猫が母になつきません 第303話「おつかい」
メモを手にしたおじいちゃんの目から「たすけて…」という光線が放たれていました。何か探しているんだろうな、と思って近づくとメモを見せて「これはどこにあるんかな?」。おじいちゃんが指差したのは「マーボーなすの素」。調味料の売り場には来ています。私は目の前にある箱を指して「これじゃないですか?」と言ったものの、よく見ると棚いっぱいに麻婆茄子の合わせ調味料が。甘口、中辛、辛口にあっさり、こってり、みそ味、肉入り…こんなに種類があるなんて…おばあちゃん、もうちょっとヒントください。おじいちゃんは携帯を持って来ていなくておばあちゃんに確認することもできず、いろいろ見て相談しながら一番スタンダードな感じのに決めました。間違ってたらごめん、おばあちゃん。意識して見ると、おつかいに来ていると思われる男性の高齢者が結構いらっしゃる。メモを見ながらとか、たぶん奥さんと携帯で話しながら買い物をしているおじいちゃん。食料品の買い出しは荷物が重くてけっこう重労働。自動車がないとたいへんなので、高齢者だけの家庭だとおじいちゃんの仕事になりがちなのでしょう。ふたりで決断をくだした《甘口》の麻婆茄子の素を手にしたおじいちゃんは別れ際に「あんたは結婚してるの?」。早く帰って麻婆茄子を食べてください。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。