「痔」は虫歯の次に潜在的罹患者が多い!チェックリストとこっそり治すセルフケア法
日本人の3人に1人は“痔~ニスト(痔の罹患者)”だってご存じでしたか? 特に、気温が下がって血行不良を起こしやすい冬は、痔が発症&悪化しやすいので要注意。そこで今回は、32年間で38万人の患者を治してきた痔の名医に、誰でもできるセルフケア方法を教わりました。
便秘になりがちな女性は“大痔主”予備軍
タレントのイモトアヤコ(33才)や梅宮アンナ(47才)、大久保佳代子(48才)など、痔が持病だと公言する有名人は、男女を問わず多い。
「それもそのはず。検診を行えば、約7割の人に痔が見つかるほど、痔は日本人にとってポピュラーな病気なんです。潜在的な罹患者数は虫歯の次に多いといわれています」
そう教えてくれたのは、平田肛門科医院院長の平田雅彦さんだ。痔は、潜在的な患者数が多いのに、「恥ずかしい」「手術が痛そう」「放っておいても死ぬわけではない」などの理由で、病院へ行くのを先延ばしし、悪化させる傾向にあるという。
「私の患者さん1000人にアンケートをとったところ、自分が痔と自覚してから病院に行くまで、平均7年もかかっていることがわかりました」(平田さん・以下同)
そこには痔の症状と治療法に関する情報不足からくる偏見があるという。
隠れ「痔」?チェックリスト
痔になりやすい人の特徴は以下の15項目。このうち10個当てはまったら、“痔~ニスト”の可能性大!
□出産経験がある(あるいは現在、妊娠中である)
□便秘に悩んでいる(過去に便秘になったことがある)
□下痢になりやすい
□毎日、飲酒の習慣がある
□ストレスフルな生活を送っている
□菓子パン、揚げ物など油っこいものが好きだ
□ズボラな性格だと思う
□長時間座っていることが多い
□イライラ解消のために、お菓子などをドカ食いしてしまうことがある
□睡眠時間は1日6時間以下
□昨日の夕飯か、今朝の朝食のいずれかで、みそ汁を飲んでいない
□1日の歩数を平均すると、5000歩以下
□冷え性だと感じることがある
□今年の夏、冷房の効いた部屋にばかりいた
□ここ1か月以内、排便時に痛みを伴うことがあった
(以下画像は、上記と同じ内容)
老化、冷え、便秘、運動不足などが原因に
そもそも痔の原因はなんなのだろうか?
「主に肛門周辺の血行不良で起こります。いわば“生活習慣病”なんです。ですから、生活習慣を整えることで、手術することなく、自分で痔を治せる人は多いのです」
肛門には、毛細血管が集まっている。それらの血管の巡りが老化や冷え、不摂生などの影響で滞るようになると、肛門周辺で炎症が起こりやすくなり、
・痔核(じかく)(いぼ痔)
・裂肛(れつこう)(切れ痔)
・痔瘻(じろう)(穴痔)
※詳細は以下に
などの症状が出てくるという。そのため、寒くなり血行不良になりやすい冬こそ、悪化する人が多いのだ。
「特に女性の場合、ホルモンバランスの変化もかかわってきます。女性ホルモンの一種、黄体ホルモンは腸の蠕動(ぜんどう)運動を弱める性質があるため、これが多く分泌される生理前は便秘になるかたが増えます。便が硬く、出にくくなると、排便時に肛門周辺を傷つけやすくなり、裂肛になるリスクが高まるのです」
妊娠中や出産後もホルモンバランスが乱れる影響で、痔になりやすいという。また、加齢も大きな要因になる。
「肛門は、その周囲にある筋肉・括約筋(かつやくきん)と粘膜だけではピタリと閉じず、1mmくらいのすき間ができます。そのすき間を埋めているのが、筋繊維と動脈、静脈が網の目のように集まってできている“クッション組織”。しかし、30才を過ぎた頃から、このクッション組織をつなぐ結合組織が老化で崩れていきます」
