100才97才90才88才の「快速四兄弟」!その痛快素顔を直撃
「めがねの街」として知られる福井県鯖江市内にある公園のグラウンド。雲ひとつない秋晴れの空のもと、4人の兄弟が颯爽と60m走のスタートラインに立つ。
だが、走り出す直前、コース上で90才の四男が97才の次男に“ダメ出し”を始めた。
「手を出すのはこっちだろ」
「ん? こうやろ?」
「違う、違う。こう出たらおかしいやろ」
「こっちか。そうか」
スタートの構えで右手と左手のどちらを前に出すかの応酬が始まったのだ。傍らでは100才の長男と88才の五男が“また始まった”と言わんばかりに、じっとスタートの姿勢を崩さない。
やり取りがひとしきり終わったらさあ仕切り直し。今度こそ、ヨーイ・ドン! 合計年齢375才の4人が一斉に駆け出した。長男は前を見て黙々と走り、次男は大きく腕を振って軽やかに足を運ぶ。四男は手足を素早く動かし、末っ子は前傾姿勢のきれいなフォームだ。
予想に反して、速い、速い。思い思いの走りで横一列に並んだ4人は、風のようにレーンを駆け抜けた。60mを一気に駆け抜けた4人のシニア。名前は上から良一、栄一、栄、良作。鯖江市の誇る「快速四兄弟」である。
地元で人気の四兄弟の存在がウェブで話題に
彼らの名が一気に広まったのは、今年6月に鯖江市内で開かれた『河和田地区民体育大会』がきっかけだった。
「この体育大会は年に1度、6月に開催されているのですが、地元民が楽しみにしているのが、4人が60m競争に挑む昼休みの『特別レース』なんです」(地元住民)
もともと地元では“元気なおじいちゃんたち”と知られていた四兄弟だったが、今年の『特別レース』で全国的に注目された。体育大会の様子を撮影した動画が朝日新聞のウェブ版やYoutubeで拡散され、「冗談抜きで速い!」と話題を呼んだのだ。
4人にレースへの参加を依頼した、地区体育協会副会長の八木実さんが言う。
「数年前、お昼休みのイベントで何か出し物はないかと考えたとき、高齢者が元気に走る姿はどうかと、大森さんの次男ともう1人別のかたに走ってもらったんです。するとそれを見た長男の良一さんが、『来年はおれも走らせてもろたらあかんか』と、翌年走ってくれたんです。それならと四男の栄さんと五男の良作さんにも依頼したら、快諾してくれたので兄弟全員で60m走に挑戦してもらうことになった。高齢の兄弟が4人で走るのは全国でもめずらしく、絶対に盛り上がると思いました」
観客みんなが声をあげて応援する”お化け四兄弟”
地元住民の多田哲也さんもこう語る。
「あの四兄弟はお化けですよ(笑い)。4人で走るレースは誰が1番になるかという競争よりパレードに近いかもしれません。昼休みのイベントだけど、観客みんなが『おんちゃん、ガンバレ~!』と声を張り上げて応援して、体育大会でいちばんの盛り上がりでした」
彼らは一体、何者なのか?