中高年からは“小太り”が正解!大事なのは体重ではなく体組成「BMI22~23がもっとも死亡率が低い死亡率」
「ベスト体重から10kg増えた」などの声をよく聞くが、そのベスト体重はいつの時代のものだろう。アンチエイジング研究の第一人者によると「年代ごとに適した体重」があり、自己流のダイエットは老化を進める可能性があるという。中高年から健康的に年を取るためには“小太り”が正解とか。医学的に正しい食事法と、自分の体の状態を見直すところから、最強ボディを目指しましょう!
欧米では「やせすぎは不健康」が根付いている
外資系のファッションブランドでは、太めサイズのモデルが広告に登場することが珍しくなくなった。
日本でも、一般的な“八頭身スタイル”のマネキンではない、ぽっちゃり体形のものが登場。「自分の体形に近いので服選びの参考にしやすい」「これまでのマネキンよりも親近感が持てる」と評判もよく、売り上げ増にもつながっているという。
太めモデルやマネキンの活躍は“多様性の時代”ならではの傾向だが、欧米では、それ以前に「やせすぎは不健康」との考え方が根付いている。
「フランスでは、BMIが基準より低いモデルはショーに出演できないという法律があります。活動するためには、健康体であることを証明する医師の診断書を提出する義務があるほどです」と、抗加齢医学研究の第一人者である米井嘉一さんは語る。
BMIとは、肥満度を表す国際的な体格指数だ。細い体がもてはやされた2000年代に、摂食障害で亡くなるモデルが相次いだことから、フランスに先駆け、イタリアやスペインで「BMI 18以下のモデルは出演禁止」などの法律が制定されたのだ。
「残念ながら日本は遅れていて、いまだこうした動きがありません。女性アイドルが『体脂肪率は8%です』なんて自慢げに言っているのを聞くと、危険だなあと心配になってしまいます」(米井さん・以下同)
★BMIの算出方法と基準
■BMI=体重【kg】÷(身長【m】)2
BMI / 肥満度判定
18.5未満 / 低体重(やせ)
18.5~25未満 / 普通体重
25以上 / 肥満
★BMIと脂肪率
★メタボリックシンドロームの診断基準
下の【1】+【2】~【4】のうち2つ以上該当
【1】ウエスト周囲径
90㎝(女性)、85㎝(男性)以上
【2】脂質
中性脂肪150㎎/dL以上
またはHDLコレステロール40㎎/dL未満
【3】血圧
収縮期血圧130㎜Hg以上
または
拡張期血圧85㎜Hg以上
【4】血糖値
空腹時110㎎/dL以上
■解説■
BMIの算出法は世界共通だが、肥満の判定基準は国により異なる。BMIと死亡率の関連を示したグラフでは、22~23がもっとも死亡率が低いことから、健康面で理想的な数値とされる。一方、BMI30以上は死亡率が急増する。
中高年からは『オプティマル・ヘルス』を目指すべき
若い頃のように細くなりたいと思う前に、本当にやせる必要があるのか、見直すべきは体重か、体形か、健康面から考える必要がある。
「アンチエイジングの観点から言うと、中高年からは『オプティマル・ヘルス』(その年代でもっともイキイキとした理想的な健康状態)を目指すべきです。その指標となる値がBMI。上のグラフの縦軸にあるように、BMIとは『死なない(健康長寿を達成できる)値』という、医学的根拠に基づいたものです」
BMI 18.5~25未満が適正(普通)体重の範囲だが、実はこれは男女・全年齢を合わせた平均だという。
「実際には、年代によって適正なBMI値は変わってきます。もっとも死亡率が低い22~23という値は、30~40代であれば適正でしょう。しかし、60代以降なら、適正範囲は24~25に移り、体形としては小太りくらいの方が健康面ではいいというデータが出てきています」
米井さんによる調査対象は、現在のところ主に90才代、100才代の高齢者だが、太り気味の人の方がやせた人よりも健康であることは、データにも表れているという。
「若年者のデータがまだそろっていませんが、私の予測では、10代~20代前半だと20~21が適正と考えています。グラフに示したように、BMI22~23を境に、若年者は左側、中高年は右側にシフトしていくのが適正値の傾向です」
大事なのは体重ではなく体組成!
「BMIが適正範囲内だからOK!」と喜ぶのはまだ早い。
「大事なのは体組成(脂肪や筋肉、骨、水分など)。内臓脂肪は少なく、適度に皮下脂肪量があり、筋肉量が多いことが望ましい。筋肉量が多いとエネルギー消費量も増えて基礎代謝が上がるため、太りにくい体になります。脂肪は何かと目の敵にされますが、内臓脂肪と皮下脂肪の違いを知っておくべきです。腸のまわりにつく内臓脂肪は、たまりすぎると生活習慣病を招くので、減らした方がいい。お腹がぽっこりと出ている人は要注意です。内臓脂肪は、きちんと運動をすればすぐに減らせます。
一方で、手でつまめる皮下脂肪は、生きるために必要な私たちの“味方”です。皮下脂肪には抗酸化作用があり、紫外線を浴びると生じる遺伝子やたんぱく質の酸化も、皮下脂肪中の不飽和脂肪酸が守ってくれるのです。また、がん細胞による遺伝子の損傷からも保護してくれます。適度に皮下脂肪がある方が、健康で快適な暮らしができるということです」
健康管理のためにも、体組成計で体重以外の数値を把握することが必要だ。