中高年からは“小太り”が正解!大事なのは体重ではなく体組成「BMI22~23がもっとも死亡率が低い死亡率」
次に、やってはいけないダイエットについて聞いた。
「やみくもに食べないダイエットです。食べなければ当然体重は減りますが、あわせて筋肉や基礎代謝も落ちます。基礎代謝が落ちれば、何を食べても太る体質に変わってしまい、ダイエット→リバウンドの悪循環に陥ります。中高年が行えば、その後のQOL(クオリティー・オブ・ライフ、生活の質)も低下してしまうでしょう。
誰でも加齢とともに代謝が落ち、太りやすくなりますが、若い頃に過酷なダイエットをした経験があるかたは、そのときに『太り体質』に変わっている可能性があります。いまからでも遅くはないので、食事と運動で体質改善を図りましょう」
昨今流行の「断食」はどうだろう?
「半年や1年に1回、1~2日程度のプチ断食をやる分には刺激になり、褐色脂肪細胞(※)が増えるというデータもありますが、体重を落とすというより、体内のリセット効果が大きいのかなと思っています。ただ、それを自己流にアレンジして1日1食とか朝食抜きなどをしてしまうと、血糖値が急激に上がる『血糖値スパイク』を招きます。それにより、アルデヒドという物質が大量発生して体内のたんぱく質を変性させ、体をコゲ(糖化)つかせ、老化を促進してしまいます」
こうした「糖化 ストレス」は糖尿病をはじめとする生活習慣病につながるほか、認知症のリスクも高まる。
最新研究でわかった若々しい体を作る朝の「たんぱく質」
イキイキとした若々しい体作りの奥義はあるのだろうか。
「車の性能を上げるように、体も、免疫機能、糖・脂質代謝、生殖機能、エネルギー代謝の効率を上げる“ベストチューンアップ”を行うことが大切です。ベストチューンアップとは、体内時計(約25時間)を地球の自転周期(24時間)に合わせてリセットすることです。たった1時間のずれと思うかもしれませんが、12日後には体内時計と昼夜が逆転し、体のさまざまな機能が低下してしまいます。
“ベストチューンアップ”のための3つの朝活
方法は3つ。1つ目は、朝日を浴びること。睡眠ホルモンともいわれるメラトニンの分泌を止め、体内時計をリセットさせます。2つ目は、朝食を食べること。朝食は文字通り前日からの『断食(fast)を破る(break)』重要な食事です。血糖値が適度に上がり、それが刺激となって体内時計がリセットされます。そして3つ目は、朝にたんぱく質をたっぷりと摂ること。
これは、私の師で時間栄養学の大家である早稲田大学の柴田重信教授が、今年6月に発表したもので、朝・昼・夕のうち、朝食でたんぱく質を摂ることが、もっとも効率よく体内時計をリセットできることがわかりました。たとえば体重50㎏の女性なら、1日に70~75gのたんぱく質摂取が理想ですが、朝のうちに25~30gを摂ってしまえば体内時計もリセットされ、その後の摂取も楽になる。
たんぱく質を夜にまとめて摂る人が多いですが、夜は消化吸収の効率が悪くなるので、朝と昼でたっぷり摂りたいところです。私は月に2回、朝食に牛丼を“がっつり”と食べます。並サイズ(牛肉100g前後)で22gほどのたんぱく質が摂れるんです。牛丼でなくとも、魚なら約100gでたんぱく質量は20g前後。これに卵や納豆、ヨーグルトなどを加えればけっこう摂れますよ」
朝からそんなにたくさん、入るだろうか…?
「そのために、前の晩から準備をするんです。夕食は遅くとも21時に食べ終え、23時には就寝し、朝6時か7時に起きて10~15分散歩でもしたら、胃腸機能も活発化し、朝食が食べたくなります」
夕食の主菜を翌朝に回すなどの工夫も必要だろう。せっかくやせても老けて見られたら元も子もない。若見えを目指すなら、“モリモリ朝牛丼”を目標に、朝活に励もう!
主な朝食食材のたんぱく質量
■白米1膳(150g)3.8g 糖質53.4g/234kcal
■食パン(6枚切り)5.3g 糖質25.3g/149kcal
■クロワッサン(30g)2.4g 糖質12.7g/131kcal
■鶏卵(50g)6.1g 糖質0.2g/71kcal
■納豆(50g)8.3g 糖質2.7g/95kcal
■木綿豆腐(150g)10.5g 糖質0.6g/110kcal
■ブロッコリー(60g)3.2g 糖質0.9g/22kcal
■ベーコン(20g)2.6g 糖質0.1g/80kcal
■ソーセージ(45g)5.2g 糖質1.5g/144kcal
■鮭塩焼き(80g)17.9g 糖質0.1g/146kcal
出典:『一番かんたんひと目でわかる!糖質量&たんぱく質量ハンドブック』(上村泰子・吉岡ゆりか著/新星出版社)
教えてくれた人
米井嘉一さん/同志社大学教授
2005年日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。2008年から同大学生命医科学部教授を兼任。著書に『最新医学が教える最強のアンチエイジング』(日本実業出版社)がある。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/坂木浩子
※女性セブン2022年9月29・10月6日号
https://josei7.com/
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