親が認知症かも…まずどこに相談?どのように受診させる?|手続き、流れを解説
認知症は、あなたの親も、家族も決して無縁ではない。家族が認知症になると、介護する側の負担も重い。「あれ?」という違和感を感じたときに何をすべきか、専門家の取材した。
→認知症かな?と思ったら…家族が早期発見する10のチェックポイント
まずは、かかりつけ医に相談
親に認知症の疑いが出てきたらどこに相談すればいいのか。介護評論家の佐藤恒伯氏が解説する。
「かかりつけ医のいる方は、まずそこに相談しましょう。医師の診断で認知症である疑いがあれば、専門医を紹介してくれるはずです」
地域包括支援センターが頼りになる
かかりつけ医のいない場合は、認知症や介護保険サービスなどにワンストップで対応する「地域包括支援センター」が頼りになる。
「中学校区程度の範囲にひとつずつ、地域包括支援センターはあります。ただ、自治体によっては『いきいきプラザ』などの名称だったりと分かりにくいこともあります。役所の高齢福祉課などに問い合わせるといいでしょう」(前出・佐藤氏)
→地域包括支援センターとは?役割と利用方法【介護の基礎知識】公的制度<5>
また、「公益社団法人・認知症の人と家族の会」などの無料の電話相談窓口でも適切な情報をもらえる。
※公益社団法人・認知症の人と家族の会(https://www.alzheimer.or.jp/)
親を受診させるためにはどうする?
その後は「物忘れ外来」などの認知症専門医につなげ、検査を受けることが肝心だが“自分が認知症である”と認めたくない人は多く、うまくいくとは限らない。そういう時は、どのようにして病院に連れて行けばいいのか。
介護アドバイザーの横井孝治氏が指摘する。
他の親族に『自分の認知症が心配だから病院についてきて』とひと芝居打ってもらう
「男性は特に、認知症の疑いがあるから検査に行ってほしいと伝えても素直に従いません。奥さんや友人、兄弟などにひと芝居打ってもらい、『自分の認知症が心配だから病院についてきて』とお願いする。すると『自分が大切にしている人のお願いなら』と、割と高確率で同行してくれます。
私も、父の友人に頼んで、この方法で父に検査を受けてもらいました。その際に医療機関にも連絡をしておきましょう」
受診する際は、日頃の様子を箇条書きにして持参する
専門医の検査を受ける際には、日頃の本人の様子を箇条書きにしたものを持参する。
「朝食べたものが思い出せないとか、孫の名前を忘れるとか、そうしたメモを本人に知られないようにそっと医師に渡す。検査がよりスムーズに、より正確になります」(前出・横井氏)
検査で認知症なのかMCIの状態か、それとも単に加齢による物忘れなのか、状況が分かる。それによって対処方法も見えてくる。
→MCI(軽度認知障害)って?認知症予備軍の早期発見チェックリスト
「場合によっては介護保険サービスが必要になるかもしれません。サービスを受けるためには要介護認定の申請が必要です。病院にいる医療ソーシャルワーカーや地域包括支援センターなどに相談すれば手続きを進める手伝いをしてくれます」(前出・横井氏)
→「要介護認定」のコツ|ケアマネは絶対教えてくれない【裏ワザ】
介護認定を受けたら、ケアマネージャーを決定し、費用負担を考慮しながら在宅か施設かといった介護方針を決める。
→初めての介護|ケアマネジャーってどのような存在?【プロが教える在宅介護のヒント】
家族の異変に気付いた時の手続きの流れ【まとめ】
こうした相談の流れを整理したのが以下の図だ。
介護とお金は切っても切れない。ところが認知症であることが金融機関に伝わると、口座が凍結され、家族であっても容易に引き出せなくなる。
→認知症が疑われ「銀行口座が凍結」すると本人も子供も引き出せない
「あらかじめ金融機関で『代理人カード』を作っておく方法があります。金融機関が、代理人が使えるキャッシュカードを発行してくれます。これがあれば万が一、親が認知症になっても家族の負担を減らせます。しかし、お金は家族間でも繊細な事項。普段から信頼関係を作ることが重要です」(前出・横井氏)
家族が認知症になっても、少しでも負担は減らしたい。そのためには、早期に異変を察知し、正しく対処することが何より肝心だ。
教えてくれた人
横井孝治氏/介護アドバイザー。介護情報サイト「親ケア.com」を運営する株式会社コミュニケーター代表取締役社長。
佐藤恒伯氏/介護評論家。
※初出/週刊ポスト2020年10月30日号