1)となると居住費やら食費やらの単価がグッと上がります。たとえば1日の居住費は490円から1370円にあがり、それだけでも月2万6400円支払いが増えることになります。
昨年9月から年金のほかに「介護サービス費の支給」という名目で兄の通帳に公的資金が毎月振り込まれていたので、第2段階の収入範囲を超えてしまったのかもしれません。お金が行ったり来たりして、ありがたいやらそうでないやら……。
世帯分離をしておりますのでわたくしへの影響は皆無なのに、なぜかざわつく段階変更。物価高騰でもありますし、次の請求書は13万円なのか14万円なのか? とっても気になる妹でございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