【ぎっくり腰】の痛みを和らげる「腹式呼吸」原因と対処法を名医が解説
ひと言で「腰痛」といっても、症状によってタイプは様々だ。本来、痛みの改善にはその症状ごとに正しいアプローチが必要なのだが、自分がどのタイプなのかを分かっておらず、漫然と対策を続け、逆に悪化させてしまうケースが多々あるという。
教えてくれた人
黒澤尚さん/整形外科医
順天堂大学医学部整形外科学名誉教授。社会医療法人社団順江会江東病院理事長。専門は、腰・ひざなどの関節痛、スポーツ外傷、関節鏡手術、変形性ひざ関節症、運動療法など。1980年代後半から、ひざ痛が改善できる「黒澤式ひざ体操」を提唱。著書は『これで改善!女性の変形性ひざ関節症』(PHP研究所)、『ひざ痛-変形性膝関節症-自力でよくなる! ひざの名医が教える最新1分体操大全』(文響社)など多数。
ぎっくり腰は“筋肉の損傷”で起こる
激痛で動けなくなるぎっくり腰は、筋肉の疲労と硬直が原因になるという。黒澤医師が語る。
「腰を支える筋肉や筋膜が瞬間的にひきつるケースや、靭帯などの軟部組織が微細な断裂を起こすことでぎっくり腰が起きると推測されています」
姿勢を変えたり体を動かしたりする瞬間に激痛が走ることがぎっくり腰の特徴だ。
「その痛みは『運動時痛』と呼ばれ、損傷した組織が体の動きで引っ張られて痛みのスイッチが入ります。逆に動かなければ物理的な刺激が加わらず、痛みは出ません」(同前)
戸田医師は朝の発症リスクを指摘する。
「就寝中に骨盤周りの筋肉が固まり、目覚めて起き上がる時や洗顔などで前屈みになる時、急激に引き伸ばされた筋肉が損傷して激痛が走ります」
ぎっくり腰の対処法として有効なのが腹式呼吸
発症した際はコルセットや痛み止めを利用して、安静にして痛みが引くのを待つのが基本だ。
その時、対処法として有効なのが腹式呼吸だという。
「腹式呼吸を行なうと肺活量が増え、腹腔内の圧力(腹圧)が高まります。するとお腹の中から風船のように腰全体を支えることができ、腰椎にかかる負担を軽減してぎっくり腰の痛みを和らげます」(同前)
痛みの発症を抑えるのに効果があるのは、立ち上がる時に「よっこいしょ」と声を出すこと。
「ある調査では立ち上がる際に掛け声を掛けると、横隔膜などの深層筋の力も使うため、腰の筋肉だけで立ち上がるのに比べて腰にかかる負担が軽減されました」(同前)
ぎっくり腰のトリガーになることもある「くしゃみ」もひと工夫するとよいそうだ。戸田医師が解説する。
「くしゃみが出そうになったら片腕の脇を締め、肘を直角に曲げて手すりなどに掴まります。腰だけでくしゃみの衝撃を受けるのではなく、手すりに掴まり上半身を固定することで衝撃を分散できるのです」
これまでぎっくり腰になったら絶対安静と考えられてきた。しかし、近年はむしろ動くほうが症状改善を早めることが分かったという。
「全く動かないと腰回りの筋肉を硬直させて治りが遅くなる可能性があります。痛みが引いてきたら無理のない範囲でヤンキー座りのようにしゃがんだり、腰を動かすと治りが早いことが分かりました」(同前)
就寝時に硬めの布団で寝ることもぎっくり腰の軽減になると戸田医師。
「体が沈み込んで寝返りが打てないと、睡眠中に筋肉が凝り固まってぎっくり腰を悪化させるリスクがあります。硬めの布団で寝返りを打ちながら寝ると改善されます」
ぎっくり腰の症状を改善させる行動【まとめ】
■腹式呼吸をする
空気でお腹の圧力(腹圧)が上がることで腰椎への負担が減り、痛みがラクになる効果を期待できる
■「よっこいしょ」と声を出して立ち上がる
声を出して立ち上がることで腰の筋肉とともに横隔膜などの深層筋を使い、腰の筋肉への負担を軽減できる
■くしゃみをする時に手すりを掴む
手すりに掴まり上半身を固定することで、くしゃみ時の腰への負担が軽減される
■硬めの布団で寝る
寝返りを打ちにくい柔らかい布団ではなく、硬めで動きやすい布団で寝ると腰への負担が減る
■痛みが引いてきたら体を動かす
全く動かないと腰回りの筋肉が固まるので、痛みが治ってきたら腰を少し動かす
※週刊ポスト2026年1月16・23日号
