訪問介護員(ホームヘルパー)とのかかわり方、上手な頼み方|訪問看護師がアドバイス
親が自分で生活できなくなってきて、公的介護保険制度を利用した支援を受けるには、まず要介護認定を受け、介護度が出るとそれに沿ってケアプランを組んでもらうという手順が必要だ。ケアプランでようやく訪問介護サービスを受けることが決まり、ホームヘルパー(訪問介護員、以下ヘルパー)に入ってもらうことになったものの、親が拒絶したり、何をどう頼めばいいかわからなかったり、必要以上に気をつかったり、スムーズにいかない場合も少なくない。
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看護師として700人以上を看取ったのち、今は訪問看護の仕事をしている宮子あずささんは、ヘルパーと接することも多い。自身が親の介護でヘルパーに依頼した経験も交えて、ヘルパーとのかかわり方についてアドバイスしてもらった。
ヘルパーの役割とは?ヘルパーの主な仕事は?
要介護認定を受けたあとは、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)とどんな介護サービスを受けることになるか相談することになります。内容や頻度についてケアマネが作成したケアプランに従って、ヘルパーの支援が始まります。
公的介護保険で受けられるサービスはいろいろありますが、介護を受ける側が、実際に接することが多い介護サービスのは、ヘルパーでしょう。ヘルパーの主な仕事とされているのは、以下の「身体介護」と「生活援助」です。
1.身体介護
排せつや着替え、食事や入浴などの介助を行います。
2.生活援助
洗濯、掃除、買い物、調理などの家事援助や、薬の受け取りなど、身体に直接触れない範囲内での身の回りのお世話です。
親がヘルパーに入ってもらいたがらない場合はどうするか
子どもの側では、ヘルパーに入ってもらうのを歓迎しても、他人を家に入れることをいやがる高齢者も少なくありません。
そういう場合、ケアマネとも相談して、抵抗感が少なくやってもらえること、買い物などから頼むのがいいかもしれません。それほど家の中にコミットせずに、やり始めてもらえるからです。
逆に料理を作ってもらうのは、やり方が気に食わなくて、とかく文句のもとになったりします。それなら食事は宅配にして、ヘルパーには買い物や掃除から頼んだほうがいいわけです。
生活援助を受けてできないことをヘルパーにやってもらうことで、生活が成り立つので、うまくヘルパーに入ってもらうようにするといいでしょう。
ヘルパーにうまく機能してもらうためには準備が必要
私も、まれに訪問看護で行った先の家で、簡単な料理を作ることになることがあります。おそばをゆでようとして、どのお鍋を使ったらいいかわからなかったりすることも多いのです。菜箸やおたまがみつからなかったりもします。
訪問先の家に入る立場から見ると、ヘルパーがうまく機能するためには、家事を手伝ってもらいやすい家にしておくということも必要になってくると思います。一人暮らしの親の家にヘルパーが入るなら、家族が初めの段階にかかわっておいたほうがいい場合が多いでしょう。
●掃除用具はわかるようにそろえる
親の家はものであふれていて、何がどこにあるかわからないということが少なくありません。
ある程度、掃除がしやすい環境にして、掃除用具もわかるようにそろえて、これを使ってくださいと言って頼めるといいでしょう。
●洗濯にも初期設定が必要
洗濯も準備をしたほうがいい場合があります。介護が必要な段階になると、若いころはきちんと暮らしていた人でも、着たのか着ていないのかわからないものが積んであるということがあります。習慣的に、あまり衣類を洗わなくなっていたりもします。
汚れ物はどこに置いてあって、どの洗剤を使ってどこに干すのか。洗濯ばさみや洗濯物干しなどもそろえて、依頼できるといいでしょう。
ヘルパーが入って、家の外に干してもらっても、帰ったあと高齢者が取り込めない場合もあるので、可能なら部屋干しができるようにしておくのがおすすめです。
●ゴキブリやねずみの出る家は対応に困る
ヘルパーがいちばん対応に困るのは、ゴキブリやねずみが出る家です。掃除をしたらゴキブリがぞろぞろ出てくるのではたまりません。それが理由で、夏の間はヘルパーに来てもらえない家というのもありました。ヘルパーが入る前に、できるかぎり駆除をしておくといいでしょう。ゴキブリでしたら、市販のゴキブリ駆除剤を置いておくだけで、かなり出なくなります。
ヘルパーにちゃんと機能してもらうためには、戦意喪失させる家にしないことが必要です。
ヘルパーにお願いする内容を迷ったら
大概の家庭では、家族以外の人に家に入って手伝ってもらった経験が少ないので、ヘルパーに何をどう頼んだらいいのか、何は頼んでもだめなのか、というのも迷うかもしれません。
