“快速四兄弟”の老老介護 長男は100才で介護する側に立つ
兄弟4人が河和田に集結したのは敗戦からしばらくしてのこと。良一さんは妻ミサノさんを結核で亡くし、その後に現在の妻、スナオさん(92才)と再婚した。他の兄弟も相次いで結婚して子供をもうけ、戦後の貧しい時代をたくましく生き抜いた。だが、高度成長期の最中、三男の敏治さんが60才の若さで他界した。
「兄弟でいちばん背が高くての。ほかの兄弟は河和田にいたけど、三男だけ福井にいた。忙しく働いていたが、症状が悪化して病院に行った時は手術もできない状態ですぐ亡くなった。まだ若いのにかわいそうやった」(栄一さん)
今も兄弟は年に1度、敏治さんの墓参りを欠かさない。
高齢となった四兄弟も病気とは無縁ではない。栄さんは胃と心臓を患っており、栄一さんも胃、腸、前立腺を手術した。良作さんも今年3月に胃を患って入院した。
長兄の良一さんは大きな病気こそしていないが、家庭では高齢者が避けられない「老老介護」に直面している。
四兄弟の食事会の後、良一さんの自宅で介護ぶりを取材させてもらった。妻・スナオさんは数年前から足腰が弱り、ベッドで寝て過ごすことが多くなった。以来、食事、洗濯、掃除など家事一切を良一さんが行っている。
100才が介護を「される」のではなく「する」のは、さぞかし大変かと思うが、良一さんは涼しい顔だ。
「スナオは頭がしっかりしているからね。足が上がらないからお風呂だけは週2度のデイサービスを頼むけど、トイレや食事や着替えは自分でできる。介護といっても大したことじゃないよ」
そう言いながら、慣れた手つきで食事の準備を進める。
この日の夕飯は得意料理の天ぷら。スーパーで買ったハタハタを包丁で巧みにさばき、背びれははさみで切り落とす。大きいものは明日の煮つけ用にして、小さいものに小麦粉と卵、塩で作った衣をつける。同時に白ねぎやさつまいもも天ぷら用に切り分け、たっぷりの油が入った鍋をセットして調理スタート。すぐに天ぷらが出来上がった。
揚げたてを最初に口にするのはスナオさんだ。ハタハタを頬ぼった彼女は「めっちゃおいしい」と声を上げた。
「何をしても上手でおいしいですよ。長寿の秘訣? 自然とこうなった(笑い)。私は何も苦労せんですんでしもうた。父ちゃんがいてくれるけえ、私もこうしていられる。これからも平和に体が元気でいてほしいだけです」(スナオさん)
※女性セブン2017年9月28日号
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