合計年齢375才!「快速四兄弟」に学ぶスーパー高齢者への道
長く生きていれば、健やかにいられない時もあるし、大切な人との別れも経験する。それでも何か1つ、一生懸命になれるものがあれば、目の前の苦境を乗り越えられるのかもしれない。
福井県鯖江市には、そんな苦境を力を合わせて乗り越えてきた四兄弟がいる。四人が打ち込んできたことは走ること。人呼んで、「快速四兄弟」だ。
4人揃って走れるのは、なんて幸せなこと
長男・大森良一さんは100才、次男・大森栄一さんは97才、四男・白崎栄さんは90才、五男・大森良作さんは88才。合計年齢は実に、375才だ。
「4人揃って走れるのは、なんて幸せないいことやなと思ったわね。これがいちばんやね」(良一さん)
そんな兄のつぶやきに、栄一さんが「みなスポーツマンやけんの」と笑いながら返す。
「おれは走るのが好きじゃない」とうそぶく栄さんも、その後をこう続ける。「でも兄弟が走るとなったら、よしおれも走るわい。病気なんて放ったらかしじゃ(笑い)」
激動の時代を離ればなれで生き抜いた4人にとっては、「兄弟みんなで一緒に走る」ことがこれ以上ない幸せなのだ。いくつになっても走れることが生きるためのモチベーションになる。
大会2か月前から週1のトレーニング
彼らの名が一気に広まったのは、今年6月に鯖江市内で開かれた『河和田地区民体育大会』がきっかけだった。4人合わせて375才というスーパー高齢者だけに、体育大会前の入念な練習は欠かせなかった。良作さんがしみじみと言う。
「急に走ったらあかんでの。走る前は体を慣らすために練習します。気をつけることはまず転ばないこと。あまり無理せず、一気に走らないで軽く練習しながら、体を慣らしていかなあかん」
地区体育協会福会長・八木実さんは、マスターズ短距離(60m)の65~70才部門の日本記録を持つ。八木さんが4人の臨時コーチとなり、大会2か月前から週1度のトレーニングを繰り返した。
「高齢者がいきなり走ってコケたら、寝たきりになることもあります。だからまず、できるだけ高く足を上げて転ばないようにする練習をしました。一人ひとりフォームが違うので、歩きながら足やひざを上げることから始めました」(八木さん)
走り方には個性が表れる。良一さんは慎重にペースを崩さず、栄一さんは真面目に自分で自分を管理する。頑張り屋さんでやると決めたらやるが、やらんとなったらテコでも動かない栄さんに、『やんしき踊り』の経験から自分の魅せかたを知っている良作さん。
「兄弟で走る」という情熱と個性、入念なトレーニングが絡み合い、鯖江名物の「快速四兄弟」が生まれたのだ。