兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第217回 特養ショートステイを予約しました!】
ライターのツガエマナミコさんは、若年性認知症の兄と2人で暮らしています。兄のサポートが始まり7年が経ちましたが、症状が進行した兄を在宅でサポートすることに限界を感じてきたマナミコさん。いよいよ兄の施設探しに向けて、本格始動です。
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まずはショートステイから
朝、リハパンの中にお便さまがベットリだったので、浴室でシャワーをしていたら、ほどなくして兄のお股の間から追いお便さまがボトリボトリ…。シャワーのお湯に流されて散らばるお便さまを見ながら、わたくしが「あちゃ~」となったことは想像していただけるかと思います。これは介護あるある。何度やられても嫌なものでございます。
「お風呂場でよかったね」と思う反面、この浴室に素足で入り、髪も洗えば、体も顔も洗うのにと思うと決して気持ちのいいものではございません。匂いも鼻の奥に残りますし、お掃除で汗だくになりますし、当の兄はスッキリ涼しい顔をしてテレビを観ておりますし・・・。
今朝はそんなスタートでございました。
食事介助も続いております。朝はパンと果物なので一人で食べてくれますが、昼食と夕食はどうしても途中で食べるのをやめてしまう傾向がございます。急に食べ方を忘れてしまうのでしょうか。四分の一ほど食べたか食べないかでお箸を箸立てに戻してしまったり、スプーンを物陰に隠したりいたします。でもお口まで持って行くと食べるのです。「あ~ん」も積極的にいたします。途中で食べるのをやめてしまうのは、お腹がいっぱいなのではなく、脳が半分寝てしまうからかもしれないと、素人介護者は考えております。
そんな中、ケアマネさまとデイケアの介護主任さまとの月例会議がございました。
兄がデイケアでお世話になってすでに2年以上経過いたしましたが、コロナ禍だったのでずっとケアマネさまの来訪だけでした。今回初めて介護担当者を交えての介護計画会議でございました。毎回「これまでと同じでいいですね」という確認の場なのですが、今回のメインは施設入居に向けてのお話となりました。
ケアマネさまは「見た目は豪華だったり素朴だったりいろいろですけど、中身(やっていること)はどこもだいたい同じです。あとは料金が少し違うぐらいです。でも第2段階(介護負担限度額認定証)ならそんなに違いありませんよ」とおっしゃり、介護主任さまからは「利用者さんからは〇〇〇という特養をよく聞きますよ」と有力情報をいただきました。続けて「今がギリギリかもしれないですね。食事介助がフルで必要になってからだと、スタッフの手がそれだけかかってしまうので人手に余裕がないと受け入れにくいんです。今なら声掛けと一部介助ぐらいなので、今のうちがいいと思います」と背中を押していただきました。
食事介助ががっつり必要だとウエルカムされにくいなんて、なんのための施設なの?と思いますが、施設は施設で慢性的な人手不足の事情がございます。有料老人ホームならば、そんなこともないのでしょうけれども、庶民は特別養護老人ホームが拠り所でございますから、なんとか改善していただきたいものです。
早くいくつか見学しなければと思っておりましたが「まずは目ぼしいところでショートステイしてみては?」とご提案され、さっそく介護主任さまがよく聞くという特養〇〇〇でショートステイをお願いすることにいたしました。
ケアマネさまに予約をお願いすると、施設の方からお電話をいただきました。事前に施設に行って契約すれば宿泊当日の朝は施設まで付き添わなくても良いということだったので、ツガエは早々に足を運んでまいりました。
その施設は、とある駅からバスで15分ほどいった高台で、バス停から坂道を上ると、緑豊かな中にいかにも介護施設といったお姿で建っておりました。入口を入ると誰もいないダダ広いロビーがあり、閑散とした雰囲気。「こんなに広いのに誰もいないんだ」と不思議な気持ちになりました。入居者は90人、ショートステイは10人受け入れ可能の館でございます。
対応してくださったのは介護主任さまでございました。契約の手続きが終わるとショートステイの部屋を案内してくださり、にこやかなお年寄り4人がテーブルを囲んでお茶を召し上がっているところを拝見いたしました。高級感や今風のおしゃれ感はありませんが、良い意味でごく普通で落ち着く感じに好感が持て、「もうここでいいんじゃないかな」と思ってしまったくらい。というよりも、見学が面倒になってきただけでございますが……。でも希望すれば入れるというわけはなく、「この人大変だわぁ」と思われたら、空きがあってもやんわり不合格になるかもしれません。
兎にも角にも3週間後、兄はここに3泊いたします。昨年秋の1泊2日以来、2度目のショートステイとなります。愛想よく問題なく3泊4日を過ごしてほしいと祈るばかり。さて、どうなることやら。こうご期待でございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現64才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