65才を超えると「介護保険料は高くなる?」上がり続ける保険料を減らす方法とは【FP&社会福祉士が解説】
令和8年4月から介護保険料率が改定され、40~64才の人の保険料がアップした。では65才以上の人はどうなるのだろうか?「実は65才を超えると介護保険料の支払いの仕組みがそれまでと変更になります」と、社会福祉士でファイナンシャルプランナーの資格をもつ渋澤和世さんは語る。何がどう変わるのか、65才になる前に知っておきたい保険料の基本を解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
介護保険料は「65才」が分かれ道?
日本では40才になると介護保険への加入と保険料の納付が法律で義務付けられています。高齢化による介護費用の増大や介護職員の賃上げ(処遇改善)などの影響から、2026年4月から介護保険料率の引き上げが実施されました。
→4月から介護保険料率アップ!いくら上がる?現役世代の負担増へ
介護保険料は、40〜64才は「第2号被保険者」、65才以上は「第1号被保険者」となり、それぞれ徴収の方法が異なります。
65才以上の介護保険料は、3年に1度のサイクルで見直され、次回の改定は2027年4月ですが、今後のさらなる少子高齢化に伴い、次の改定でも全国平均の基準額は上昇傾向が続くと予想されます。
65才を超えると介護保険料の何が変わる?
40~64才までの会社員や公務員は、健康保険料と介護保険料が合算され、給与から差し引かれています。また、自営業・無職のかたは、国民健康保険料の一部として、納付書や口座振替で支払います。
これが65才になると、自動的に「第1号被保険者」へ切り替わり、介護保険の管理運営が市区町村へ移ります。
65才以上も働き続けていて健康保険に加入している、年金の受給を遅らせる繰下げ受給をしていても、給与天引きから市区町村への直接支払いへと、完全に切り替わります。
65才以降「介護保険料」の支払い方法
・特別徴収…年金から天引き(年間の受給額が18万以上)
・普通徴収…納付書か口座振替(年金を受け取っていない、年金が少ない)
支払額は、給与額に基づいた計算ではなく、住んでいる「市区町村の基準額」×「本人の所得の段階」で決まります。
65才から「保険料が高くなった?」と感じる理由
65才から支払い方法の変更に伴い、「保険料が急に高くなった」と感じるケースがあります。いったいなぜなのでしょうか?
・理由1…会社負担(労使折半)がなくなる
40~64才までの会社員や公務員は、介護保険料の「半額」を会社が負担していますが、65才からは会社負担が一切なくなり、全額自己負担となります。
・理由2…所得に基づく段階制になる
前年の合計所得金額によって所得段階(1〜15段階など)が決まる。
・理由3…自治体ごとの基準額
市区町村ごとの基準額で計算される。都市部や高齢化率が高いと基準額も高めになる。
※参考/厚生労働省「全国の地域別介護保険料額と給付水準を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp040531-1.html
なお、介護保険料の全国平均は月額6,225円、最高額は大阪府大阪市の9,249円、最低額は東京都小笠原村で3,374円と、自治体によって支払い額にかなり差があるのです。
65才以上の介護保険料を抑える・減らす方法はある?
65才以上のかたが支払う介護保険料は、所得状況やそのかたの事情に応じた軽減制度や減免制度があります。自動的に適用されるものと、自ら申請しないと受けられないものもあるため、正しく把握しておくことが大切です。
【1】低所得者に対する恒常的な軽減制度(自動適用が多い)
65才以上の第1号被保険者の保険料は、所得に応じて複数の段階に分かれていますが、市区町村は、所得が特に低いかた(第1〜3段階)に対し、公費を投入して保険料を引き下げています。
対象となるのは、本人および世帯全員が住民税非課税の場合で、軽減割合(基準額に対する割合)としては、0.3倍〜0.7倍程度まで減額されます。
各市区町村にて住民税の情報を元に自動計算するため、基本的に申請は不要ですが、軽減を適用するためには、本人および世帯全員が住民税の申告(または非課税申告)が済んでいることが前提となります。
【2】特別な事情による減免制度(申請が必要)
災害や所得の激減などにより、65才以上のかたが一時的に保険料を支払うことが困難になった場合、申請によって保険料が減額、免除、または徴収猶予される制度です。
・震災や風水害などによる災害:住宅や家財に著しい損害を受けた場合。
・生計維持者の死亡・障害・長期入院/65才以上の本人またはその世帯の主たる生計維持者が、死亡、心身に重大な障害、または長期入院により収入が著しく減少した場合。
・収入の激減/事業の廃止、休業、失業、農作物の不作などで、前年より収入が著しく減少(一般的に3割以上など)した場合。
・低所得/低所得者で、特に生計が困難であると認められる場合(自治体独自の基準あり)。
なお、減免基準や内容は自治体によって異なるため、まずは役所の窓口で相談してください。
他にもある!保険料を下げる方法
介護保険料を抑える方法について考えてみましょう。
世帯分離(住民票上の世帯を分ける)
同居したまま住民票の世帯だけを別にする方法です。同居家族に所得の高いかたがいて住民税課税世帯となっている場合、世帯を分ける(世帯分離)ことで、本人が非課税世帯となり保険料が下がる可能性があります。
住所変更(自治により保険料が変わる)
介護保険料は市区町村(保険者)ごとに算出されるため、住む場所によって金額が大きく異なります。隣の市に移るだけで年間数万円変わることもあります。
■介護保険料(月額)は市区町村により差がある
大阪市9,249円|吹田市6,280円…差額は2,969円
大阪市9,249円|豊中市6,998円…差額は2,251円
世田谷区7,222円|川崎市6,591円…差額は631円
※65才以上(第1号保険者)の介護保険料(同等の保険段階による)
老後の住まいを検討する際は、その自治体の基準額を比較するのもよいでしょう。ただし、保険料の差額よりも生活環境の変化も考慮して慎重な判断が必要です。
自治体により独自の減免基準があることも
多くの自治体では所得段階による標準的な軽減以外に、特定の条件を満たした人向けの減免制度があります。例えば、「預貯金が少ない」「多子世帯」「障害者への配慮」といった独自のルールを設けている自治体もあります。
減免については「申請」が必要となることがほとんどなので、介護保険窓口へ相談してみることをおすすめします。
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介護保険料の決定通知書は、多くの自治体で毎年6月中旬から7月中旬頃に届きます。世帯分離や減免申請を検討される場合は、この通知書が手元に届いたタイミングが、相談に行く最適な時期となります。本記事を参考に是非、チェックしてみてください。
