尿モレ、膀胱炎、かぶれ…誰にも言えない【シモの悩み】改善法
「トイレをがまんできない!」「あそこがかゆい!」「いきめない!」etc. 実は閉経前後の女性に多いシモのトラブル。ちょっとデリケートな問題だけに、誰にも言えずに1人で悩んでいませんか?
膣まわりの不快な症状の改善法について、専門家に聞いた。
女性ホルモン低下が招く骨盤底筋の緩みがトラブルの原因
「友人と会話中に大爆笑。お腹に力がこもった瞬間、モレちゃった」(49才・パート)
「デスクワーク中、下着が食い込み痛いのなんの。仕事に集中できません」(52才・事務)
などと、女性たちを悩ませているのが、尿モレや腟の痛みに便秘やいぼ痔などの下半身にまつわるトラブル。
その大きな原因となるのが、女性ホルモン(エストロゲン)の低下だと話すのは、産婦人科医の八田真理子さん。
「女性ホルモンが低下すると、子宮や膀胱、直腸などの骨盤内臓器を支え、尿道や腟、肛門を引き締める働きをしている骨盤底筋が緩みやすくなります」(八田さん・以下同)
欧米では骨盤底筋の重要性が広く社会に認知されており、日本でもエクササイズなどを取り入れて骨盤底筋を若いうちから鍛えようという意識は高まりつつある。
閉経前後の女性なら誰もが抱え込みがちなシモの悩み。
「基本は質のよい睡眠や食生活の改善から。基礎知識をしっかり身につけておくと病気のリスクも下がります」
項目ごとに見ていこう。
尿トラブル
●モレる
せきやくしゃみをした時、「あっ!」と思ったら、モレていた、そんな経験をしている女性は少なくない。だが、“自分だけ”と悩む必要はない。女性は、ほぼみんなモレを経験すると婦人科医の藤島淑子さんは言う。
「女性の尿道は3~4cmしかありません。そのため、ちょっと腹圧がかかっただけでモレてしまうのは、よくあること。更年期をすぎたあたりから、骨盤内臓器(膀胱や尿道、子宮、腸など)を支えている骨盤底筋が薄く緩んだ状態になり、臓器が下がってきたり、尿トラブルを生じることもあります」(藤島さん・以下同)
尿モレには、腹部に力を入れた時にモレる“腹圧性尿失禁”と、急に尿意をもよおしてトイレまでがまんできない“切迫性尿失禁”がある。
「切迫性尿失禁は、自分の意に反して膀胱が収縮してしまうことが原因です。そもそも多くの日本人は小さい時から“トイレは行ける時に先に行く”という教育をする傾向にあり、それが膀胱にためられる尿の量を少なくしてしまい、結果、トイレの回数が増えてしまうのです」
1日の排尿回数は、通常7回以下。それを上回るようであれば、自身の排尿習慣を見直してみる必要がある。
膀胱を大きくする訓練と骨盤底筋体操で改善を
藤島さんの病院では、排尿をがまんし、膀胱を大きくする訓練(膀胱訓練)と骨盤底筋体操(下イラスト参照)によって、約7~8割の患者の症状が改善したという。
「1回の排尿で検尿カップ1~2杯分(200~400ml)が採れるくらいの量を、膀胱にためられるのがベスト。これを目安に、1週間程度、その日の尿量や水分の摂取量を日記やノートに記録してみると、自分の尿量が把握できるようになります。皮膚や粘膜の老化を早める喫煙、腹圧のかかる猫背の姿勢なども注意してください」
【1】仰向けに寝て、背骨をまっすぐに伸ばし、足を軽く開く。
【2】ひざを立て、体の力を抜き、5~10秒、肛門と腟を締める。
【3】【2】のまま、ゆっくりと、5つ数える。
【4】5つ数えたらゆっくり力を抜く。【1】~【4】をセットで1日30回を目安に行う。腟を締めるのが難しい場合は、肛門に意識を集中して締めるといい。ポイントは、お腹には力を入れないこと! 約3か月で効果を感じることができる。
●膀胱炎
重苦しい残尿感に排尿時の痛み。時に少量の出血も…。そんな膀胱炎は、先の骨盤底筋の緩みも要因にあるが、尿が出にくい人に多く見られるという。
「最近、ストレスによる不安や不眠から、精神安定剤や睡眠薬をのんでいる人もいますが、これらの薬と、花粉症などの抗アレルギー薬や鼻炎薬を服用している人に、膀胱炎になる人が増えています。こうした薬には膀胱の収縮を抑え残尿を増やす作用があり、膀胱炎になりやすくなります」
水分の摂りすぎはよくないが、少なすぎるのもよくない。1日に1500mlを目安に水分は摂って。
●かぶれ
尿トラブルを抱える女性に多い悩みが、尿モレ防止用パッドによる“かぶれ”。
「閉経後は皮膚が弱くなるので、下着のゴムがあたっただけでもかゆくなります。尿モレ対策に、パッドを敷く人も多いのですが、人によってはそれによって摩擦やムレによるかゆみを訴えることも」
肌に優しい布製ナプキンも売られてはいるが、ネットでの通販が多く、高齢者には、なかなか購入するのが難しいという声も。
「ある患者さんが市販の尿モレパッドの上に、ひと回り大きめのサイズにカットした肌触りのよい木綿の布を両面テープで貼りつける工夫をしていました。これはなかなかの名案です」
新しい布は肌への刺激が強いため、使い込んだ生地が望ましい。使い古したガーゼや着なくなった綿のTシャツ・肌着などを切って使うのがおすすめだ。