つらい肩の痛み、自宅で治せます|名医が編み出した奇跡の体操
不要不急の外出自粛や在宅勤務などの新型コロナウイルス感染症対策で、ほぼ一日、自宅で過ごすため、座っている時間も増え、運動不足となり、さまざまな関節の不調を訴える人が増えている。
特に肩の痛みはつらいもの。突然起こり、ちょっとした動作ができなくなることも多く、毎日の生活にまで影響を及ぼすことになる。そこで、6万人の関節痛を治した名医がその痛みの原因を開設。肩の痛みを改善するために編み出した、奇跡の体操も伝授します。
痛みを予防し、症状を深刻化させないために、自分ですぐにできる体操を、あなたもやってみませんか?
五十肩を「年のせい」と放ってはいけない!
肩に強い痛みがあり、腕が上がらないなどの症状を伴う「五十肩」。自然に治ることもあるが、積極的に動かした方が回復は早い。では、どう動かせばいいのか、見ていこう。
40~50代に多くみられる「五十肩」。ある日突然、肩に激痛が走るイメージが強いが、
「実は徐々に進行して発症する病気で、医学的には肩関節周囲炎といいます。前兆として、肩の違和感やしびれなどがありますが、高い所のものを取ろうとするなど、肩を大きく動かしたときに気がつく人が多いですね」
そう話すのは、お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック院長の銅冶英雄さん。
「腕と胴体をつなぐ肩関節は、加齢によって徐々に弱くなり、少しの刺激でも損傷や炎症が起きやすくなります。この炎症の影響で五十肩は発症します。レントゲン検査やMRIでは異常が見つからないことも多く、はっきりした原因は不明で、老化現象の1つと考えられています」(銅治さん・以下同)。
その症状の経過は次の通り。
【炎症期】
発症から2週間ほどは、肩や腕を動かすと激痛に悩まされ、就寝時にも痛むことがある。この時期は、できるだけ肩を動かさないよう安静にすることが重要。薬や注射などで痛みを和らげるのも有効だ。
【慢性(拘縮)期】
その後の6か月ほどは、強い痛みは治まるものの、そのまま動かさないでいると、肩のまわりの組織が硬くなり、肩を動かしにくくなる。動かそうとすると痛みが伴うが、硬くなった関節をほぐすためにも、可動域を広げるよう積極的に動かすと回復が早くなる。ただし、無理しない程度で動かそう。
【回復期】
徐々に痛みが軽くなり、肩の可動域が広がる。発症からここまでで約1年かかるといわれている。
痛みの改善に必要な3ステップ
五十肩によく似た症状が表れても、肩の腱板にカルシウムが沈着する「石灰性腱炎」や、肩の腱が切れる「腱板断裂」があるほか、さまざまな原因による肩痛も考えられるため、痛みが3日以上続く場合は、整形外科を受診しよう。
「安静にしていても痛い場合を除き、肩の痛みは動かしてこそ治ります。そもそも、骨や関節は、体を動かすための運動器。適切に動かすことで、本来の動きを取り戻し、痛みも取れるのです」
リハビリ専門医である銅冶さんが考える、痛みの改善に必要なのは、以下の3つのステップだ。
【1】痛む関節を動かしてみて、どう動かすと痛みが改善するかを確認する。
【2】痛みのタイプに合った体操を、改善効果を確認しながら毎日行う。
【3】痛みを解消し、正しい姿勢と動作をとり戻し、根本から関節痛を治す。
これを自分ひとりで判断し、自宅でも実行できるようにと開発されたのが「痛みナビ&改善体操」だ。その具体的な方法を見ていこう。
こんな症状が出たら、すぐに医療機関へ!
体操を始める前に、まずは症状をチェック。あてはまったら、すぐに医療機関を受診しましょう。
●手足が動かしにくい
→手足につながる神経がマヒしている可能性がある
●事故や転倒による肩の痛み
→骨折や脱臼の可能性がある
●発熱を伴う肩の痛み
→感染症の可能性がある
このほか、がん患者の場合、腫瘍の可能性があり、関節リウマチがあれば関節炎を引き起こすかもしれないため、体操を行う前に医師に相談してみよう。五十肩の場合は、強い痛みが治まってきたら始めよう。
肩の痛みナビ&改善体操
肩関節を曲げて伸ばす。この2つの動作を行うことで、自分の痛みに合った改善法がわかる。五十肩はもちろん、肩痛全般におすすめだ。
A.壁伝いに腕を上げる「肩曲げ体操」
腕を上げていくことで肩関節を曲げる動き。壁にはわせて少しずつ動かすことで、筋肉の力を使うことなく関節が曲げられる。まずは10回(1セット)行い、痛みが改善するかをチェックしましょう。少しでもラクになったら、1日5~6セットを目安に行おう。「痛くても徐々に動かしましょう」。
【1】
壁から10cmくらい離れ、足を肩幅に開いて立ち、肩が痛む側の腕のひじと手のひらを、壁にぴったりつける。痛くない側の腕は下ろす。顔はまっすぐ前を向く。
【2】
手のひらを壁にはわせるようにして、まっすぐ腕を上げていく。できるところまで腕を上げたら、2秒ほどキープし、腕を下ろす。ひじが伸び切るところまで上がればOKだ。
B.筋力を使わずに伸ばす「肩伸ばし体操」
肩の関節を伸ばすには、腕を後ろに上げるように動かすといい。腰をゆっくりと下ろしていくと、筋肉の力を使わずに関節が伸ばせる。椅子の背もたれの代わりに壁に手をついて行ってもOK。まずは10回(1セット)行い、ラクになったと感じたら、1日5~8セットを目安に続けよう。
【1】
椅子から一歩離れて立ち、肩が痛む方の手で椅子の背をつかむ。痛む肩と反対側の足を、一歩前に出す。
【2】
ひざを徐々に曲げて腰を落とし、肩の関節を伸ばしていく。体はまっすぐのまま、反対側の肩が前に出ないように注意し、2秒ほどキープして【1】に戻す。
AとBの体操を行った後、【1】痛みの強さ、【2】痛みの範囲、【3】動かしやすさ、のいずれかが改善し、ラクになったと感じられれば、その運動を続けてみよう。逆に痛みが増したり、変化を感じなければ、その体操をする意味はないので要注意。
「痛みの変化を確かめながら体操を行うため、改善効果を実感しやすいのが『痛みナビ&改善体操』の特徴です。ぜひやってみてください」
首の頸椎が原因で起こる肩痛を改善!
肩痛は、肩関節だけが原因で起こるわけではない。首を次のように動かして肩痛の変化を確認しよう。
【1】頭を後ろに倒す&うつむく
【2】頭を左右に傾け、左右にひねる
【3】あごを前に出す&後ろに引く(各10回)。
「【1】~【3】のうちで、肩痛に改善が見られれば、あなたの肩痛は首の頸椎が原因の可能性があります。【1】~【3】の中で改善するもののみを、1日に5~6セット行いましょう」
教えてくれたのは
銅冶英雄(どうや・ひでお)さん/お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック院長。日本整形外科学会専門医でもある。
イラスト/いばさえみ、勝山秀幸
※女性セブン2020年4月23日号
https://josei7.com/