コンビニより多い歯科医院!正しい歯医者の選び方を徹底解説|こんな歯医者は危ない…チェックリスト付き
「子供の頃から、歯医者さんはなんとなく苦手」という人は多いはずだ。でも、それは、本当にいい歯科医に出会えていないだけ。歯科医院だけは、「安いから」「人気だから」で選んではいけない。“痛くても、高くても通いたくなる、最高の歯科医”に出会うことができれば、虫歯知らず、入れ歯知らずだ。
歯科医院大国・日本! その数コンビニ店以上の店舗数!!
長いマスク生活が続き、それまで気づかなかった口臭などが気になりだすなど、口腔衛生に関心を持つようになる人が増えているという。これまでは歯科医院から足が遠のいていたものの、再び通いはじめたという人もいることだろう。
実は、日本は歯科医院大国。昨年時点の歯科診療所の数は全国で約6万8500軒にものぼる。これは、約6万軒のコンビニエンスストアを上回る軒数だ。
生き残るために必要のない治療をすすめる歯科医も…
医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。
「これほどの軒数になると、多くの歯科医は、高額な自由診療で少数の患者を診るか、低単価の保険診療で患者を大量にさばくかして、経営を維持するしかない。より多くの患者を診るために、きちんと患者の話を聞かずに高額な治療を繰り返しているところも少なくありません」
初めて行った歯科医院でなんの説明もなくレントゲンを撮影され、そのまま歯を抜かれたり、“痛みを訴えたら、治療後に神経を抜いたことを知らされた”というケースも珍しくない。日本の歯科医は、こうした質のよくない治療をしなければ生き残れないという現状がある。
『やってはいけない歯科治療』(小学館新書)の著者でジャーナリストの岩澤倫彦さんが言う。
「日本の保険制度は、いわば出来高制です。つまり、虫歯や歯周病などの“治療”を行わなければ、歯科医院の利益が出ないということ。虫歯や歯周病の原因を改善して“予防歯科”を実践しないと再発を繰り返しますが、予防歯科は原則的に保険適用外です。しかも、“予防歯科が普及すると虫歯や歯周病が減って、歯科医院がつぶれる”と本気で考えている歯科医も少なくない」
経営のために必要のない高額な治療をすすめる悪徳歯科医もいるのが現実なのだ。
選んではいけない歯医者とは…チェックリスト
今現に通っている、もしくはこれから通おうとしている歯科医院は下記に当てはまるかチェックしてみよう。
□広告が派手すぎる、露出度が多い
□質問しても詳しい治療方針やデメリット、費用の説明がない
□「絶対に抜くべき」などと決めつける
□インプラントを強くすすめてくる
□無料カウンセリングをしているが継続要請が強引
□衛生観念が低い
□治療前後の比較画像を広告に使用している(医療法で禁止)
□「独自治療」をアピールしている
□スタッフが頻繁に入れ替わる
□インターネットの好評価レビューが同時期に集中している
歯科医が考える本当にいい歯医者の条件
では「本当にいい歯科医」の条件とは何だろうか。はしもと歯科(東京・渋谷区恵比寿)院長の橋本秀樹さんは、
「そもそも、歯を削ったり、削ったところに詰めものをしたり、抜いたりすることは、歯の根本的な治療にはならない」と話す。
橋本さんは、患者にじっくり向き合うために、“患者の自由”を尊重した自由診療で1日に2人の患者しか診察しない方針で治療を行っている。
むやみに歯を削ったり抜いたりしない
「歯の治療とは、“歯を残すこと”にほかなりません。歯を削ると、象牙質が露出するので痛みを感じやすくなったり、歯そのものがダメージを受けてさらに虫歯になりやすくなったりします。
また、人為的に歯を削ったり抜いたりするのは、“体にあるべきものを奪う”ということ。当然ながら、後になってから体が不調を訴えることになります。ブラッシングしているときに自然に髪の毛が抜けても痛くありませんが、健康な髪を引っ張って抜くと痛いのと同じ。まだ体に必要なものなのです」(橋本さん・以下同)
インプラントは治療とはいえない?
