健康

なんとなく眠い…日中の眠気に隠れた3つの注意すべき症状|睡眠の専門家が解説

 しっかり寝ているつもりなのに、なんとなくいつも眠い…。日中に眠気を感じる人は、なんらかの理由で睡眠不足になっているかも?米スタンフォード大学医学部精神科教授・西野精治さんら睡眠の専門家に解説いただいた。

なんとなく眠い…に隠された気になる症状とは?

 全国的に暖かい日が続いた。過ごしやすい陽気に、ついウトウトしてしまうことが増えた人も多いだろう。暖かくなると眠くなるのは自然の摂理だ。

 雨晴(あまはらし)クリニック副院長で睡眠専門医の坪田聡さんが言う。

「人間の睡眠時間は、日照時間に影響されます。昼が長い夏の睡眠時間は短く、夜が長い冬の睡眠時間は長い。春は、まだ体が冬の長い睡眠時間に慣れているのに、日が昇るのが早くなって、日照時間も延びる。その変化に体が追いつけず、日中も眠くなるのです。寒いと体が緊張しますが、暖かくなると心身がリラックスして副交感神経が活発に働き、寝つきやすくなることも影響しているでしょう」

 とはいえ、本来、人間は年を取るほど活動量が減り、睡眠時間は短くなっていくもの。あまりにも眠いなら、重大な病気が隠れている可能性がある。

「“平日は6時間くらいしか寝ていないのに、休日は10時間以上寝る”など、平日と休日の睡眠時間の差が2時間以上ある人は、なんらかの理由で慢性的な睡眠不足になっています」(坪田さん)

1.鼻づまり・口呼吸は寝ても疲れが取れない

 日本医科大学耳鼻咽喉科学講座教授で医師の大久保公裕さんは「花粉症だと、無意識のうちに日中の眠気を招いている可能性がある」と指摘する。その1つが、抗ヒスタミン系の花粉症薬だ。副作用で強い眠気が出やすいため、日中の服用は避けたい。

「古いタイプの抗ヒスタミン薬は、その副作用の仕組みが睡眠導入剤に利用されるほど強い眠気が出ます。日中は服用せずに夜寝る前にのむようにした方がいい。病院で処方されたものか、市販薬なら“眠くなりにくい”とうたっている新しい『第二世代』の抗ヒスタミン薬か、抗ロイコトリエン薬を選ぶようにしましょう」(大久保さん・以下同)

 それ以上に危険なのが、鼻づまりの症状だ。

「夜になると、昼の間に吸い込んだ花粉に対して、『好酸球』という特殊な白血球が増えます。好酸球が増えると炎症によって鼻の粘膜が厚く腫れ、鼻づまりが起こります。鼻づまりは、昼よりも夜の方が起こりやすいのです。人間は本来、鼻で呼吸すべきですが、寝ている間に鼻がつまることで、強制的に口呼吸することになる」

 鼻呼吸であれば、吸い込んだ空気は鼻の粘膜で温められてから体の中に入ってくるが、口呼吸だと、体温より冷たく乾燥した空気をそのまま吸い込むことになり、それがのどや肺への刺激になる。

「この刺激で、無意識にせき込むなど、眠っているつもりでも、脳は覚醒してしまう。また、刺激によって血流が速くなり、血圧が上がることもあります。睡眠中は、全身のすべての機能が必要最低限しか働かず、そのおかげで体や脳を休めることができている。しかし、鼻がつまっていると、脳は休めず、必要以上の血液が流れるので、寝ているようで、全く疲れが取れないのです」

 鼻づまりの有無にかかわらず、口呼吸がクセになっていると、睡眠中に呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群を招く。「体格のいい中年男性の病気」というイメージがあるが、女性や子供、やせている人でも発症する。共通点は、のどが狭いことだ。

「太っている人は、首の肉がのどを圧迫している一方、スリムな人はあごが小さすぎて、のども狭いことが多い。のどが狭いと、眠っている間に空気を吸いづらくなり、無呼吸状態になりやすい。ひどいときは、1分間以上呼吸していないこともあります」

 無呼吸状態に本人は気づいていないので、鼻づまりと同様、しっかり寝ているつもりでも、実際は睡眠が足りていない。

 米スタンフォード大学医学部精神科教授で、睡眠・生体リズム研究所所長の西野精治さんは「子供の頃から口呼吸がクセになっている人は、大人になってから睡眠時無呼吸症候群になりやすい」と指摘する。

「寝ているときも口を開けているクセがつくと、舌根が下がって気道が狭くなります。中等度以上の睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、8~9年間でその4割くらいが亡くなることがわかっています」

2.閉経後の日中の眠気は睡眠時無呼吸症候群かも?

