兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第166回 禍福はあざなえる縄のごとし】
ライターのツガエマナミコさんが若年性認知症を患う兄との暮らしを綴る連載エッセイ。今回は、久しぶりに兄の主治医、ドラマ『白い巨塔』に登場する財前五郎医師のごとく冷徹な財前先生(仮)の診察を受けた日のお話。財前先生(仮)の塩対応がかすんでしまうほどの心労がマナミコさんを襲ったのです。

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外出先のトイレで大変な状況に
2か月に一度の兄の受診日でございました。
診察室に入室してすぐ、兄があごにマスクをしているのを見た財前先生(仮)は「マスクをしてください」という強めの声でおっしゃいました。兄がマスクをどうしたらいいのかわからなくてあたふたしていると重ねて「マスクをしてください、マスク!」とおっしゃり、プチパニックになった兄はマスクを耳から外して取り去ってしまいました。
兄は相手の言っている意味を理解できないことが増えてまいりました。だいたい雰囲気で乗り切っているのでございます。先生の強い言葉に焦って頭が混乱した様子がわたくしにはよくわかりました。
そんなひと悶着があって始まった問診は
財前先生(仮)「お変わりありませんか?」
わたくし「特にありません