猫が母になつきません 第234話「しめだされる」
とにかく面倒です、鍵。母はやたらと鍵をかけ、やたらと鍵を失くすので毎日のようにトラブル。以前は家の中で鍵がかかる部屋はトイレくらいだったと記憶していますが、母は一人で暮らしている間に家中のドアというドアに鍵をつけました。いちど鍵付きのドアにしてしまうと、鍵だけをはずすというわけにいかずそのままにしています。私の部屋から台所やお風呂があるスペースに入るドアの鍵は室内扉によくついているドアノブの真ん中にボタンがついているタイプで、押すだけでかかってしまいます。母には鍵をかけないよう日頃からしつこく言っていますが、やっぱりかけます。私がその鍵を持ってさえいれば開けられるのですが、肝心の鍵はずっと前から行方不明。内側からしか開けることはできないのです。「なんでかけたの?」と聞くと母は必ず「かけたかしら?」と答えます。正直最近、母が本当に覚えていないのか、とぼけて嘘をついているのかわからなくなってきました。ずっともの盗られ妄想にとらわれている母は常に私を疑っていて、家中の鍵をかけたくなるのは私がいるから。私が怒ると覚えていないとごまかしているようにも思えます。疑心暗鬼。母の疑いの心が私にも伝染してきているようです。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。