更年期などでホルモンバランスが崩れ、便秘がちになると、弱った結合組織にさらに追い討ちをかけるように傷をつけることになる。
「冷えや運動不足も、肛門周辺の毛細血管の巡りを悪くするため、痔の原因になります。また、下痢やストレス、飲酒習慣もかかわってきます」
肛門はとてもデリケートで、年齢とともに炎症を起こしやすくなる。痔の悩みから解放されるには、生活習慣を変えることから始めなければならないという。
「痔」の症状 御三家
痔はお尻の病気の総称。症状は主に3種類あり、女性に最も多いのが痔核で次いで裂肛、痔瘻と続く。各症状の違いを見てみよう。
●痔核(いぼ痔)
通称“いぼ痔”といい、男女ともに約6割が該当する、最も多い痔の症状。「内痔核」と「外痔核」の2タイプがあり、前者は肛門の中に静脈瘤(じょうみゃくりゅう)と呼ばれる血管の固まりができる。内痔核の場合、神経のないところにできるので、痛みは少ないが、出血や排便時に肛門から飛び出ることも。外痔核は神経の集まっている部分にできるので、強い痛みを伴う。
●裂肛(切れ痔)
肛門内の神経は浅い部分にあるため、少し切れただけでも痛みを伴う。硬い便のせいで切れるケースが多く、手術はほぼ必要ない。ただし、何度も切れると、傷口が塞がれる過程で粘膜がひきつれて肛門が狭くなり、便が出にくくなる。これは肛門狭窄(こうもんきょうさく)と呼ばれ、こうなると、手術を行うこともある。
「肛門狭窄はめったに起きず、裂肛患者の1割以下です」。
●痔瘻(穴痔)
炎症が肛門内と皮膚にまで広がると、そこに穴が開いて、瘻管(ろうかん)(トンネル)ができる。このトンネルから膿や便が出てしまうこともあり、そうなると入院し、肛門周辺の膿の発生源とトンネルを取り除く手術が必要になる。放置すると、がん化する危険な症状だ。
「飲酒習慣のある男性に多い症状だったのですが、最近では女性患者も急増しています」。
痔をあなどるなかれ! 大腸がんの可能性も
痔の主な原因は生活習慣のため、セルフケアで改善できるのだが、自己診断は禁物。
「痔だと思って受診されたかたに大腸内視鏡検査を行うと、約1割に直腸がんや大腸がんが見つかります」
症状がみられたらすぐ受診すべきだが、場所が場所だけに、受診をためらう人も多い。実際にどのような治療をするのだろうか。
「衣服を着たまま横向けに寝て、下着をずらして患部を診るだけです。多くの場合、短時間で終わります。患者さんが恥ずかしさを感じないよう配慮しているので、お尻を丸出しにする必要はありません」
また、痔といえばすぐに手術するイメージもあるが、できる限り手術しないで治すのが最新治療の原則。特に痔核は、手術なしで治せるという。
「むしろ、痔瘻以外の症状で、すぐに手術をすすめてくる病院には注意が必要です。痔核や裂肛は薬で炎症を抑え、セルフケアを行いつつ生活習慣を改善すれば、3か月ほどで改善がみられるからです」
不安を感じたら手術が必要な理由を納得のいくまで確認し、診断書をもらうといいという。では、ここからはセルフケア法を紹介しよう。
38万人を診察した名医がセルフケアを伝授
セルフケアの基本は肛門を清潔に保つこと。そこから症状の改善が始まる。その上で、以下の習慣を取り入れたい。
●1日3食、食物繊維をたっぷりと
痔の主な原因は便秘。便秘改善には、食物繊維を摂ることが大切。食物繊維には、野菜や豆類などの水に溶けない不溶性と、海藻類や果物類などの水溶性があり、この2種類を半分量ずつ摂取すると、便が軟らかくなるという。
「特にこんにゃくや切り干し大根を積極的に食べるのがおすすめ。ヨーグルトや納豆、みそなどの発酵食品も整腸効果があるので、あわせて摂りましょう。根菜、特にごぼうのみそ汁は、食物繊維も一緒に摂れるのでおすすめです」(平田さん・以下同)
