暮らし

認知症かな?と思ったら…家族が早期発見する10のチェックポイント

 認知症は、2025年には700万人前後に達するといわれる新たな“国民病”だ。あなたの家族も決して無縁ではいられなくなる。重要なのは、なるべく早く“異変”を感じ取ることだ。

家族が早く兆候に気づくことが大切!

「早期の認知症は分かりにくいのですが、早くに兆候に気が付くことができれば、より適切な対処が可能になります」

 と言うのは、介護アドバイザーの横井孝治氏。

 家族が認知症になると、介護する側の負担も重い。「あれ?」という違和感を感じた時にまず何をすべきか見ていく。

違和感があっても気づけなかった事例

「同居する80代の父親が『ちょっと車で行ってくる』と言ったきり、1日経っても帰ってこないことがありました。自宅から100kmも離れた山道を徘徊しているところを警察に保護され、翌日迎えに行きました。たまに道に迷うことがあったのですが、親の認知症にもっと早く気付いていれば……」と、語るのは千葉県在住の60代男性だ。

 80歳を過ぎてもハンドルを握っていた父親は、たまに道に迷うことはあったが運転技術は衰えておらず「あれ?」と違和感を覚えることはあっても、進行していた認知症に気付けなかったという。

「同様のケースは少なくありません」と言うのは、介護評論家の佐藤恒伯氏。

「認知症は“早期発見・早期治療”が重要です。火の不始末でボヤ騒ぎを起こす、出かけた先で迷子になり他人に迷惑をかける、ゴミの分別ができずに近隣とトラブルを起こすなどが典型ですが、実害が出てからでは遅い。

 私が相談を受けたケースでは、70代の父親が軽度認知症で息子の嫁の風呂を覗くようになったというものがありました。昼間、息子が仕事に出ると嫁と父親が残される。事故につながることも考えられたので、まずは別居を勧めました」

 早い段階で適切に対処すれば発症を遅らせることも可能だ。

「認知症の早期はパッと見は分からないが、どこかで感情の抑えが利かなくなったりする。この段階では本人が隠すので、発覚が遅れてしまう。家族が違和感にアンテナを張ることが大切です」(前出・佐藤氏)

家族が見るべき「チェックポイント」

 異変を感じた家族が、「検査を受けてほしい」と本人に勧めたところ、「俺は大丈夫だ」とはねつけられてしまった―。認知症については、そうした事例もよく耳にする。

 前出・横井氏が語る。

「家族だからこそ言いにくい、という場合もあるでしょう。そうした場合に便利なのが、周りの人たちができる10項目のチェックです。合計14点以上なら、認知症の疑いが強い」

10項目のチェックポイント

※採点方法:ほとんどない=0点、時々ある=1点、頻繁にある=2点

□同じ話を無意識にに繰り返す…点
□知っている人の名前が思い出せない…点
□物のしまい場所を忘れる…点
□漢字を忘れるようになった…点
□今しようとしていることを忘れる…点
□家電などの説明書を読むのを面倒くさがる…点
□理由もないのに気がふさぐ…点
□身だしなみに無関心になった…点
□外出をおっくうがるようになった…点
□財布などの物が見当たらないことを他人のせいにするようになった…点

採点結果:0~8点=正常、9~13点=要注意、14~20点=専門医などの診断が必要

日常の異変に気づくためには?

 前出の佐藤氏は、日常生活の中でのちょっとした“異変”に気を付けるようアドバイスする。

「まずは会話の辻褄に注意。喋りはじめと結論がずれるといったことが増えてくる。毎日顔を合わせている家族だからこそ分かることですね。

 離れて暮らしている場合、冷蔵庫に同じ商品が増えていたら要注意。卵とか納豆が食べきれないほど詰まっているというのはMCI(軽度認知障害)や認知症の人の特徴。ケアマネジャーの中には『まず冷蔵庫を確認する』と言う人もいます。

→MCI(軽度認知障害)とは?発見方法と予防策を識者が解説

 部屋やトイレの汚れにも現れます。意欲、やる気が相対的に低下し、片付けが億劫になる。また“匂い”に鈍感になり、トイレの汚れにも気付きにくくなる」

→帰省して発覚!認知症かも…と思ったときの4つの対処法

離れて暮らす老親の異変に気づく方法は?

 離れて暮らす老親の変化をいち早く察知するため、横井氏が推奨するのが週1回の「1分電話」だ。

「たまに電話して『元気?』と聞くのは、実は逆効果。子供に心配をかけまいとして、『元気だよ』と答えるでしょう」

 質問をする際、「本人の答えを聞き出すことが大切」だと、横井氏が続ける。

前に飼っていた犬の名前を聞いてみる

「YES・NOで答えられる質問はMCIが進んできても対応できます。そうではなく、身の回りの出来事を聞き出すように少し踏み込んだ会話をする。昔飼っていたペットについて『あの犬の名前、何だっけ?』と答えを促すのも効果的です。

 また、『あのテレビ面白かったね』など、普通の日常会話を重ねることも大切です。わずかな変化にも気付きやすくなるし、定期的な会話で家族としての絆も芽生え、お金のことなど、センシティブな話題にも入っていきやすくなります」

教えてくれた人

横井孝治氏/介護アドバイザー。介護情報サイト「親ケア.com」を運営する株式会社コミュニケーター代表取締役社長。

佐藤恒伯氏/介護評論家。

※週刊ポスト2020年10月30日号

●ひとり暮らしの認知症の母が準備した朝食が切なすぎた話

●兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし「第57回 誰かに救ってほしい…」

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