近年流行しているインプラントは、むしろ体にとってマイナスになることがある。
「虫歯や歯周病が原因の人為的な抜歯でも、自然に歯が抜けた場合でも、残った歯茎自体は健康。にもかかわらず、そこにインプラントという異物を埋め込むのは治療とはいえません。 さらに、インプラントは神経損傷や上顎洞炎、インプラント周囲炎などの合併症を起こすこともあります。口の中に人工物を入れることは、医学的・生物学的には有害無益なのです」
本当に頼れる歯医者・名医…チェックリスト
通っている歯科医院に当てはまるところはあるか、確認してみよう。
□予約時のスタッフの対応がいい
□待合室が混んでいない
□カウンセリングに時間をかける
□複数の治療法の選択肢、デメリットまで説明する
□患者の希望を聞き、意思を尊重する
□レントゲン、写真などを見せて説明する
□「予防歯科」の指導に熱心
□セカンドオピニオンの希望を快く受け入れる
こんな歯医者は危険…すぐ治療する、高額治療を進める
充分な説明もなくいきなり削ったり抜いたり、インプラントなどの高額な治療をすすめてくる歯科医は、利益重視。避けた方がいい。
橋本さんによれば、そもそも歯科では、“耐えられないほど痛い”というとき以外は、初診当日の緊急の治療は必要ないという。
室井さんも口をそろえる。
「本来なら、検査や治療は患者が説明を受けて、同意をしたうえで行われるものです。レントゲンなども、医療費をかさ増しするためだけに何度も撮って、治療に生かしていない歯科医院も少なくない。“撮ったものを見ながら説明を聞きたい”と言ったときに渋る歯医者は信頼できません。物販が多い歯医者も疑問です。歯ブラシやフロスをしつこくすすめるのは、患者のニーズに無頓着な可能性がある」(室井さん)
自分の口の中がどんな状態で、何のためにどんな治療が必要なのか、診察時にきちんと話してくれなければ、いい歯科医とは言い難い。
歯医者の決め手はカウンセリングの丁寧さ
富沢歯科医院(東京・港区高輪台)院長の富澤直基さんが語る。
「当院では、治療を行う前にカウンセリングを行い、その後は患者さんそれぞれに担当の歯科衛生士がついて、ブラッシングの仕方などを指導して口の中の環境を整えます。病院側も患者側も、時間とお金がかかりますが、歯茎から出血があったり歯石がついている場合、口内環境を正常に整えてから治療に入らないと、結局またどこかが悪化してしまうからです。患者さんと歯科医、歯科衛生士が一緒になって、95才まで歯を健康に保つという目標を立て、それに沿った治療計画を立てます」
同医院の主任歯科衛生士は「初回カウンセリングはお見合いと同じ。時間をかけて納得するまで行う」と話す。
「カウンセリング後は、治療の内容を写真やCGを使ってわかりやすく説明します。そうしたフォローの時間を含めて、1時間はカウンセリングに時間を使います」
治療の際も情報共有を欠かさない。ビデオカメラがついたマイクロスコープで治療の様子を録画して、説明しながら患者に確認してもらう。
「すべて包み隠さず話すことで信頼関係が生まれます。意外かもしれませんが、治療時の痛みにも影響します。歯科医や歯科衛生士との信頼関係と目的意識を持ち、恐怖感がなくなることで、以前より痛みを感じにくくなったという人は多い」(富澤さん)
カウンセリングは歯科医と患者がともに納得するのが最重要ポイント
「カウンセリングは、治療をするかしないか、治療のメリットやデメリット、できることやできないことなどを伝える場。充分な時間を取って真剣に患者さんと向き合い意思決定をする、治療の中で最も大切な過程です。無料で行うなんてことはできないはず。当院では、カウンセリング後すぐに治療せず、納得されたら後日改めて電話で予約を取っていただきます」(橋本さん)
地元の歯科医院で大した説明もなく歯を抜いてインプラントにすると言われたことに不安を感じたある60代の女性は、セカンドオピニオンを求めて他県から橋本さんのもとを訪れた。すると、歯の状態を詳しく診て、「抜く必要はない」と説明してくれただけでなく、地元の歯科医とどこに注意しながらつきあっていけばいいかや、歯科医院同士の連携ができることなども教わることができ、非常に安心できたという。
歯科医と患者がともに納得して、同じゴールを目指した治療を進めていけるかどうかが、歯科医院選びの最重要ポイントといえるだろう。
歯医者のカウンセリングで伝えるべき言葉…チェックリスト
ただただ先生の指示に従うだけではなく、自分の意見もはっきり伝えることも大切。
□「痛くないと聞いたので来ました」(その歯科医を選んだ理由)
□「レントゲンを見ながら説明してほしいです」
□「私の口の中はどんな状態ですか?」
□「私の治療方針はどうなりますか?」
□「削らずに治してほしいです」(希望を伝える)
□「どうしても削らなければいけませんか?」(決めつけないか確かめる)
