マスク生活でのどの老化が進む…危険な”誤嚥性肺炎”を防ぐ4つの対策【医師監修】
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進められているが、いまだマスクを手放せない状況が続いている。マスクで会話が減ったぶん、のどを使わなくなった人が増えているという。このままの状態が続くとのどは老化し、誤嚥性肺炎のリスクも上がると専門家は話す。そこで、日常生活で無理なく続けられる誤嚥性肺炎を防ぐ対策を専門家に伺った。
【1】タオルストレッチで呼吸筋を鍛える
誤嚥性肺炎を防ぐためには、“誤嚥しかかったとき”に、せき反射がスムーズに起こるよう、呼吸筋(肋間筋[ろっかんきん]・横隔膜)を鍛えることが重要だと、池袋大谷クリニック・大谷義夫さんは言う。
「肺そのものは鍛えられませんが、呼吸筋はタオルストレッチをすることで、鍛えることができます。腕を上下に動かせば横隔膜が、体を横に倒せば肋間筋がほぐれるので、胸郭(きょうがく)が開きやすくなり、肺活量が増えます。全身のストレッチにもなるので、入浴後に行って」(大谷さん)
その方法は以下の通りだ。
■タオルストレッチ
【1】両足を肩幅に開いて立ち、タオルを肩幅の広さで両手に持ち、鼻から息を吸いながら両手を上げる(横隔膜を意識し、お腹をふくらませる)。
【2】口からゆっくり息を吐きながら腕をおろす(お腹が元に戻るよう、横隔膜を意識する)。【1】【2】を5回繰り返す。
【3】再びタオルを持ち上げ、ひじを伸ばしたまま、息を吐きながら体を右側に倒して左脇を伸ばす。反対側も同様に、左右5回ずつ行う。
【2】うがいで口腔機能を高める
日常生活に違和感なく“のどトレ”を組み込むなら、「いつも行っている動きを利用するといい」と、「東京都健康長寿センター」歯科口腔外科部長の平野浩彦さんは言う。
「誤嚥性肺炎の予防に役立つ口腔ケアと、口腔機能を高める効果が同時に期待できるのが“ブクブクうがい”と“ガラガラうがい”です。ブクブクうがいは、口を閉じて水が鼻やのどに入らないようにして行うので、口唇とのどの奥が鍛えられます。ガラガラうがいは、唇やのどの開け閉めの機能を連動させて行うもので、のみ込む機能を鍛える高度なトレーニングになります」
いずれも歯磨きや外出から帰った後など、日常的にやっている動作。トレーニングをしているという意識を少し持ち、いつもより長めに行うだけで充分に“のどトレ”効果が得られる。
“ブクブクうがい”と“ガラガラうがい”
【ブクブクうがい】
口に水を含み、ほお全体をふくらませて10秒ブクブクして水を吐き出す。これを3回繰り返す。歯磨き後のうがいを少し長めにするイメージで。
【ガラガラうがい】
口に水を含んだまま、のどの奥で15秒ほどガラガラしてから水を吐き出す。無理に上を向くと首を傷める恐れがあるため注意すること。
【3】葉酸でのどの老化を防ぐ
食生活でものどの老化を予防できる。それには、ビタミンB群の一種である「葉酸」を積極的に摂ることだ。
「葉酸は細胞の合成や修復に深くかかわっており、DNAの合成にも欠かせない栄養素。胎児の発育に不可欠で、妊婦さんに推奨されていますが、脳内神経伝達物質であるドーパミンの合成にも重要な役割も果たしています。ドーパミンの分泌量が減ると、のみ込む力が低下しますが、葉酸の摂取で高齢者のせき反射の低下が改善できることも確認されています」(大谷さん)
葉酸は、ブロッコリーやほうれん草、モロヘイヤなどの緑の野菜、枝豆、レバー、うになどに豊富に含まれている。
【葉酸を含む食材の一部】
【4】食後に横になるときは左を下にする
誤嚥を防ぐためには、「食後90分は横にならない方がいい」と、大谷さんは言う。
「胃はカーブしているため、体の右側を下にすると胃が食道よりも上になり、重力の関係で逆流を起こしやすくなります。誤嚥性肺炎の原因の7割は、睡眠中や横になっているときに唾液や胃酸が気管に流れ込む『不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)』というものです。
肺炎を防ぐためにも、食後は横にならない方がいいですが、どうしても横になりたいなら左側を下にする習慣をつけましょう」(大谷さん)
教えてくれた人
大谷義夫さん/池袋大谷クリニック院長。
呼吸器内科のスペシャリスト。著書に『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)などがある。
平野浩彦さん/東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長。
80才で20本の歯を残す「8020運動」に加え、健康長寿につながる「オーラルフレイル管理」の重要性を発信している。
取材・文/山下和恵 イラスト/うえだのぶ
※女性セブン2021年7月22日
https://josei7.com/
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