小学館IDについて

小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼント にお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
閉じる ×
連載

兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第218回 我が家と介護施設】

 若年性認知症を患う兄が3泊4日で特養のショートステイを利用することが決まりました。早速、施設に契約、見学に行った妹のツガエマナミコさんは、施設の人の説明に、少し微妙な気持ちになります。本格的な施設入居に向けて動き始めたものの、兄の生活の場は、我が家より施設の方が快適?うーむ、そう簡単には気持ちは割り切れないのです。

 * * *

ショートステイ先からの心強い言葉

「我々プロが対応しますし、おうちで過ごすよりも快適に過ごせると思いますよ」  

 これは、兄が今度お世話になるショートステイの契約を済ませて、館内を案内していただくなかで介護主任さまがおっしゃったお言葉です。 はじめは“おうちで過ごすよりも”というフレーズにひっかかりがあったのですが、家に帰ってきて兄と向き合うと、会話をする気にならない自分がおりました。「偉そうなこと言ったって兄に全然優しくできないじゃないか!」と自分の態度を再自覚。まさに“おうちで過ごすよりも”はおっしゃる通りのお言葉でした。 施設だったらもっと話しかけてもらえるのでしょうし、我が家というものの記憶があまりない兄にとっては、仏頂面の妹が愚痴ばかり言っている場所より、知らない人でも笑顔で優しくかまってもらえる場所の方がきっと幸せなのでございます。

 そして、話のついでに入居を考えていることを申し上げると「今回のショートステイの後、ロングのショートステイ(3か月まで可能)をしていただき、そのまま入居という流れがご本人にとっても我々にとっても一番いいと思います」というお話がありました。

 現在「空き」があるかどうかまでは勇気がなくて聞けませんでしたが、何百人待ちという感じでもないような印象を受けました。申し込み方法など、今度ケアマネさまに伺ってみようと思います。  

 さて、今回のショートステイに向けて、準備をしなければなりません。以前利用したショートステイでは、1泊だったこともあり、パジャマは特に必要なく、足元はスリッパでOKでしたが、今回はパジャマと室内履きが必須のようでございます。3泊分+予備の着替えまで入れると、荷物はなかなかの分量。最近、毎朝お便さま攻撃に見舞われるので、パジャマは3着用意しないとダメかもしれないと思っております。そうなると鞄も大きなものが必要になりそう。ああ、お買い物に行かなければ……。

 今朝も、お便さまを踏んづけた靴下で家の中を歩き回られ、「もういやだー!」となったばかりでございます。ショートステイでも同様のことが起こると思われ、とても心配でございます。個室にはおトイレがありませんでした。その施設ではスタッフが声をかけて連れていく方式だそうです。自分の部屋のポリ容器に毎朝お尿さまをしていることや、部屋のあちこちでやってしまう可能性があることをお伝えしたのですが、「それをどうすればいいか、どう工夫すればいいかを考えるのが我々の仕事ですから大丈夫です」と心強いお言葉で受け止めてくださいました。実際の兄の排泄攻撃で「手に負えないわ」と思われないことを祈るばかりでございます。

 そんなこととは全く関係なく、このたび、2か月ほど前から取り組んでまいりました「円周率小数点以下100桁覚えようチャレンジ」がついに最終回を迎えました。 

 還暦オバチャンの挑戦でしたが、おかげさまで目標達成いたしました。

3.1415926535897932384626433832795028841971693993751058209749445923078164062862089986280348253421170679

 こう並べてみると100桁など少なく見えます。2か月もかければこのくらい覚えられて当然かもしれません。でも自分としては途方もない挑戦でございました。せっかく覚えたのだから70歳になっても100桁言える自分でありたいもの。これからもお洗濯ものを干す時間や、原稿書きの合間の気分転換にぶつぶつ唱えたいと思っております。

 円周率は今や100兆桁までコンピューターによって計算されていて、さらに記録を伸ばそうと世界中が競っているそうでございます。たった100桁でもその一端だと思うとロマンを感じずにいられないツガエでございます。

◀前の話を読む 次の話を読む

この連載の一覧へ!

文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。

イラスト/なとみみわ

コメント

ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

シリーズ

最新介護ニュース
最新介護ニュース
介護にまつわる最新ストレートニュースをピックアップしてご紹介。国や自治体が制定、検討中の介護に関する制度や施策の最新情報はこちらでチェックできます!
介護中のニオイ悩み 対処法・解決法
介護中のニオイ悩み 対処法・解決法
介護の困りごとの一つに“ニオイ”があります。デリケートなことだからこそ、ちゃんと向き合い、軽減したいものです。ニオイに関するアンケート調査や、専門家による解決法、対処法をご紹介します。
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
「聞こえ」を考える
「聞こえ」を考える
聞こえにくいかも…年だからとあきらめないで!なぜ聞こえにくくなるのか?聞こえの悩みを解決する方法は?専門家が教えてくれる聞こえの仕組みや最新グッズを紹介します
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
切実な悩み「排泄」 ケア法、最新の役立ちグッズ、サービスをご紹介
数々ある介護のお悩み。中でも「排泄」にまつわることは、デリケートなことなだけに、ケアする人も、ケアを受ける人も、その悩みが深いでしょう。 ケアのヒントを専門家に取材しました。また、排泄ケアに役立つ最新グッズをご紹介します!
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
「介護食」の最新情報、市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。新商品や便利グッズ情報、介護食の作り方を解説する動画も。
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
「芸能人・著名人」にまつわる介護の話
話題のタレントなどの芸能人や著名人にまつわる介護や親の看取りなどの話題。介護の仕事をするタレントインタビューなど、旬の話題をピックアップ。