 西野さんによれば、日本では女性の100人に2人が中程度以上の睡眠時無呼吸症候群だという。特に、閉経を迎えてから発症する人が多い。

「40代までの発症者数は、男性が女性の3~5倍にもなります。しかし、50才を過ぎると、男女の割合は1:1になる。若い頃はいびきすらかかなかったという人も、閉経後に日中の眠気に悩まされているようなら、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります」(坪田さん・以下同)

 睡眠時無呼吸症候群の治療には、鼻に器具を着けて強制的に鼻呼吸を促す「CPAP(シーパップ)」や、口にマウスピースをつける方法などがある。

「CPAPは重症の場合に使うもので、つけたその日から劇的に睡眠の質が向上し、睡眠不足も次第に解消されていきます。症状が軽ければ、市販のいびき防止用テープを口に貼るだけでも改善します。いろいろな方法がありますが、太っているのであれば減量が第一です」

3.女性に多い”むずむず脚症候群”

 睡眠の質を著しく下げ、日中の眠気につながる病気の1つに「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」がある。夕方から夜にかけて脚に不快感が出てきて、脚を動かしたりもんだりすると治まるが、すぐにまた症状が出て眠れなくなる病気だ。

「なかには、単なる冷え症だと思い込んでいる人もいて、無意識のうちに眠りが浅くなっていることも多い。鉄欠乏性貧血が原因の1つなので、女性に多く、年を重ねるほど発症しやすくなる。鉄分を摂取するとほとんどの場合改善します」

「かゆい」「虫が這っているよう」「そわそわする」「くすぐったい」「熱い」「冷たい」など、感じ方は人によってさまざま。ひどいときは「脚を切り落としたくなるほど不快でイライラする」という人すらいる、やっかいな病気だ。

「カフェインやアルコールを摂取すると症状がひどくなることがある。重症の場合は、極度の不眠や強いストレスから不安神経症やうつ病、パニック障害などにつながる恐れもあります」(西野さん)

眠気に隠された危険な病【まとめ】

※取材をもとに本誌作成

口呼吸による鼻づまり・花粉症

 口呼吸によって、冷たく乾燥した空気が直接肺に入ることが刺激になり、眠っているつもりでも脳が覚醒してしまう。入浴で花粉を落とし、鼻炎の治療を受けること。眠くなりやすい抗ヒスタミン系の花粉症薬をあえてのむことも。花粉の飛散時期が終わればほとんどの場合改善する。

睡眠時無呼吸症候群

 あごが小さい人や太っている人、また花粉症などで口呼吸になっていると、睡眠中に舌が気道を塞ぎ、呼吸が止まったり、低呼吸になったりする。専門医の診療を受け、就寝中に鼻から空気を送り込む器具「CPAP」をつけると劇的に改善する。軽症なら、マウスピースや市販の「いびき防止用テープ」なども有効。太っているなら減量が第一。

むずむず脚症候群

 夕方から夜にかけて、脚に不快感が表れ、そのせいでよく眠れなくなる。症状の感じ方は人によってさまざまだが、鉄欠乏性貧血が一因といわれており、鉄剤の服用で改善することが多い。人によっては「脚を切り落としたいほど不快」な場合も。有効な治療薬があるので、重症なら睡眠外来の受診を。

うつ病

 うつ病患者の9割が不眠だが、1割は過眠になる。普段から不眠の人は発症リスクが高い。

甲状腺機能低下症

 甲状腺ホルモンが減少して、日中でも元気が出なくなる。ホルモン剤治療で改善するが、早期発見・治療が重要。

教えてくれた人

雨晴(あまはらし)クリニック副院長で睡眠専門医・坪田聡さん、米スタンフォード大学医学部精神科教授、睡眠・生体リズム研究所所長・西野精治さん

※女性セブン2021年4月22日号
https://josei7.com/

●快眠!シニアのマットレス選び3つの条件|体圧分散、高反発、あと1つは?【睡眠コンサルタント監修】

●良い睡眠をとるための9つのコツ|寝付きがいい人は実は超寝不足だった!15分で深くグッスリ超熟睡完全マニュアル

●「寝不足脳」が健康を脅かす|睡眠時間6時間未満は認知症や糖尿病リスクが激増。正しい睡眠とは

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