冷えを解消する「陽の食材」って?食の陰陽の組み合わせ方<2>
真冬にならなくても体の「冷え」を慢性的に感じている人は少なくない。『冷えを取れば9割治る!』などの著書で知られ、体の冷えと病気の関係や、漢方医学に詳しい「イシハラクリニック」(東京都江東区)副院長、石原新菜先生に、今回は「冷えと食」について解説してもらった。
体を温める「陽性食品」と冷やす「陰性食品」
体の冷えは血流の悪化が要因ということを第1回(https://kaigo.news-postsevenccom/11939)で解説してもらった。体の冷えは生活習慣病をはじめ免疫力の低下から、がんなどの重い病気につながるリスクがある。これを解決する手段として、「食」に対する注意が必要だと石原先生は話す。
「冷えを解消する『発熱ボディ』を目指す近道は、毎日の食事です。では、どんな食品を摂ったらいいのか?
ヒントとなるのは漢方の『陽性食品』と『陰性食品』という考え方です。陽性食品は体を温める働きがあり、主に冬が旬で色が濃く、水分が少ない傾向があります。一方の陰性食品は体を冷やすタイプで、旬は夏。色が薄くて水分が多いという特性があります。
食材の『陰と陽』を正しく把握して、体を温める陽性食品を上手に食生活に取り入れることが重要なんです。食材の陰と陽に迷ったときは、原産地を基準に考える方法があります。今は北でも南でも色々な作物が採れますが、りんご、さくらんぼ、ぶどうなどは、もともと寒い地域の作物なので陽性。バナナ、マンゴー、キウイなどは熱帯原産なので陰性食品になるわけです」(石原先生、以下「」内は同)
陽性食品一例
●陽性食品の例
・りんご ・さくらんぼ ・ごぼう ・にんじん ・れんこん ・しょうが ・そば ・海藻類 ・黒豆 ・玄米 ・赤身の肉 ・サケ ・カニ ・チーズ ・味噌 ・しょうゆ ・漬物 ・紅茶
陰性食品一例
漢方では寒い地域から来た食材は体を温め、暑い地域由来のものは体温を下げる食材になる傾向があると、考えられている。ただ同じ食材でも、発酵させたり塩につけたりと加工すると、陽性食品に変わるケースがある。
【陰性食品の例】
・バナナ ・みかん ・すいか ・レタス ・白菜 ・きゅうり ・白米 ・うどん ・白砂糖 ・脂身の多い肉 ・牛乳 ・バター ・マヨネーズ ・化学調味料 ・緑茶 ・コーヒー ・コーラ
陰と陽のバランスで冷えを回避
陰性食品と聞くと何となくマイナスなイメージを持ってしまうが、そうではない。陽と陰のバランスが重要だと石原先生は語る。
「例えば生野菜サラダは、食物繊維やビタミンは豊富ですが、トマトやレタス、きゅうりなど、陰性の食材が多く入っています。そこで陽性の調味料を活用するのです。
ドレッシングに、しょうゆや味噌など塩分が入っていれば、陰陽のバランスを取ることができます。脂身の多い肉は味噌漬けにしたり、しょうゆや味噌で煮る。うどんは味噌煮込みにするなど。
これで陰陽の調節ができ、体を温める食事に変わります。唐辛子、こしょう、山椒といった香辛料には体を温める働きがありますから。イタリア料理のペペロンチーノは、陰性食品であるパスタと陽性のにんにくと唐辛子という、上手い組み合わせをしていますね」
しかし調味料によって、塩分が過剰になるのではないかという懸念がある。
「確かに、普段から暴飲暴食の自覚がある人は、減塩を心がけたほうがいいでしょう。でも、冷えが起こっている人が極端な減塩をすると、体がさらに冷えてしまいます。塩には新陳代謝を向上させる働きがあるからです。寒い気候の東北の人が塩辛いものを食べるのは、体が温まるという古来からの知恵。塩分を摂っても、体を動かしたりお風呂に入ったりして汗をかけば排出されていきます」
いまどきの健康法で体が冷える!?
また流行の健康法や食品で、かえって体を冷やしてしまっている人が多いと、石原先生。
「ときどき『美容と健康のために1日に水を2リットル飲みましょう』といった記事を目にします。でも、それだけの量を飲んでいいのは、ウォーキングや運動、半身浴などで汗をよくかいている人です。水は体のなかに溜まりますから、汗をかかない人が1日に2リットルも飲んでいたら、余分な水分で自分の熱が奪われて、体が冷えてしまいます。
毎朝、白湯を飲むという方もいらっしゃいますが、白湯も冷えれば水になります。白湯を飲むなら、シナモンのようなスパイスを入れるようにしましょう」
流行のグリーンスムージーも、飲み方に注意が必要だと言う。
「グリーンスムージーの材料は、葉物野菜と果物と水。そのほとんどが陰性食品なので、体を冷やしやすいのです。そこで、陽性食品をブレンドするのです。私のオススメはしょうが。しょうがは葛根湯をはじめ、漢方薬の7割以上に配合されているほど多くの効能を持つからです。手ごろな値段で入手も簡単。チューブ入りのものや粉末でもかまいません。味噌汁や納豆などの薬味にしてもいいですし、ハーブティー感覚で紅茶に入れる方法もあります
食材の陰陽をすべて覚えるのは大変ですから、陽性の調味料やスパイスを覚えておいて、日ごろの料理に使うといいでしょう」
食材の持つ温め効果を上手に活用すれば、自然と冷えが解消されていくはず。次回は思い立ったらすぐできる、石原先生直伝の手軽な筋力アップ法を紹介します。
教えてくれた人/石原新菜(いしはら・にいな)
イシハラクリニック副院長。医師。帝京大学医学部卒業後、大学病院での研修を経て、現在、自然医学の専門家で医学博士の父、石原結實氏が院長を務めるイシハラクリニックで、漢方医学、自然療法、食事療法により、さまざまな病気の治療にあたっている。著書に『冷えを治せば病気もよくなる』(Gakken)、『病気にならない蒸しショウガ健康法』(アスコム健康BOOKS)など。
取材・文/熊谷あずさ
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