年金生活者は“ふるさと納税”すると得する?損する?注意ポイント【FP解説】
ふるさと納税は、その土地に寄付することで、お肉や野菜、果物などお得な返礼品を受け取ることができる制度だ。年金生活者がこの制度を利用するときの注意ポイントについて、ファイナンシャルプランナーの大堀貴子さんに解説いただいた。
ふるさと納税とは?
ふるさと納税とは、都道府県や市区町村に寄付をし、寄付金額に応じて返礼品を受け取れる制度だ。返礼品には、土地ならではの特産品をはじめ、その地域で生産される工芸品や電化製品などさまざまなものがある。期限が1月1日から年末までとなっており、季節の果物など特産品は時期を逃すとなくなってしまうこともあるため、時間があるときにチェックしてみるといいだろう。
寄付金は2000円を超えた分は、翌年の所得税や住民税から控除されるため、実質2000円でさまざまな返礼品を受け取れるお得な制度だ。寄付先は、自分が住んでいたふるさとはもちろん、ゆかりのない地域でも可能だ。
ふるさと納税は、年金生活者をはじめ、所得がある人なら誰でもできる制度だが、所得に応じて寄付金の上限額が決まっている。所得が多くなるほど上限額も高くなる。
年金収入は所得になるため、もちろんふるさと納税はすることができるが、税金を支払っているかどうかがポイントになる。以下で詳しく解説する。
年金生活者はふるさと納税で得する? 損する?
年金生活者でも所得によって税金を支払っていれば、ふるさと納税によるメリットを享受できる。しかし、所得が少なく、所得税や住民税を支払っていない場合は、ふるさと納税をすると、その寄付金額全額が自己負担となってしまうので損することになる。
まずは、ふるさと納税をすべきか、所得税や住民税を支払う所得の基準額について確認してみよう。
■所得税を支払っているか?
・65才未満の人…108万円を超える人
(「公的年金に係る控除額60万円+基礎控除48万円以下」の場合、税金はかからない)
・65才以上の人…158万円を超える人
(「公的年金に係る控除額110万円+基礎控除48万円以下」の場合、税金はかからない)
■住民税を支払っているか?
・65才未満…所得が105万円を超える人
・65才以上…所得が155万円を超える人
つまり、65才未満なら110万円以上、65才以上なら160万円以上の年金収入がある人は、ふるさと納税をするとお得になる可能性がある。
しかし、この金額は、配偶者の扶養や社会保険料控除などの基礎控除以外の控除を計算していないので、あくまで目安となる。さまざまな控除により所得が減るケースがあるため、まずは、ふるさと納税サイトなどで寄付金額の上限をシミュレーションしてみるといいだろう。
参考/ふるさと納税控除限度額詳細シミュレーション(計算方法) | セゾンのふるさと納税 (saisoncard.co.jp)
https://furusato.saisoncard.co.jp/info/simulation_d.php
ふるさと納税をするときの注意ポイント
寄付金額の上限を知るには、源泉徴収票か確定申告している場合はその申告書をもとに社会保険料控除、生命保険料控除等を入力して算出する。
ただし、ふるさと納税は、収入のあった年の1月1日~12月31日までに寄付をすることになっている。しかし、今年の収入はまだ確定していないため、昨年の収入をもとに計算するしかない。
今年新たに保険に加入して控除金額が増えそうな場合や、配偶者の扶養が外れたなど昨年の金額に新しい情報を加味する必要がある。寄付金額の上限を超えて寄付してしまうと、損してしまうので、ある程度の誤差を考慮して、上限より少なめの金額にしておくほうが安心だ。
ふるさと納税のやり方
ふるさと納税のやり方は、いたって簡単だ。ふるさと納税サイトで上限額に注意しながら、自治体や返礼品を選び、クレジットカード決済などで支払えばよい。寄付には、食品などほしいものから選ぶこともできるし、自分が好きな自治体など場所で選んだり、災害などで被災した地域を応援したりするものもある。
ふるさと納税サイトの一例
ふるさと納税サイト [ふるさとチョイス] | お礼の品掲載数No.1 (furusato-tax.jp)
【さとふる】ランキングとレビューで探せる利用率No.1ふるさと納税サイト (satofull.jp)
【楽天市場】ふるさと納税|はじめての方でも簡単!納付先の自治体、寄付金の使い道が選べ、お礼の特産品や税金の控除もうれしい「ふるさと納税」 (rakuten.co.jp)
https://event.rakuten.co.jp/furusato/
ふるさと納税サイト【ふるなび】Amazonギフト券 コードがもらえる! (furunavi.jp)
寄付後は手続きが必要
寄付をした後には、税金の控除や還付を受けるための手続きが必要になり、以下2つの方法がある。
■確定申告をしない場合
・「年金収入のみで400万円以下」「医療費控除を行わない」など、そもそも確定申告不要の人
・寄付先が5自治体以内
上記に該当する場合は、ふるさと納税のときに「ワンストップ特例制度」を選択するにチェックすることで、自治体から寄付金証明書とともにワンストップ特例制度申請書が届くので、それに必要事項を記入し返送すれば確定申告は不要だ。
ワンストップ特例を利用すると、翌年の住民税が減額され、寄付金額の返金が行われる。
■確定申告をする
e-TAXによる電子申告をする場合には、「寄付金控除」の項目で寄付先の自治体と金額を入力すればOKだ。
書類による申告の場合は、寄付後に送付される寄付金証明書を添付して、確定申告書Aに寄付金控除の欄にふるさと納税の寄付金額全額を記入する。
確定申告の場合、申告後に寄付金額のうち所得税分が直接還付され、住民税の分は翌年住民税の支払額が減ることで寄付金額の返金を受けられる。
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ふるさと納税は、年金生活者にとっても、翌年の所得税や住民税を安くできるお得な制度であり、普段は出会えない地元の特産品などを実質2000円で楽しむこともできる。まずは、ふるさと納税のサイトを活用し、寄付の上限金額を確かめてみよう。
文/大堀貴子さん
ファイナンシャルプランナー おおほりFP事務所代表。夫の海外赴任を機に大手証券会社を退職し、タイで2児を出産。帰国後3人目を出産し、現在ファイナンシャルプランナーとして活動。子育てや暮らし、介護などお金の悩みをテーマに多くのメディアで執筆している。
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