「舅も姑も大嫌い」と困り果てた女性の相談に毒蝮三太夫は“旦那に喝!”【連載 第7回】
浜の真砂は尽きるとも世に人間関係の悩みは尽きまじ――。我らが毒蝮三太夫さんが、悩める子羊を救う好評連載「マムちゃんの毒入り相談室」。今回は「三男の嫁」として義両親や義兄との関係に悩む女性からの相談。夫婦関係や親子関係や兄弟関係が入り混じった複雑な問題に、マムシさんはどんなアドバイスを贈ったか。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「舅も姑も義兄も大嫌い。どうしたらいい?」
時代が変わったとはいえ、いわゆる「嫁」っていうのは、つらい立場だよな。旦那の両親に対して、言いたいことを簡単に言えるわけじゃない。旦那はいいよ。自分の親なんだから気心も知れてるし、向こうだって我が子には甘い顔を見せてくれる。
今回の相談は「三男の嫁」だという50歳の女性から。旦那の両親との関係だけじゃなくて、旦那の兄貴もからんでるみたいだ。
「お姑さんが長男の内孫ばかりかわいがり、うちの子つまり外孫にはいっさい関心を示しません。しまいには三男の嫁の私にばかり、こまごました用事を頼んでくる始末。ちなみに長男のお嫁さんは長男と離婚しましたが、いまだにちょいちょい顔を出しては、そのたびにいろいろ持ち帰ります。家業はうちの旦那が継いでいますが、正直長男の世話はしたくありません。舅と姑も大嫌いです。この先どうしたらいいですか?」
回答:「旦那がしっかりしきゃ。奥さんは家族の宝ですよ」
これはね、旦那がしっかりしなきゃダメだ。それに尽きる。この奥さんは外から入って来たわけだから、旦那の両親や兄弟にズバズバ文句が言えるわけじゃない。旦那もきっと、奥さんがここまで悩んでいることに気が付いてないんだろうな。奥さんは黙って自分の後ろをついてくるのが当然だと思ってるのかもしれない。
まずは旦那と、腹を割ってよく話し合おう。「このままだと私はこの家ではやっていけません」って、日頃の不満や怒りを洗いざらいぶちまけてやれ。「あなたが何もしてくれないなら、私は出ていきます。離婚することになっても仕方ないと思ってます」ぐらいのことを言ってもいいよ。そうしないと、旦那は目が覚めないからな。
これは世の中の男性すべてに言いたいけど、奥さんは旦那の付属品だと思っているとしたら大間違いだ。奥さんは家族の財産であり、大切な宝物なんだよ。ここんちは旦那が家業を継いでるんだよな。だったらなおさらだ。奥さんもいっしょに仕事してるにせよ、家で旦那を支えてるにせよ、ふたりで力を合わせないとやっていけないからね。
俺の浅草の同級生で魚屋をやってるのがいたんだけど、ある時、そいつが浮気をした。それがバレて、カミさんが怒って実家に帰っちゃったんだよ。そしたら、魚屋の客がたちまち減っちゃった。近所の客が「カミさんが出ていくなんて、そりゃお前が悪い。そんな店で買えるか」って言って、ほかの魚屋に行っちゃったの。
カミさんが近所の人たちに慕われて店を支えてたっていうのもあるし、近所の人たちが「カミさんを泣かせるような浮気をするんじゃないよ、コノヤロー」ってお灸をすえたわけだ。昔の下町には、そういうところがあったんだよ。友達はすっかり反省して、カミさんに「戻って来てくれ」と頭を下げた。それからは前より仲よくなったみたいだな。
両親がこまごました用事を頼んでくるって書いてあるけど、たぶん長男もこの人のことを軽く扱ってるじゃないかな。結局、旦那が奥さんを大事にしていないから、ほかの人たちも大事にしようとしない。夫婦仲がギクシャクしてると、それが伝わって義理の両親や義理の兄貴も「やさしく接する必要なんてない」と思ってしまう。
もとをただせば、夫婦の関係に行きつくんだよ。旦那が奥さんを大事にすれば、両親の態度も長男の態度も変わってくる。口で文句を言っても、余計にギクシャクするだけだ。こっちがムカムカすればするほど、それが伝わって相手の扱いだってぞんざいになる。嫁が気に入らないから、その子どもの孫もかわいく思えないってのもあるかもしれない。
そんな悪循環から抜け出すには、夫婦の関係を変えること。そのためには、旦那を本気で脅して心を入れ替えさせよう。人を嫌い続けるっていうのも、なかなかエネルギーがいる。こちらの気持ちと相手の態度が変われば、悪循環から好循環にひっくり返るよ。
長男の別れた嫁さんのことは、まあほっとけばいいんじゃないか。長男と向こうの両親の問題だ。見てて面白くないのはわかるけど、腹が立つ原因をわざわざ増やすことはない。
言ってもわからない旦那なら、家を飛び出せばいいし、それでもわからないなら別れちまえ。ボタンの掛け違えは早い段階なら修正できるけど、もうどうしようもない状態ならしょうがない。怒りや憎しみを日々抱えながら生きていくことはないよ。旦那に少しは見込みがあるのかまったくないのか、早めに行動を起こして確かめたほうがいいね。
毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。※今後の記事中で、毒蝮さんがご相談にズバリ!アドバイスします。なお、ご相談内容、すべてにお答えすることはできませんことを、予めご了承ください。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。85歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。最新刊『たぬきババアとゴリおやじ 俺とおやじとおふくろの昭和物語』(学研プラス)は幅広い年代に大好評!
YouTubeでスタートした「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、たちまち絶好調!毎月1日、11日、21日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
いしはら・そういちろう 1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。
●高齢者の深刻な悩み「同居する娘婿が不快…」に毒蝮三太夫が緊急提言