70、80代が全国から集まる大阪の老舗ラブホテル 人気の秘密
彼女の思いは、客にも届いている。大阪市在住の根本隆さん(79才・仮名)が、『富貴』の常連になるまでの経緯を振り返る。
「市の交通局に勤めて、小さいけどマイホームも建てて、60才過ぎて定年した。嫁は4つ下。優しくて気が利いて、出来た女です。でも息子夫婦と一緒に暮らしとると、ふたりで抱き合ったりするんは無理。孫が生まれてからは、家でセックスなんてとても。そやから、ずいぶん前からもうそこんとこは終わってました。
でもどこかで、嫁と繋がりたい、という気持ちはずっとあって。7年前のある日、大阪城公園を散歩した時に、誘ってみたんや。昔はよう京橋で飲んで、『富貴』のことは知ってたから。嫁は最初、“恥ずかしいし嫌や”と言うとったけど、汗かいたから風呂だけでも、ちゅうて何とか連れてったの」
時刻は昼の3時。昔ながらの建物とフロントに妻の抵抗感も薄れ、ふたりで部屋に入ることができた。
一緒に風呂に入り、ギュッと抱き合った。涙が出た
「家の風呂は1人入るのが精一杯やけど、『富貴』は広いから、ふたりで手足伸ばしてゆったり入れましたわ。最後に一緒に風呂入ったのは30年前よ。裸を見たのもそう。お互い体もよぼよぼやけどね(笑い)。背中の流しっこもして。嫁は照れくさそうやったけど、喜んどった。そいでビール飲んで、ベッドでギュッと抱き合って、2時間ほどで帰りました。30年ぶりにふれあえて、嬉しくて嬉しくて、涙が出た」(根本さん)
以来、根本さん夫婦は月に1度のペースで『富貴』を訪れることになった。
「あのホテルは本当に変わらんの。いつ行っても同じ。外観も古くて、ゴテゴテしとらんでしょう。そやから、夫婦の散歩の延長みたいな感覚で入れます。今じゃ『富貴』に入るとホッとする自分がおります」(根本さん)
撮影/辻村耕司
※女性セブン2017年7月20日号
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