介護経験者が解決のヒントを語る!介護が始まったときに直面する「仕事」と「お金」の悩み
ある日突然、親の介護が必要となったとき、問題になるのがお金、時間、そして介護する人の体力だ。ハードな介護で疲弊しないために、経験者たちが行ったこととは――。遠距離、多拠点、何人もの介護が始まったときに直面する悩みと解決するヒントを紹介する。
教えてくれた人
工藤広伸さん/介護作家。自身の介護経験を綴ったブログ『40歳からの遠距離介護』が話題に。著書に『親が認知症!? 離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)ほか。
神戸貴子さん/看護師、ケアマネジャー。N.K.Cナーシングコアコーポレーション合同会社、遠距離介護支援協会代表。介護、育児をサポートするサービス「わたしの看護師さん」を運営している。
介護経験者に聞く!介護が始まったときに直面する悩みと解決法2選
離れて暮らす親、夫の親、身寄りのないきょうだい――。突然の介護は同時多発的に始まるため、お金、時間、そして介護する人の体力などいろんな問題が発生しやすい。実際に介護を経験した先輩はどのように接し、どのように乗り越えていったのか。実話にもとづく悩みと解決法を聞いた。
【悩み1】母と義父が一度に倒れ介護が必要に。会社をどうするか悩みます
親などの介護が始まったときに直面するのが、介護をする人が、自分の仕事をどうするかということだ。
介護作家の工藤広伸さん(東京都在住)は、40才のときに介護で仕事を辞めたという。
「私の場合はいまから12年前、祖母が認知症の上、末期がんを併発し、その介護をしていた母が認知症になり、ダブル介護になったので、介護離職しました。半年ほどで祖母は亡くなったのですが、今度は父が末期がんになり、再びダブル介護生活を続けることになりました」(工藤さん・以下同)
離職を決めたとき、不安だったのは、収入源がなくなることだった。
「初めての介護で、何にどうお金がかかるかわからないのも大きかったですね。幸い私は、経験したことをブログに記すことでフリーランスの物書きとして仕事ができるようになったのでよかったのですが、介護離職してしまってから、収入源を確保できず困ってしまう人は多いと思います。会社を辞めず、働きながら介護をする方法はあるので、安易に退職願を出さないでほしいのです」
<解決策>働きながらの介護の場合、介護休業や介護休暇が活用できる
あなたが会社員なら介護が理由で会社を休む場合には、育児・介護休業法で定められた「介護休業・介護休暇」を取得することができる。
「介護休業は、2週間以上にわたり介護が必要になった家族のために、施設を探したり介護体制を整えるときに取得できる制度です。一方、介護休暇は急に介護が必要になったときのための制度。年間を通して5日間の休みが取得できます。自営業やフリーランスは現在対象外ですが、フリーランス保護新法が今年の秋頃に施行されると、契約期間が半年以上の場合は適用されるという報道があります」
【悩み2】介護でかかるおむつなどの消耗品代…家計への負担が大きくてつらいです
神戸貴子さん(49才)は、20代の頃から近くに住む夫のおじとおば、40代初めには福岡の父を、現在は、東京で暮らす夫のおばの介護をしているという。
「介護ではとにかくお金がかかります。特に介護する人を複数抱えている場合、人数分だけ費用が必要な上、移動の交通費だけでも莫大な金額になります。介護する人はただでさえ、肉体的な負担が大きいのに、自分のお金が目減りしていくことで精神的にも大きなダメージを受けることに。特に60代以上の人の場合、“いつ自分が介護される側になるかわからない”という不安もあるので切実です。そんな不安やストレスを抱え、うつを発症する人も多いんです」(神戸さん・以下同)
<解決策>介護費用は、介護を受ける人のお金を活用
「介護する人は、金銭的な負担を負わないように工夫することが重要です」と神戸さんは言う。
「介護を始める人に『介護をされる人の預貯金や収入で、やりくりしてください』とアドバイスをしているのですが、介護保険は介護される人の所得に応じて負担額が決まります。所得が低い人は、負担額も少なくて済むので、介護する人が、介護される人の家などに通う交通費も介護される人の所得でまかなうことが望ましいですね」
ここで忘れてはならないのは、紙おむつなどの消耗品を購入する際は、必ず領収書をとっておくことだ。
「介護関連の消耗品でかかった費用は、親の代わりに確定申告をするときに申請すると医療控除として認められ、親の所得から控除されます」
親が認知症になり、まとまったお金が引き出せなくなった場合は、財産を管理する成年後見制度の検討を。
取材・文/廉屋友美乃 デザイン/功野真亜知 イラスト/田中斉
※女性セブン2024年4月25日号
https://josei7.com/
●経済アナリスト森永卓郎さん「親の介護に年間500万円」介護離職のデメリットを考察