まず「できるのかどうか尋ねてみる」というのがいいでしょう。これは、前にケアマネとのつきあい方についてお話したのと同じです。
ヘルパーとうまくいかなかったら
親がヘルパーについて文句を言うことは、少なくありません。
支援を受けたくないと思っている場合、特にヘルパーへの評価が厳しくなります。自分のほうがヘルパーよりできるのだと言いたい心理がはたらくわけです。料理の味付けが濃すぎるとか、雑巾の干し方が嫌だとか、おしゃべりばかりしているとか、文句が出ることは様々です。
ヘルパーへの文句をぶつけられる子どもの側は、親にそういう心理があることをふまえて、鵜呑みにしないで聞いておくといいでしょう。
●ケアマネやヘルパーの事業所と相談して対策を
「そんなことを言わないで」と親の文句を封じて、ヘルパーとうまくやってもらいたいところですが、年を取った親のほうに変わってもらうのはなかなか難しいのです。ヘルパーの側と相談していくことが問題解決の早道だったりします。
親からヘルパーへの悪口が出たら、苦情の報告ではなく情報提供をしておくといいのです。「親がこんなことを言っちゃっているけど、どうしたらいいでしょうね」という情報の共有です。そこから、相談して対策を立てていくことになります。
こうしたやり取りは、支援全体の指揮をする立場であるケアマネとするのが通常です。しかし、ケースによっては、ヘルパーの所属する事業所と直接やり取りしてくださいといわれることもあります。初めにどういうルートでやり取りをするか、確認しておくといいでしょう。
ヘルパーとのかかわり方のまとめ
●親がヘルパーに入ってもらいたがらない場合は、買い物などから始めてみる
●ヘルパーが掃除しやすい環境にする。掃除用具もそろえる
●洗濯は、汚れ物の置き場、洗剤、干すための用具などをそろえる
●ゴキブリやねずみが出ないようにする
●これは頼んでいいのか迷ったら、尋ねてみる
●親からヘルパーへの文句が出たら鵜呑みにしないで聞く
●親のほうに変わってもらうのは難しいので、ケアマネやヘルパーの事業所と相談する
今回の宮子あずさのひとこと
●飛び散っている猫砂の片付けをしてくれた母のヘルパーさん
亡くなった私の母が、ヘルパーさんにお世話になっているとき、「猫のトイレ」という問題がありました。
ヘルパーの仕事の「生活援助」はあくまで本人のための介助。部屋の床や、人間が使うトイレの掃除ならやってもらえても、猫のトイレは仕事外なのです。
最初の打ち合わせのときに「猫のトイレの掃除まではできないんです」言われました。
それは当然です。ところが、猫がトイレの外の母の居住スペースに砂を飛ばしてしまうのです。結論から言うと、我が家に来てくれていたヘルパーさんは、飛び散った猫砂を片付けてくれて、私は大変ありがたく思いました。
●グレーゾーンの仕事をしてくれたときには
ヘルパーさんが猫砂を片付けてくれたのには、彼女なりの判断があったはずです。
我が家がちゃんとしていたとかいうことではありません。猫砂を片付けるのがヘルパー本来の仕事ではないのにやってもらっていることをわかっているということと、それをやってもらったからと言って他の用事もどんどん頼んでしまうというわけではないということを、わかってもらっていたことがポイントだったと思います。
●どこまでが契約した内容なのかはっきり言えない部分が出てくる
介護保険で支援に入るヘルパーは、契約した本来の仕事だけをするのが原則です。有償の家事代行サービスには、決まった時間内で頼みたいことをいろいろと頼んでいいのと、そこが違うわけです。
しかし、実際に高齢者の介護となると、どこまでが契約した内容なのか、はっきりとは言えない部分が出てきてしまいます。
ヘルパーと利用者。どちらも気持ちいい関係でいたほうが、介護がうまくいくのはもちろんのことです。利用者と家族は、もしヘルパーがグレーゾーンのことをやってくれたとしたら、「これはやってもらえるものなのだ」と思わずに「そこまでしてくれて、ありがとう」という気持ちを持つのがいいと思います。
教えてくれた人
宮子あずさ(みやこあずさ)さん/
1963年東京生まれ。東京育ち。看護師/随筆家。明治大学文学部中退。東京厚生年金看護専門学校卒業。東京女子医科大学大学院博士後期課程修了。1987年から2009年まで東京厚生年金病院に勤務。内科、精神科、緩和ケアなどを担当し、700人以上を看取る。看護師長を7年間つとめた。現在は、精神科病院で訪問看護に従事しながら、大学非常勤講師、執筆活動をおこなっている。『老親の看かた、私の老い方』(集英社文庫)など、著書多数。母は評論家・作家の吉武輝子。高校の同級生だった夫と、猫と暮らしている。
構成・文/新田由紀子