兄がボケました~認知症と介護と老後と「第23回 兄の施設でコロナ陽性者」
長引く咳など風邪の症状に苦しんだツガエマナミコさん。認知症の兄が特別養護老人ホームへ入所して以来、週1ペースで続けていた面会も休まざるをえませんでした。ようやく体調が回復したのですが、今度は施設でコロナ感染者が出たという知らせが届き・・・。
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2週間ぶりに面会に行ったらまた…
「この前、浴槽の淵に頭を乗せてぐったりしている母親を見つけて慌てた」という話をしていたのは、90歳越えのご両親と3人暮らしをしている友人でございます。
ご両親はまだ認知症とは言えないけれど、年齢相応にはボケており、いろいろ腹が立つことが多いようでございます。「仰向けで寝ていたからよかったけど、顔がお湯に沈んでいでたら窒息死していたと思う」と恐怖体験を語ってくれました。介護のことを話し出すと止まらないほどストレスフルな毎日。派遣で仕事もしているし、食事も作って、たまに旅行にも連れていく親孝行な娘。でも話を聞くたびに可哀そうで、限界は近いように見えました。
良いアドバイスをしたいけれど、90歳越えの両親との今後をどう考えればいいのか、わたくしの経験では語れません。ご両親はまだ要支援と要介護1のカップル。元気と言えば元気で、デイサービスもショートステイも利用したことはなく、「たぶん嫌がるし」と諦めている段階。わたくしが「こうしてみれば?」と言ったところで実行するのは彼女なので、「他人は簡単にそういうけど」とストレスが増えるのはしのびない。結局「なんでもケアマネに相談した方がいいよ」としかわたくしには言えませんでした。
そんなわたくしは、2週間ぶりに兄の面会に行ってまいりました。
わたくしを苦しめた咳はすっかり治りましたが、念のためにマスク2枚重ねで手指消毒多めで、いつもより短時間で帰ってまいりました。往復2時間かけて滞在20分。それでも会えたことがうれしゅうございました。
しかし、新聞などによると世の中は風邪に似た症状で医療機関を訪れる人が増えている様子。コロナ感染症やインフルエンザなどの検査は陰性でも鼻水、咳、喉の痛みといったありふれた症状の中に未知の感染症の可能性があるかもしれないとのことで、指定された医療機関では、咳や鼻水といった症状でも国への報告を義務付けられたそうな。新たな感染症が発生しないことを祈るばかりでございます。
と、書いているところに、施設から電話がありまして、なんと!施設内の、兄のいるユニットでコロナ陽性者が出たとのこと。
「お兄さんは感染してないから大丈夫なのですが、同じユニットで感染者が出ましたので、しばらく面会は自粛していただきたいというご連絡です」と申し訳なさそうにおっしゃっていました。
わたくしが、病み上がりで面会した後だったのでドキッとしましたが、兄は問題ないと聞きひとまず安堵いたしました。やはりまだ終わっていないのですね、コロナ感染症。
感染された方がお部屋から出ないように対策を講じるのはもちろんのこと、ほかの入所者も個室からあまり出ないよう措置を取るとのことのことでした。
少し前に、施設の別の階のユニットでコロナ陽性者が出たときは、特にご連絡はなく、入口の看板にその旨が書かれていただけでしたが、さすがに10名しかいない同ユニット内に感染者が出たときは個別に連絡してくださるのだなぁと感心いたしました。施設スタッフの方々はさぞ難儀していることでしょう。いつも兄の隣で週刊誌を広げているおばあさまや、わたくしにいつも会釈してくださる物静かな入所者の方々がどうかご無事でありますように……。
行動自粛が解除されて久しく、コロナ感染は縮小していると感じておりましたが、思った以上にしぶといウイルスでございます。思えばワクチンを打つ人はもうほぼおりませんし、街中でマスクをしている人の数も少なくなりました。海外からの旅行客も多く、感染しやすい条件が見事に揃っております。まだまだマスクと消毒は有効なので、利用しながら用心しましょう。
とりあえず次の面会は自粛することにいたします。一日も早く面会が解禁になることを願って、本日は何か精の付くものでもいただこうと思います。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