「爪水虫」の完全治癒に期待 20年ぶりに新内服薬が登場
爪白癬(爪水虫)の患者は全国で約1460万人と推計されている。足水虫は40〜50歳代が罹患率のピークだが、爪水虫は加齢とともに患者が増える。感染すると足の爪が白濁し、肥厚するなどの症状が出るが、靴に当たり痛みが出たり、他の足趾を傷つけ、歩行に支障が出ることもある。専用の内服薬と外用薬があり、症状や年齢、合併症などを考慮することで完全治癒が期待できる。
爪水虫は重症になると歩行に支障をきたすことも
爪白癬は白癬菌というカビが、爪の主成分であるケラチンタンパクを分解して増殖し、5種の病型がある。一番多いのが、遠位側縁型という足の爪の先端や横から菌が入り込み白濁し、爪が肥厚するタイプだ。他には爪の表面だけが白濁する表在白色型、爪の半月のところから白濁する近位型、黄色い楔状の混濁で爪が空洞になっている楔型、爪のすべてが破壊される全爪型がある。当初は自覚症状がないが、爪が分厚く肥厚すると痛みが生じ、重症になると爪の破壊が進行して歩行に支障をきたすこともある。
順天堂越谷病院皮膚科の河井正晶准教授に話を聞いた。
「爪白癬は日本人の約101人に1人に見られるとされ、中でも長期入院中の高齢者では65%以上が爪白癬に罹患しているとの報告もあります。高齢社会を迎え、家庭や施設内での感染拡大をいかに防ぐかが課題です」
治療には顕微鏡を使い、白癬菌を直接確認する検査が不可欠だ。肥厚している爪をニッパやヤスリなどで削り、採取した粉を顕微鏡で白癬菌か確認、確定診断する。
内服薬は効果が高いが、肝機能に影響するリスクも
爪白癬の治療薬は20年ほど前に内服薬2種類が発売されている。毎日1錠を6か月間飲み続けるテルビナフィンと、1週間服用し、3週間休薬を3回行なうイトラコナゾールだ。
さらに今年に入り、毎日1錠を3か月服用する内服薬ホスラブコナゾールが登場した。一方、白癬専用外用薬は2014年にエフィナコナゾールが、2016年にはルリコナゾールが発売されている。
薬剤の選択は病型と患者の背景によって決まる。爪のすべてが破壊される全爪型と爪の半月のところから白濁する近位型は内服薬を用いて治療する。内服薬の完全治癒率(爪の見た目も元通りになり、白癬菌も消滅した状態)は40〜50%と高いものの、肝機能に影響を及ぼすリスクもあるので定期的に血液検査が必要だ。
爪に塗るだけの外用薬は高齢者にメリットも
爪の表面だけが白濁する表在白色型や楔型には外用薬が第一選択となり、一番多い足の爪の先端や横から菌が入り込む遠位側縁型は内服、外用薬どちらかを選択。外用薬のエフィナコナゾールは爪のケラチンと親和性が低く、爪深部の爪床まで薬剤が浸透し、ルリコナゾールはケラチンとの親和性が高く、爪にとどまり、白癬菌を攻撃する。
「エフィナコナゾールの52週判定時における完全治癒率は17.8%、ルリコナゾールは48週判定時で14.9%と若干エフィナコナゾールのほうが高くなっています。ともに内服薬に比べると完全治癒率は劣りますが、爪に塗るだけという手軽さや、すでに多くの薬を服用している高齢者にとって外用薬のメリットは大きいと思います」(河井准教授)
足の爪白癬の完全治癒には内服・外用薬ともに1年程度かかることが多い。爪白癬から足白癬、再び爪白癬と感染を繰り返すことも多く、自分を含めた同居家族の足白癬のチェックが再発予防につながる。
※週刊ポスト12月14日号