「交流のない息子夫婦の子育てが心配…」と嘆く母にマムシさんは「相談してもらえない理由を考えてみなさい」
「自分の側に原因はないのか、胸に手を当てて考えてみたほうがいい」――。子育ての悩みを抱えているらしい息子夫婦。でも、自分には何も相談してくれないと悩む58歳の女性。詳しい状況がわからないまま、心配や不信感ばかりがふくらんでいく。横たわっている分厚い壁を崩すには、まず何が必要か。マムシさんが親身に指南する。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み「長男夫婦が何も相談してくれない」
この記事が公開される翌日の29日には、新しい自民党総裁が決まるわけか。誰になるのかはわからないけど、日本は今のままじゃいけないのは確かだ。しがらみや忖度をはねのけて、自分の意見をビシッと通せる人に勝ってほしいね。頼むから、俺の目が黒いうちに「やっぱり日本はたいしたもんだ」と感心できるような変化を見せてくれよ。
今回の相談は、自分のことじゃなくて、遠くに離れて住んでいる息子夫婦のことで悩んでいる58歳の自営業の女性から。なるほどね、こりゃなかなか厄介だ。
「長男の嫁が、2歳の娘は可愛いがるのですが3か月の男の子をどうにも可愛がれないらしく、今施設に預けてると聞いて、何か自分にできることがないものかと頭を悩ませています。彼女とは結婚前に一度会ってその時は挨拶程度でした。その後、結婚式はしなかったので、お嫁さん側の両親とは会ったことさえないです(長男に会う機会を作ってと頼んでましたが、叶わないまま地方に異動になりました……)。
お嫁さんは上の子の出産時も実家に帰らず、自衛官をしてる息子が育休を取って2人で子育てしてました。一度会いに行きましたが外でお昼を食べた程度で、赤ちゃん連れだったこともあり、その時もお嫁さんとは話しができる雰囲気ではなかったです。
その後、青森に異動になり、2番めの出産時も実家に帰ることも自分の母親に頼ることもなく、乗り切っていました。友達もいない環境で産後うつの状態なのではと想像していますが、なぜか息子も私に直接相談はしてきません。妹がたまたま電話して知って、私に教えてくれました。ほしくてできた子どもではなかった、男の子だったのがショックだったなど言っていたそうです。どう声をかけるべきか、お知恵をお借りできましたら嬉しいです」
回答:「想像や憶測で心配してもしょうがない。まずは、自分の態度を顧みた方がいいね」
これは、あなたが心配するのもわかるけど、すべてが聞いた話とあなたの想像なんだよね。息子夫婦がお嫁さんの両親と会わせてくれないのも、子育てを親に手伝ってもらわないのも、何か理由や事情があるのかもしれない。まして施設に入れたとか子どもをこう思ってるらしいなんて話は、まったくアテにならないよ。仮に施設に入れたのが事実だったとしても、そんな理由で入れてくれる施設なんてない。話がどっかで変わってるだろうね。
「疑心暗鬼」って言葉がある。一度疑い始めると、何でもないことまで疑問や不安を感じたり、恐ろしいほうに想像が広がったりするって意味だ。あなたは、まさにその状態にあるように見える。たぶんあなたの中では、息子のお嫁さんは相当の“極悪人”で“性悪女”になっているんじゃないかな。だけど息子が選んで結婚して、今も助け合っていっしょに暮らしている相手なんだから、そんなわけはない。
ともかく、まずは息子ときちんと話をすることが大事だ。電話ではうまく話せそうにないなら、手紙やLINEを送ってみるのもいい。言っとくけど、息子に対していきなりお嫁さんを責めるような言い方をしたらダメだよ。時々「あなたはあの女に騙されてるのよ」なんてことを言う母親もいるけど、そんなのはたいてい母親の妄想だ。
はっきり言って申し訳ないけど、息子さん夫婦はあなたを避けてる。相談してくれないことを嘆いているけど、向こうには相談したくない理由があるんじゃないかな。息子夫婦が冷たいわけじゃなくて、自分の側に原因がないか、じっくり胸に手を当てて考えてみたほうがいい。たとえばだけど、最初にお嫁さんに会った時に「長男の嫁」としての役割を期待するようなことを言ったとか、無意識のうちにお嫁さんの両親を侮辱したとかね。
あるいは、息子さんが子どもの頃から、向こうにだけ見えている分厚い壁があったのかもしれない。だとすると、話をしようとしても簡単にはいかないだろうな。でも、人生まだ先は長いんだ。このままだといつまでたっても関係は変わらない。お互い様の部分があったとしても、親の側が大人になって姿勢を低くして歩み寄ろうじゃないか。
あなたは今は「相手にどうやって心を入れ替えさせるか」ってことで頭がいっぱいかもしれない。違うんだ。まずは自分が心を入れ替えて、それを見せることが大事だと思う。手紙やLINEでコミュニケーションを取って、たまには季節のうまいもんを送ったりして、チャンスがあったら「お母さんに悪いところがあるなら、謝るから言ってほしい」と伝えてみる。向こうの気持ちがほぐれてくれば、また孫に会える日もきっと来るよ。
簡単にはいかないかもしれないけど、目に見えない大きな力が「お前にはそういう修業が必要なんだ」と言ってくれてるのかもしれない。誠実にやっていけば、きっと悪いようにはならないはずだ。及ばずながら、応援させてもらうよ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。85歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!
YouTubeでスタートした「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、たちまち絶好調! 毎月1日、11日、21日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
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