食事は一度に大量に食べるのではなく、1日3食程度に分け、こまめに食べた方が消化がよくなり、便が出やすくなるという。
●朝起きたら足首を4回まわせ
便秘対策には“起立反射”と“胃・結腸反射”を活用するとよい。起立反射とは、横になっていた人が立ち上がると、その刺激で大腸の蠕動運動が起こるというもの。そして胃・結腸反射は、食事をし、胃腸が動き出すことで起こる。これら2つの神経反射をスムーズに起こす方法がある。
まず、朝はゆとりをもって目覚め、腹式呼吸を5~6回行ったら、両手、両足の先を30秒ほどこすり合わせる。その後、床に座るかいすに腰かけて、自然な呼吸に合わせて、両足首をゆっくり4~5回まわす。その後、体を足元から上体に向けてさすってから立ち上がり、深呼吸をしたら冷たい水を飲む。最後に、お腹を手のひらで2回、右回りに円を描くようにさする。毎朝の習慣にするのがおすすめだ。
●頭のてっぺんにあるツボ「百会(ひやくえ)」を刺激せよ
痔の対策に効果があるとされているのが、頭のてっペんにある「百会」というツボだ。ここをヘアピンの丸い方や、つまようじ10本ほどを束にしたもので、15回ほど押して刺激するといいという。
「百会を刺激すると肛門周辺の血流がよくなるんです。ここにお炎を据えると、尾骨の先端まで、じわじわと温まるのがよくわかりますよ」
百会のツボは、両耳を結んだ線と正中線(左右の中心線)が交わるところにある(図参照)。トイレに行く直前に押すと、効果を実感しやすいかも。
「百会だけでなく、その周辺も刺激すると、より効果が実感できます」
強さは、痛気持ちいい、と感じるくらいでOK。
●座り仕事中は1時間に1回立ち、10m歩け
下半身がうっ血すると、痔になりやすい。特に座り仕事を長時間している人は、痔核のリスクが高まる。アラームをセットして、1時間に1回は立ち上がるようにしよう。さらに10mほど歩くと、血行が改善されるのでおすすめ。
●痔核&裂肛は温め、痔瘻は冷やせ
痔核と裂肛は血行不良が主な原因なので、毎日20分は湯船につかり、お尻を温めることが大切。腰のあたりにカイロを貼るのもおすすめ。痔瘻の場合、うつぶせの姿勢で患部にタオルを置いて、その上から冷やすと痛みが緩和される。
●排便は“考える人”のポーズで
トイレは排便に集中し3分以内で済ませること。長時間いきむのは肛門や血圧に負担をかけるのでNG。排便時はかかとを上げ、ロダンの銅像『考える人』のイメージで、前傾姿勢をとると、直腸と肛門がまっすぐになり、便が出やすくなる。
●お尻の穴を締めて、筋肉を鍛えよ
お尻の筋肉を鍛えると、肛門まわりの血行がよくなり痔の予防になる。鍛え方は簡単。肛門を毎日5~10回締めるだけ。就寝前や信号待ち、通勤時間の合間に行うのがおすすめ。
「ただし、すでに炎症がある場合は控えてください」。
●食品添加物や油分の多い食品は控えよ
食品添加物や油分が多い食べ物は、便秘の原因に。
「菓子パンやスナック菓子、チョコレートなど、油脂を多く含むものをよく食べている人は、血流が滞りやすく、便秘になりやすいため、痔になる可能性も高まります」。
●大の字に寝て5~15分深呼吸せよ
ストレスも痔の原因になるので、毎日少しでも、リラックスできる時間を持つことが大切。
「1日5~15分、大の字になって寝転び、全身の力を抜きます。おへその下にある“丹田(たんでん)”に意識を集中しながら深呼吸すると、リラックスできます」。
参考文献/平田雅彦著『38万人を診た専門医が教える自分で痔を治す方法』(アチーブメント出版)
イラスト/さややん。、尾代ゆうこ
※女性セブン2019年11月21日号
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