□「その治療のメリットとデメリットを教えてください」
□「その治療はいくらかかりますか?」
□「その治療はどれくらいの期間で終わりますか?」
人気がある、知名度が高い=“腕がいい”とは限らない
安い、痛くない、院内がきれい…これらは必ずしもいい歯科医院の条件ではない。岩澤さんは「自費出版の本を複数出版している」「広告を大量に出している」人気の歯科医ほど気をつけてほしいと警鐘を鳴らす。
「某有名歯科医院の広告費は、年間約1億円。莫大な広告費を患者から回収しなければいけないので、中には人件費の安い若手の歯科医を使い、治療の質が低いと指摘されているところもあります。自費出版で出した本を自分で買い取って、アマゾンの売上トップにランクインさせている歯科医院もあります。人気の歯科医は、ただ患者集めがうまいだけで、腕がいいとは限らないこともある」(岩澤さん・以下同)
「絶対に抜かない」などの治療方針を声高に宣言している歯科医にも気をつけた方がいい。
「“決めつけ”の治療をする歯科医は要注意。“絶対に抜かない”というキーワードを、患者集めに利用しているケースもあるからです。診察時に“もう抜くしか方法はありません”と決めつけて不必要な抜歯をしようとするのも悪質ですが、症状によってはどうしても抜歯が必要なケースもある。最初から“抜かない” “抜くしかない”などと決めつけるのは、いずれもいい歯科医とはいえません」
信頼できる歯医者は患者の希望に寄り添う
どの歯がどう痛いのか、どんな治療を求めているのか。歯を残したい、麻酔は使いたくない…など患者の状態を丁寧に把握し、しっかり希望を聞いてくれるのがベストだ。
「治療の選択肢を複数提示して、説明して、歯科医としての見解を伝える。そのうえで患者の選択を尊重する姿勢が重要です」
加えて、レントゲンや口腔写真などで患者と病状や治療方針を共有し、治療の目的、内容、金額などを聞ける歯科医なら安心だ。
東北地方にある某歯科診療所は、世界的にも「名医」として注目されている。通い続けている患者は90才を過ぎても永久歯が28本、ほとんどの子供たちが1本も虫歯をつくらず大人になるという。
ここでは予防歯科を徹底しており、初診は必ずレントゲンと12枚の写真撮影とカウンセリングのみ。治療が終わった後も3か月に1度、歯科衛生士によるメンテナンスが必要で、1か月に約1万6000円もかかる。それなのに患者が集まるのは、実績があるだけでなく、綿密なカウンセリングで、治療内容に納得できるからだろう。
「予防は歯科衛生士、治療は歯科医師、と専門が分かれている歯科医院は信頼できます。予防のプロである歯科衛生士が、デンタルフロスや歯間ブラシの使い方を丁寧に見せて教えてくれること。清掃状態や歯周ポケットをきちんとチェックしてくれるのが基本です」
前出の富澤直基さんも、この歯科診療所の門を叩き、研修を受けたそうだ。
予約は電話で。診察室で良し悪しがわかる
本当にいい歯科医院かどうかは、ある程度なら、受診前にチェックすることができる。最近ではネットで予約できる歯科医院も増えているが、室井さんは「最初の予約は必ず電話で」とアドバイスする。
「電話口で“歯が痛いのを治してほしいが、抜きたくない”などと、受付の人に自分の希望を伝えてみてください。歯科医の考えや方針は受付にも伝わっているものなので、親身になって聞いてくれない不親切な病院だと、治療が始まっても納得できないことが多い」(室井さん)
「待合室が混んでいないか」も、大切な判断材料だ。岩澤さんと室井さんは「予約制で時間枠を決めて患者を診ているところは、いい病院である可能性が高い」と口をそろえる。
「質の高い歯科医院は予約制で、1回の診療時間は30分~1時間。診察用の椅子がズラリと並んでいて、歯科医が同時に患者さんを何人も診るスタイルは、おすすめできません。同じ手袋のままほかの人を診ている可能性が高く、感染予防の面でも問題です。1人の患者に集中していない歯科医には期待しない方がいいでしょう」(岩澤さん)
受診する側の心がけも忘れないようにしたい。「よくわからないけれど、先生になんとかしてもらおう」という姿勢では、納得のいく治療は受けられない。
「歯科医とは対等な立場だと考えるべきです。何に困っているのか、どうしてほしいのか、してほしくないことは何か、最初にしっかり伝えるようにしましょう。その意見を受け止めて、一緒にゴールを目指そうとしてくれるのがいい歯科医です」(室井さん)
歯は一生もの。人任せにはせず、自分と歯科医と衛生士の“三人四脚”で守っていこう。
教えてくれた人
室井一辰さん/医療経済ジャーナリスト、岩澤倫彦さん/ジャーナリスト、橋本秀樹さん/はしもと歯科・院長、富澤直基さん/富沢歯科医院・院長
※女性セブン2020年10月29日号
https://josei7.com/